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高校入学編 Ⅲ

 2020年4月8日 東京都 自宅マンション


 今日は舞宮高校の入学式だ。舞宮高校の校風は一言でいうと『自由』で、出席日数、赤点に気を付けていればバイトや部活何しても問題ない。当然法律違反や犯罪行為は禁止だ。

 舞宮高校の偏差値は55と決して高い訳ではない。しかし、自由な校風に惹かれ毎年倍率は高い。


 俺は推薦合格だったが、もし推薦がダメだったら一般入試は危なかった気がする。

 まあ資格に冒険者資格三ッ星と書いたのが大きかった気がするが……


 両親は今日、東京に来る理由となったユニークモンスター関係の仕事だ。


 ユニークモンスターとは、ダンジョンに極稀に深層で出現するモンスターの事で、その強さは出現階層+50とも言われる。しかも通常のモンスターと違い、階層の階段で移動する事がある。

 知能が高く、能力が厄介であることが多い。その代わりドロップアイテムは確実レアなものが手に入る。

 プロ冒険者はユニークモンスターを倒したら羨望される程の名誉を得る。

 ユニークモンスターは見つかり次第、冒険者協会から指名依頼という形な為、倒すというのは強さはもちろんのこと、信頼されている証でもあるのだ。


「っと、そろそろ時間か」


 今日からダンジョンとMirrorの高校生活が始まる



























 ……筈だったのだが、高校生活は思った通り上手くは行かないようだ。

 それはある人の出会いによって全てが変わっていく。















 •






 2020年4月8日 東京都 舞宮高校




 新入学生の数は240人、40人が6クラスからなり、全校生徒は720人となる。

 入学式は校長の話を聞き流したり、新入学生代表の挨拶があったり、生徒会長の挨拶があったのだが、特に特筆する事はなく終わった。


 俺のクラスは2組で、席に関しては好きなところに座って良いようだった。さっそく『自由』だな。

 俺は窓際の一番後ろに座った。ここが一番好きな席だった。スペースは前の席に比べて広く、外の景色を見る事もでき、なにより後ろと左横に誰も居ない!

 昔から人からの視線が気になってしまい、ムズムズしてしまうのだ。

 そんなことを考えていると声を掛けられた。


「よっ、隣座って良いか?」


 横を向くとそこにはスポーツマンの様な男子生徒が立っていた。


「ああ、もちろん」


 俺は初対面なので笑顔を心掛けて話す。すると隣の席に座ったスポーツマンは爽やかという感じで、笑顔で「ありがとう」と言い座った。その態度に俺は非常に好感が持てる印象だった。


「俺の名前は青薙 大輝(あおなぎ だいき)、一応スポーツ推薦だ、よろしくな」


「俺は日向 紅葉、呼び方はなんでも良いぞ。なんて呼べば良い?」


「大輝やダイって呼ばれるな」


「じゃあダイで、これからよろしく」


「こちらこそよろしく、紅葉」


 その後2人でたわいない話をしていると、担任らしき先生が教室に入ってきた。


「1年2組の担任の金木だ、よろしくな。歳は27歳だから一応流行りとかはギリギリ付いて行けるぞ、まあ折角『自由』な舞宮高校に入ったんだ、楽しく行こうな一年間よろしく!」


 その後一人一人自己紹介が始まっていった。自分の番になったが当たり障りない事を喋っておいた。


「よし、これで全員終わったな。今日はあと……30分で終わりだから親睦でも深めとけ、先生に聞きたいことあったら聞いて良いぞ」


 ガヤガヤとした雰囲気になっていきながら、ダイと一緒に金木先生について考えていた。


「金木先生って、中々良さそうな感じじゃないか?」


「紅葉もそう思うか?歳も近いし仲良くできたらいいよな!」


 すると1人の男子生徒が金木先生に質問していたのが耳に入った。


「先生の趣味ってなんですか?」


「最近だと……Mirrorだな!知ってるか?」


「当然じゃないですか!てか、知らない人いないと思いますよ?」


 そこからクラスメイトの話す話題が自然とMirrorへと変わっていった。中学校時代なら、バレるのが嫌で話を自然にそらしていたけど、父さんが言っていたことを思い出す。


