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中学3年生編 Ⅱ

 2020年3月9日


 今日は卒業式である。と、いっても中学時代の思い出がダンジョンとMirrorとテストくらいしか無いが。


 卒業式はパパッと終わった。

 定番の入場曲の『路』が流れ、一人一人呼ばれ、『旅立ちの時に』を歌い、『3月8日』が流れながら退場する。


 教室では少数の者が泣いていたり、先生が号泣していたり、最後だから告白していたりなど実に青春していた。

 外に出ると多くの保護者が待っていたり、生徒が写真撮ったりしていた。


 俺は東京に行くと知っているが、ダンジョンの為に行くことは教えていない。

 てか、冒険者資格を持っていることすら内緒にしている。

 冒険者資格は普通は高校生になってから、早くても中学生、というのが一般常識なのだが俺の父親には通じない。

 どこに小学一年生で遊びに行くと題してダンジョンに連れて行く親がいるだろうか?

 そこにいる……って、なんでいるの!?


 今日は仕事で行けないとか言っときながら、変装しながら両親が手を振っていた。

 呆れながらも嬉しさを感じながら手を振り返す。


 両親は有名人なので、そのままだと大騒ぎになる……可能性がある。

 俺の両親を知っている割合はクラスメイトの10割だが、俺の両親だと知ってる人は0人だ。

 昔それで失敗した事があるから、気をつけるようにしている。


「あ、あの紅葉君!」


 突然名前を呼ばれ振り返るとそこには多数の女子たちが居て、俺を範囲殲滅するような布陣になっていた……えっ、メチャクチャ怖いんですけど!?


 そこには女子軍団が形成され、周りに誰も寄せ付けない状態になっていた。

 そう、クラスメイトや同学年の生徒は愚か、保護者や先生すら近寄れない謂わば結界が張られていた。

 そんな状態は当然目立つわけで、助けてとクラスの男子に目線を向けると、目を逸らしながら下手くそな口笛を吹いている。

 先生の方を向くと、頑張れという目線を送られた……先生!こんな時ぐらい助けてくださいよ!?


「え、えーっと何かな?」


 チラリと両親の方を見てみると、気持ち悪いニヤニヤとした笑みを浮かべてる父親と、楽しそうに笑っている母親の姿が見えた。


 クソっ!ダンジョンで……は無理だから、Mirrorでぶっ潰してやる!


「あのねっ!紅葉君って東京に行っちゃうでしょ?だから、その、連絡先とか、教えて貰えないかなって」


 俺はスマホを持っているのに関わらず、クラスのグループに加わっていなかった。めんどくさいという理由だからだが。


「あー、うーん、いいよ」


 了承の意を伝えると、あからさまに嬉しそうな顔をして登録した。そう、結界を張っていた女子軍団全員である。ついでに男子も登録しておいた。なんでも、本当は登録したかったのだけど、出来なかったとか、乙女かっ!


 そうしてガラガラだった連絡先が一気に充実した。使う日が来るかは謎だが。


 その後保護者も込みでクラス全員でバイキングに行った。先生が事前に一部の生徒と相談して予約してたそうだ。

 ちなみに両親はバレる可能性もあるし、この後用事があるそうで帰った。

 わざわざ忙しい中時間を開けてくれたのだろう、感謝しなければ。


 その後のバイキングでは最後だからか、男子女子の両方がグイグイと話しかけてきた。

 今までなかったからビックリした。


 ダンジョンの話題とMirrorの話題の時は少しビクリとしてしまった。

 だって隣で親の事やゲームでの自分が語られるんだぞ?恥ずかしくてしょうがない。

 それにゲームでは顔とか変えずにプレイしている、といってもアイテムを付けて印象を少し変えているが、名前もコウヨウなので何度か指摘された事があるが、嘘にならないようにボヤかしておいた。


