プロローグ
ピピピピピッ ガッ
けたたましく鳴り響いていた目覚まし時計が嫌な音を立てる。
一瞬、静寂が部屋の中を支配するが、勢いよくベットの布団が舞い上がり、寝癖のついた黒い髪が顔をだす。
覚醒しきっていない頭で、ドア近くに転がっている目覚まし時計と思わしき金属の塊を目に止めると、呆れたようにため息を吐き出し、隣で今だに眠っている色素の薄い茶色の髪の主を起こすためにその肩を揺する。
茶色の髪の主は、むずがりながらも薄っすらと目を開け、こちらを視界に写す。
「棗、朝だ。起きろ」
「ん、おはよー六花お姉ちゃん」
「おはよう」
棗と呼ばれた少女は、こちらを見てうっとりとした表情をし、ゆっくりと体を起こすと、こちらに猫のようにすり寄ってくる。
恋人同士の甘い空気のようなものが流れるが、残念ながら私達は姉妹であり、世間的に禁断と呼ばれるような関係でもない。
なぜこのような空気になるのかは追随わかるだろうからひとまずは置いておくとしよう。
そんなことよりも最重要な事柄が今現在ある。
「さて妹よ」
べったりと張り付いていた棗の肩を掴み、ベリッと引き剥がした六花は、にっこりと微笑む。
「私は昨日1人で寝たはずのなのだが、なんでお前がここにいる?」
「そこにお姉ちゃんがいたからです!」
そうかそうか。
今日もいつも通りの回答だな。
友人から恐怖しか湧かないと定評のある笑みを浮かべる私。
「じゃぁ、なんで私の目覚まし時計が木っ端微塵に粉砕されているのかね?」
目だけ笑っていない姉の顔を正面から見ることとなった棗は粉砕された目覚まし時計に視線をやり、一瞬で顔を青く染め上げ、
「大変申し訳ありませんでした」
見事な土下座をしてくれたのだった。
佐賀六花 20歳、大学1回生。
佐賀棗 16歳、高校2年生。
これが私達の日常風景である。
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初めまして、RIOUと申します。
今までちまちまと趣味で小説を書いていましたが、今回温めてきた長編小説を書いていきたいと思います。
不定期更新になりますが、よろしくお願いします。