「冒険者はアピールしてなんぼだぞ!いくら稼ぐといってもダンジョン探索だけでは限度がある、怪我したり年老いたら終わりだしな。だからスポンサーがつくようにしろ、まあお前ならMirrorの事広めればスポンサーの一つや二つすぐに来るだろうがな!」


「スポンサーってどんな奴?」


「そうだなぁ、例えば武器や防具の新作サンプルテストとか、防具にロゴを入れたやつを使うとか色々だな。お前の場合は高校生になってからにしろよ」


「なんで高校生から?」


「中学生と高校生だとスポンサーがつける規模が違う。中学生の時にスポンサーが既に付いていて、大手がつけないなんてことがあるからな。大手は高校生以上に着くことがほとんどだからだな」


「へぇー、なるほどねぇ」


 と、いうやり取りがあったのでMirrorの認知度を取り入れてもいいのだが、最初はゆったりやりたいからいずれでいいだろう。

 なんて考えていると、ダイから話しかけてきた。


「紅葉はMirrorやってる?」


「やってるよ、ダイは?」


「ガチ勢って程じゃないけど、空いてる時間にやってる感じかな。現実より動ける感じがストレス発散っていうか、楽しいんだよね」


「それは分かる!あの現実離れした動きは中々出来ないからなぁ……そういやダイってスポーツ推薦って言ってたけどなにやってるの?」


「あぁ、俺はサッカーやってるんだよ。ちなみにMF(ミッドフィルダー)なんだけど分かるかな?」


 ミッドフィルダーか……たしか中盤で攻守に渡って活躍するポジションだっけ?

 ダイに確認するとその認識で合ってるよと言われた。

 その後サッカーの話を聞いていると、スピーカーから


 キーンコーンカーンコーン♪ キンコンカンコーン♪


 と鳴り響き、金木先生から解散が指示された。

 ダイと途中まで一緒に帰ろうとすると、1年生が玄関前ホールで止まったいるのが目に入った。


「なにかな、これ?」


「さあ?」


 群れをかき分けて見てみると、そこでは既に部活の新入生争奪合戦が始まっていた。


「うわー……すっげぇ迫力」


「なんていうか、バーゲンセールのオバちゃん集団みたい」


 ダイの変わった例えにツッコミを入れる前に、前に来たせいでこの騒動に巻き込まれたしまった。


「君身体鍛えてるねぇ!野球部はどうだい?」


「いやいや、君にはサッカー部が似合っている!」


「バスケ部が一番に決まっているどうだ!?」


 後ろを振り返り、前を向き直し自分に指を指す。すると3人の上級生はウンウンと頷く。


「あー、部活はもう決まってるんで……あっ、こいつはどうです?運動得意だそうですよ?」


 横でギョッとしているダイに意識を移させ、自分は安全地帯に移動する。その後も色々な部活に勧誘されたが、「既に部活は決まってるので」の一言で追い返した。

 本当に色々な部活があった。「野球」「サッカー」「バスケ」「バレー」「卓球」「テニス」「スカッシュ」「ホッケー」などの運動系の部活に、「吹奏楽」「料理」「ロボ研」などの文化系の部活、中には「Mirror」の部活があり、中々人気を集めていた。

 あの、手を繋いで六芒星を作り出し、なにやら呟いている「オカルト研究」部は勧誘する気はあるのだろうか?