 食事も終わり、男子の数人が一斉に告白して1人を除いて振られて、カップル成立となった1人が振られた男子にいじられていたのは見ていて面白かった。

 最後に楽しい思い出ができて、良い1日だった。


















 2020年3月13日 時計台ダンジョン



 俺は両親と共にダンジョンに来ていた。

 今日はダンジョンでの試練、テストだ。両親は見ているだけで、俺1人で進んで行く。

 60階層から始め、70階層を目指すというものだ。


 このレベルになれば俺も本気で行かなければならない。スキルを使い進んで行く。

 今回はどう進むかは一任されている。モンスターを全滅しながらでも良いし、戦闘を避けながらでも良い。

 俺は戦闘を最小にしながら進んで行く、70階層にはワイバーンという翼竜がいる。

 空を飛んでいるため、戦いには工夫がいるし、体力も相応に必要だろう。


 俺の今の格好は急所を守っている合成鎧に、一番効果が高い刀を使っている。《収納》の中には予備武器が数本入っているし、食糧や水も入っている。


 その後も順調に進んで行き、70階層に到達した。

 そこは荒野で、グランドキャニオンの様な風景だった。


「紅葉、ここから何かあったらすぐに助けるからな。その場合はテストは失敗だと思え」


 真剣な眼差しで見て来る父、今日は本気の装備をしている。幻想金属の鎧に大剣、母もローブに杖といつでも準備完了な状態だった。


「分かってる、父さん、あれ使ってもいいよね?」


 静かに目を瞑り、少し経ってから返答が来た。


「ああ、その代わり人がいる場所では禁止だ。分かったな?」


「分かったよ」


 俺が狙うのは一匹となっているはぐれ個体だ。ワイバーンは数匹で集まって行動しているが、たまに一匹だけで行動している奴がいる。

 ただでさえ強いワイバーンが、連携しながら攻撃して来るのは驚異だ。


 30分程隠れながら行動していると、ようやく発見した。

 俺はハンドサインで行くことを伝え、岩場から飛び出した。


 すぐさまこちらの動きに気がついたワイバーンは、空へ飛び立とうとする。

 その前に俺は50センチ程のミスリルで出来た槍を、槍投げのようにぶん投げた。


「ギャオオオオォォォン!?」


 槍は翼に刺さり、そのまま墜落した。その後俺はすぐさまワイバーンに向け手のひらを向けて()()()()()()

