プロローグ
取り敢えず10話分、10日間は毎日投稿確定です
2020年 4月6日 東京ダンジョン 15階層
「に、逃げろー!」
男の声と同時に4人パーティの皆がその場から離脱を図る。
「あっ……」
一人の少女が胸元からなにかを落とし慌てて拾おうとする。
落としたものの名前は冒険者カード、世界のダンジョンに潜るために必要な冒険者協会が発行しているものだ。
そのカードの効果は冒険者としてのランク表示、倒したモンスターの記録、口座の使用、当然身分表明にもなるが、一番の機能は二回限定のダンジョン内の転移機能である。
一度行ったことのある階層のスタート地点と言える階段付近に転移出来るもので、ダンジョンの外にある施設で100円でチャージする事が出来る。
発動条件として、モンスターとの距離が1メートル離れていること、手に持つか、肌に触れていないと発動しないが、その重要性は高い。
少女は慌てて拾おうとするが目の前には2メートルの鉄の塊である、アイアンゴーレムが目の前まで迫っていた。
ドスン、ドスンと大きな足音を立てながらこちらに向かってきている。先程まで居たパーティメンバーは全員転移して置いてかれてしまった。
本来なら少女には15階層はまだ早々だった。
いつものパーティメンバーが急遽来れなくなったため、野良パーティに加わり「大丈夫、大丈夫」と言われ、断りづらい雰囲気の中ついて行ってしまい、通常のモンスターではないフロア徘徊型特殊モンスター、通常レアモンスターに出逢ってしまった。
レアモンスターの強さはその階層+5階層とも言われ、普通のモンスターとは段違いに強い。
モンスターから稀にドロップするアイテムがほぼ確実にドロップする事から挑むパーティは後は立たず、ダンジョン内における死亡原因の第2位とされる。
少女は恐怖からか足が震えて動くことができず、自然に目から涙が溢れ出てきた。
目の前には腕を振り上げたアイアンゴーレムが見えた。
「あ、あぁ……ごめんなさい、お母さん」
反対を押し切ってまで冒険者になったのなに、親不孝でごめんなさい。
そう思いながらぎゅっと目を瞑るが、いつまで経っても振り上げられた腕が降りてこない。
恐る恐る目を開けるとそこには、フード付きパーカーに黒ズボンというダンジョンには不適切とも呼べる服装の少年が、木刀でアイアンゴーレムの攻撃を受け止めて居た……って木刀!?
「大丈夫……ですか?ちょっと待ってて下さいね」
少年はそう言うと、アイアンゴーレムの腕を跳ね返し手に持っていた木刀で鉄の塊を斬りにかかった。
何をしているかと思った次の瞬間、ゴーレムの頭と胴が真っ二つに分かれてしまった。
「うそ……」
思わず呟いてしまい慌てて口を手でを抑えるが、少年はドロップ品を拾っていて気付いていないようだった。
「お、ラッキー銀塊だ。いくら経っても鉄の塊から銀の塊が手に入るのは慣れないなぁ」
少年は拳大程の銀塊を手に持つと、次の瞬間には銀塊は消えて無くなり地面に落ちていた何かを拾いこちらに向かってくる。
「はい、どうぞ」
渡されたものは冒険者カードだった。
「あ、ありがとう、ございます」
慌ててお礼を言うと少年は笑いながら「いえいえ」と言い、冒険者カードは専用のケースを買い常に肌に触れさせておいた方が良いとアドバイスをしてもらった。
「あの名前はなんて言うんでしょうか?」
「気にしなくていいですよ、それでは」
少年はそう言い放つと先に向かって進んで行った。
しばし呆然としていたが、視界にモンスターが目に入ると慌てて転移を使い1階層に移動した。
その後施設に行き、ドロップアイテムを買い取りして貰うと同時に転移をチャージして貰う。
忘れないように買い取り時に転移分のチャージ分を差し引いてもらい、チャージするのが一般的となっている。
その後シャワーを浴びて汚れを落とし、普段着に着替えると電車に乗って家に帰った。
電車に乗っている間はずっと助けてくれた少年の事ばかり考えていた。
「格好良かったなぁ」
小さく呟きながらあの少年は何者か考える。同い年ぐらいなのに卓越した強さ、木刀でアイアンゴーレムを真っ二つにした事、木刀で真っ二つって本当に何者なのだろうか?
お陰で降りる駅を通過してしまった叶屋 真凛であった。