 俺が気になったのは「Mirror」と「ダンジョン研究」だ。ダンジョン研究部は探索は勿論、ダンジョンについてや、ドロップアイテムなどの有用性などについて調べているそうだ。

 すると少しばかり元気を失ったダイがこちらに向かって来ていた。


「こーうーよーうー、よくも囮にしてくれたなっ!?」


「まあ落ち着けって、よく考えろ……事実だろ?」


 俺の正論にこれ以上の言論を続けるのを諦めたのか、ため息をつき、話を変えた。


「なにか気になる部活はあったか?」


「Mirror、ダンジョン研究、違う意味でオカルト研究かな?」


 ダイはオカルト研究部と言われ、見てみると言いたいことが伝わったようだ。


「あぁ……あれね。俺もMirrorとダンジョン研究は気になるな、入るのはサッカー部だけど。そういや紅葉、入る部活決まってるって言ってたけどどこなんだ?」


「ん?帰宅部だぞ?」


 そういうとダイは呆れたような呆然といったような、って一緒か。


「帰宅部って……」


「俺は嘘はついてないからな!いいスケープゴートになってくれたよ」


 ダイと笑い合っていると、一瞬だけ騒がしいホールから音が止んだ。気になって皆んなの視線を見てみると、テレビに出てるような美少女と呼べる生徒が女子生徒と一緒にホールに来ていた。

 1年生の皆は視線を奪われ、上級生はやられたといった表情をしていた。

 そのホール中の視線を独占した女子生徒は「ダンジョン研究」部に加わり、勧誘を始めた。


「わたし達と一緒にダンジョン探索しませんか?」


 その一言でその場にいた8割の男子生徒がダンジョン研究部に持ってかれた。


「あの人誰か知ってるか?」


 ダメ元でダイに聞いて見たところ、意外な答えが返って来た。


「あの人は叶屋 真凛、高校2年生で最近テレビに出てたな。知らないのか?」


 なんと有名人だった。てか、


「なんでそんな詳しいんだ?」


「あぁ、従姉妹なんだ。で、その隣にいるのが俺の姉だ。お前も惚れたか?」


 ニヤニヤしながら聞いてくるダイは無視して、彼女の事を見る。


「どっかで見たことあるんだよなぁ……名前もどっかで……」


「テレビじゃないのか?最近良く出るようになってたが」


 するとダイの姉という生徒がダイに向かって来た。


「ダイ、部活はいいの?」


「大丈夫、今日は無い日だから。あっ、紹介するねこちらがクラスメイトで隣の先の日向 紅葉、で、こっちが俺の姉の青薙 光(あおなぎ ひかり)


 青薙 光という女子生徒は、スラリとした長身にショートカット、可愛いより美しい系っていうかスポーツ系?


「初めまして日向 紅葉です、ダイとは今日からですが仲良くさせてもらってます」


「私は青薙 光、ダイの姉です。こんな弟ですが仲良くしてあげてください」


「おい!?なんだその言い方!?」


「もちろんです」


「紅葉そこでお前はノルのか!?」


 ダイが何か言っているが無視して、なにやらこちらに視線が集まっている。なんで?


「光!もう、ひとりにしないでよ!人がいっぱいで大変なんだから!ってあれ?ダイ君?」


「久しぶりだね、真凛姉ぇ!」


 久しぶりの再会に喜んでいる人気者は、隣にいたこちらに視線を動かした。


「えっ……なんで……?」


 急に動きが止まり、ロボットみたくギィギィという音が聞こえそうなほど、カクカクと元の場所に向けて歩き出した。


「真凛姉ぇどうしたんだろう?本当に紅葉なにかあったのか?」


「うーん……それがここまで出かかってるんだけど」


 手を首に当てながら喋る。なんか会ったことあるような気がする……どこで?