 電撃は避雷針となったミスリルの槍に吸い込まれるように向かっていき、ワイバーンに直撃した。

 ワイバーンは全身から焦げた匂いと煙を放ち、消えていった。

 その場にはミスリル槍がカランッと音を立てて落ちた。

 そして、()()()が上昇したのを感じた。



 レベルとはモンスターを倒すほど手に入る〝経験値〟と呼ばれるもので上がるもので、レベルが高いほど身体能力が上昇していく。

 俺のレベルは46、これは中学生にしては破格だが、そこまで高いわけではない。

 俺はレベル上げを余りやらなかったため、高くはない。しかし、スキルの数はプロ冒険者と比較してもなんら変わりない。


「よし、合格だな。お前は今日から四ッ星冒険者だな」


 近くにいた父からそう言われ、思わずガッツポーズしてしまった。



 冒険者は星の数でランクが分けられる。

 登録したては一ッ星で、最高は七ッ星とされていて、プロ冒険者は四ッ星からだ。職業として冒険者を名乗るなら、四ッ星が最低ラインとなる。

 70階層のモンスターを倒せたのならば四ッ星と認められる。

 ……まあ普通はパーティで挑むのが普通だが。

 ちなみに最年少プロ冒険者記録は、確か日本の中学一年生だった筈……



 その後、父と母と共にワイバーンを狩っていった。なんでも記念のアイテムを作るからだそうだ。

 数十匹倒した頃にはワイバーンの皮が3枚取れた。これでローブが3つ作れるそうだ。

 そして帰り道では、


「やっぱりお前のアレはずるいよな」


「いやいやいや、父さんこそなんなのあれ?ワイバーン真っ二つとか人間じゃないでしょ」


「そりゃあ父さんはお前が生まれる前から冒険者やってるしな、母さんと同じで《魔法適性》持ってて良かったな紅葉」


「まあね、それは良いんだけど、お陰でスキルがソロ仕様になって来てるんだよね」


「ソロでも良いが、絶対に無理はするなよ?普通ソロで冒険者なんて無理なんだが……なんでお前はそんなにスキルを持てるんだ」


「いやいや、なに僻んでるのさ。スキルは多いに越したこと無いじゃん」


 そんな話をしながら家に戻ると、母さんが《()()》からお祝いの料理を取り出した。


「って!?なんで《収納》使えんの!?」


 母さんはビックリさせて嬉しそうにしていた。


「母さんからはこの情報よ、これは何かわかる?」


 そう言って首から取り外して見せてくれたのはネックレスだった。それも様々な宝石が使われている見るからに高いネックレス。


「ネックレス……だけど、只のネックレスじゃないよね」


「ふふふ、これはねミスリルとダンジョン産の宝石、魔石を使ったものなの。ダンジョン産の宝石にはね、魔力が蓄えられる事は知ってるわね?」


「まあ、そんくらいは知ってるけど」


 ダンジョンでのドロップした宝石類は魔力を蓄える性質があり、魔力タンクとして使えることが知られており、通常の宝石より高価となっている。


「これは言うならば魔力を発生させるネックレスでね、これがあればダンジョン以外でもスキルが使えるのよ」


「そ、それって犯罪利用とかされてないの?」


 《収納》なんか麻薬とかの密売などに最適であると子供でも分かる。

 今までは例え《収納》に入れていたとしても、ダンジョンから地上に出るには施設を通らないといけない為、マジックアイテムにより見つかってしまうらしい。

 しかしこれはヤバイものでは?そう思っていると教えてくれた。


「実はね、ダンジョンからドロップするものは全部微量ながら魔力を持っているの、街中に魔力感知できるマジックアイテムがあるから使ったらすぐ分かるの。だから今だって母さんが使った事は記録されているのよ、だから何かあったらすぐにバレるってわけ」


 なるほど、《収納》から出したものにも超微量に魔力が付与されていると、それでどんなものを出したか分かるという事か。それって小麦粉とか出したらめっちゃ怪しそうだな。

 すると今度は父さんが教えてくれた。


「なんでも国には違法なモノを探知できるマジックアイテムがあるそうで、持ち込まれたり持ってたらすぐ分かるそうだぞ?日本の事件発生率も下がっているしな。それにさっきのネックレスは信用されてるものにしか与えられないんだぞ?」


 そういいながらこちらに何か渡してきた。見てみると、預けていた俺の冒険者カードだった。

 そこには星が4つのってあった。


「それでも《収納》使えるようにしといたぞ」


 思わず含んでいた水を噴き出しそうになった。


「はっ!?はぁー!?ちょっ、へっ、どゆこと?」


「そのネックレスはな特別というか、プレゼントしたもので、普通は冒険者カードでいいんだぞ?俺がお前の使用許可を登録しておいたから、機能が解除された訳だな。もし、この事が一般市民にバレたら冒険者資格剥奪だから気をつけろよ?」


 俺はとんでもないものを手にしてしまったようだ。

 いや、前向きに考えよう。そう前向きに。


「使っていいところってどこ?武器のメンテとか楽になるよね」


「そうだなぁ、基本的には誰もいないところだな、後は事情を知っている人の前なら大丈夫だ」


「じゃあ《索敵》とかそういうのはどうなの?」


「アレなら使っても大丈夫だぞ、その代わり魔力消費するから気をつけるんだぞ。魔石を星の部分に当てれば充電ならぬ充魔力できるからこまめやれよ」


 東京出発まであと2週間も無い、2人と会う機会も激減するだろう。


「父さん、母さん、ありがとね。あっちいっても俺頑張るから」


 そういうと、父さんが思い出したかのような顔をしていった。


「俺たちも東京に行くんだわ、まだ一緒だな?」


 ニヤニヤしながら、母さんはニコニコしながら言ってきた。




 もうやだ、この親!

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