ヴァースの一門-3
とは言っても、だ。
ウィルレイナ嬢が領主に就くのは良いとして、だ。
「つかぬことをお伺いしますが、ウィルレイナ嬢が領主代理を務めていることを、頭首殿は御存知だったのでしょうか?」
ウィルレイナに許可証を手渡された彼が、末席から至極当然の疑問を口にした。自然、親族の目が頭首の長男――ウィルレイナの父親へと向かう。
「父様?」
「私が報告差し上げたからな、ご存知だ。だが、父は領地が恙なく回るのなら領主は孫だろうが娘だろうが余所者だろうが誰でもいいと仰っていた」
つまり、誰がなっても認可する、と。
そもそも、
「何故、娘御の動向をご存知ならこの場で報告しなかったのです?」
頭首に報告を上げた、ということは本人も知っていたことに他ならない。報告を上げるだけで案件が片付いというのに、何故放置したのか。
頭首の長男である彼は、悪びれもせずに答えた。
「黙っていても半年で片がつくと判っているいるのに、ここの皆を説得するなどという手間をかける必要がどこにある?」
今日決着がつくと判っていたから出席しただけだ。という彼は確かに、初回の親族会議以降一切、出席していなかった。
「これで領主の件は片付いたな? では、私は領地に戻るが、よろしいか?」
もう用はない、と席を立つのを親族一同は呆然として見送った。そこに、新任領主から声がかかる。
「皆様も。先程も申しました通りご自宅へお戻りください」
丁寧に告げられるが、顔は微笑っていても目は笑っていない。領主命令として判断した一同は、ヴァース親族会議を閉会として急ぎ自宅へと戻った。
――勿論、帰った彼らには、家族からの恨み言と家政の書類が待っているのは言うまでもない。