のり弁 THE FIRST
ここにのり弁があるじゃろ?
いや昼に食ったのはカレーだとか今日は我が家のラーメン記念日なんだという人もとりあえずのり弁を想像して下さい。まっしろいほかほかご飯の上に、乗せられた一枚ののり。そこから染み渡った醤油で終わりとおもいきや、定番のきんぴらとたくあんを端にのせて待ってましたとサクサクの白身魚フライにあとはもううどん屋ぐらいでしか見かけない磯辺揚げ。あとはお魚の醤油差しを置いてあげれば、ほら目の前にのり弁が。
さて、何を事細かにのり弁について説明したかというとのり弁には永遠の問題が存在するのです。それは主役不在の恐怖。例えば弁当屋さんに行けば、色とりどりのお弁当があります。唐揚げ焼き肉ハンバーグ、とんかつ天丼なんてあったり。そしてそこにさも当然という顔で紛れるのり弁。こいつだけおかしい。
まず名前がのり弁と言うくせに、全然のりが主役じゃない。およそのり弁700キロカロリーのうち、はたしてのりが占める割合がどこの程度なのか。ここでちょっと調べた所、のりはなんと100グラムで130キロカロリー。えっけっこうあるじゃんと思ったあなた。さらに驚きのだいたいのり弁に収まる程度ののりはせいぜい0.4グラム。タウリンみたいな計算をしても400ミリグラム。もうどんぐらいだよと思った人のために、ちょっと計算してみました。のりだけでのり弁と同等のカロリーを摂取する場合、はたしてのり弁ののりが何個必要なのか。
まずのり弁一個あたりののりのキロカロリーが、100:130=0.4;xになるのでx=(130*0.4)/100=0.52
そしてのり弁ののりだけで700カロリーを摂取しようとした場合は700/0.52≒1346
1346個。のりという名前を冠しているくせに、のり弁ののりを1346個集めてようやくのり弁一個に対応できるレベル。もはや誤差です。さて、こんな無駄な計算までして何が言いたかったというと、のり弁という名前のくせに全然主役じゃないということ。さっきも言ったが大事なことなので計算しました。
別に主役いなくても良くね? というあなた。違うんです。唐揚げ弁当だったら唐揚げ食いてぇとか焼き肉弁当だったらウヒョおおおおおおお焼き肉だあああああとかなるんです。でものり弁当です。イヤッハアアアアアアアアア新鮮な海苔ダアアアアアアアア! いません。いたら連絡下さい。
さておおよそほとんどの弁当は名前の通りの物がついてるので、最初にそれを食べれば気が済みます。唐揚げにかぶりついたりとんかつの香りを嗅いだり。でものり弁。ここで大問題にぶち当たるのです。
のり弁で一番最初に何から食うべきか、という大問題に。
さてここで冒頭に用意していただいたのり弁の安っぽいプラスチックの蓋を開けましょう。端にうっすらみえる白いご飯、白いご飯が恥ずかしいものだとでも思っているのかご飯を覆い隠すのり、たくあんきんぴら白身魚フライと磯辺揚げ。
ここまで読んで、いやどう考えても白身魚フライが主役だろと思ったあなた。磯辺揚げの気持ち考えたこと張りますか? うどん屋ではエビ天やかき揚げに追いやられ、惣菜コーナーでは見つけるだけで一苦労、そもそもレジで磯辺揚げを買っている人を見つけたらその日一日良い事あるよという都市伝説が流行してもおかしくないぐらいの存在。そんな不憫な磯辺揚げを前にして白身魚が主役ですってそれでもあなたは人間ですか。
じゃあもういいよ磯辺揚げが主役でなんて言うんじゃないでしょうね。そいういう同情采配ってかえって磯辺揚げを傷つけるんですやめてあげましょう。
ここで某刑事ドラマよろしく、ダブル主役はどうでしょう。なんとっ、あの白身魚フライと磯辺揚げが奇跡のコラボレーション! この夏起きた奇跡の共演絶対に見逃すな!
タイトルは――のり弁。NORIBEN。
ここでまたのり弁がしゃしゃり出ます。せっかく人が煽った所で、のり弁というタイトルが全てを台無しにしてくれます。NORI。いやダブル主役だって言っただろお前どっから出てきたんだよと。しかも出演時間たったの0.4ミリグラム。白身魚フライと磯辺揚げが温厚でなければもはや裁判沙汰になってもおかしくありません。
というかね、のり弁ってそういうものじゃないんですよ。ほかの弁当にあるスペシャル感が何一つ無い、ペットボトルのお茶が永遠の相棒の脇役なんです。その脇役の見どころが、白身魚フライか磯辺揚げか。
そういうどうでもいい事は、一番最初にきんぴらでも口に突っ込んで考えましょう。