「まあ、いずれ思い出すだろう。ダイ、帰ろうぜ」


「おい、それで良いのかよ……まあいいか。じゃあ光姉ぇ先に帰るな」


「うん分かった、気をつけてね」


 その後、ダイとは学校の最寄り駅まで一緒に帰った。























 •



 2020年4月8日 舞宮高校 叶屋 真凛






 わたしは光が忘れ物をしたといって教室に取りに戻ったお陰で、遅れてしまった。取りに戻った光と一緒に急いで玄関前ホールに向かった。

 そこでは既に新入生獲得競争が始まっており、ダンジョン研究部は興味は持たれてるものの、用意したチラシはあまり減っていなかった。

 するとわたし達に気づいた部長の長谷部さんが、この喧騒に負けない声量で声をかけて来た。


「真凛ちゃん!光ちゃん!こっちこっち!」


 その女子らしかぬ大きな声にビックリしたのか、声をかけられたわたし達の方を全員が見てシーンっとしていた。

 すると隣で光がニヤリとしながら小さな声で、「主役は遅れてくるもの」と言っているがどうゆうことなのだろう?


「わたし達と一緒にダンジョン探索しませんか?」


 事前に渡されていたセリフ通り喋ると、一気に多くの1年生がチラシを受け取ってくれた。


(セリフ考えた光すごいっ!)


 そう考えていると、光がいつの間にか居なくなっていて、辺りを見渡すと少し離れたスペースに居たのを発見した。


「光!もう、ひとりにしないでよ!人がいっぱいで大変なんだから!って、あれ?ダイ君?」


 そこには光の弟でわたしの従兄弟のダイ君がいた。


「久しぶりだね、真凛姉ぇ!」


 昔と変わらない呼び方で安心する。ダイ君はあんなに小さかったのにどんどんと大きくなっちゃって……

 感傷に浸っていると、隣にいる男子生徒に気がついた。

 胸の校章は1年生だから、ダイ君の友達かな?相変わらず社交的だなぁと思いながら顔を見ると、そこには前にダンジョンで助けてくれたあの人だった。


「えっ……なんで……?」


 どうしてここにいるの?1年生?同じ学校?

 色んな情報が頭の中を駆け巡り、出来るだけ自然に動きながら元の場所に戻る。


「あれ?光ちゃんは?って、真凛ちゃん大丈夫?」


「だい、だい、大丈夫でしゅ!」


「いやいや、全然大丈夫じゃないよね、少し休んでて良いよ」


 長谷部部長に言われるがまま、近くの椅子に座る。少しすると光が戻って来た。


「真凛あの子、確か……日向君となにかあったの?」


「日向君って言うんだ……」


「え?」


「え?」


 思わず呟いてしまった一言に光が反応する。

 はぁ、なんで光はこんなに敏感なのだろうか。

 それで光に前にダンジョンで助けられた事を話した。


「バカ、真凛はバカか!なんで勝手に一人でダンジョンに行っちゃうかな?それも野良パーティに加わって探索なんて……それって日向君が助けてくれなきゃ死んじゃってたって事だからね!?分かってる!?」


「うっ……反省しております……」


「テレビとか、雑誌の仕事も増えているんでしょ?気をつけないとダメだよ?」


 テレビや雑誌に出たのはダンジョンに行くために必要なお金を稼ぐ為だった。

 冒険者登録費に、防具や武器一式など総額で最低でも2、30万円はしてしまう。

 反対気味だった両親にそんな代金は貰えない。だから始めた芸能活動だったけど、そっちにばかり時間が取られダンジョンに行く時間が減っている。これでは本末転倒だ。


「それにしても日向君が冒険者ね……これは入ってもらうしかない。って事で真凛、明日日向君の教室にいって勧誘してらっしゃい」


「えっ!?えーーーー!?!?」


 思わず出てしまった大声にホール中の視線が集まる。


「バカ、声がデカイ」


「でも、なんで、いや、でも、いや、でも、いや、でも「長い!」でもー!」


「真凛は日向君が他の部活に取られてもいいの?(帰宅部って言ってたらしいけど)」


「うー……」


「じゃあ明日私も付いて行くから忘れないでね、それじゃあ今日の勧誘やるよ」


「うー……」


 教室に行って直接勧誘なんて出来るの!?


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