「河童」の皿を盗んだ、盛田という男の話
これは、僕が小学生だった頃の話だ。
僕の住む町の近所にある川は、古くから河童が出るという伝説があり、
町の商店街では河童をキャラクターにした商品が売り出されるほど
河童という存在は僕にとって、とても身近な存在であった。
夏休みが終わり、学校が始まったその日、一人の男の話が学校中の話題となった。
『盛田があの川で河童を目撃した』という話であった。
クラスの生徒だけではなく、他のクラスの生徒まで盛田の話を聞こうと集まっていた。
僕は『どうせ嘘だろう』と思い自分の席に座ると、大きな歓声が上がった。
『これが河童の皿か』
どうやら盛田は河童の皿を取ってきたらしい。
それ以来、盛田は学校中の人気者となった。
それから数日後、TVの取材が来た。
盛田の人気は学校から町へ、そして全国へと広がりをみせるかと思えた。
しかしそのTVでの盛田の話の扱いは、まるで「嘘つき小学生の戯言」というようなもので
それ以来、盛田は「嘘つき」というようなレッテルを貼られ、誰からも相手にされなくなってしまった。
それから半年が経ち、冬休みが終わり、学校が始まった頃
盛田は『今度は僕が河童に皿を盗まれたんだ』と言い出した。
クラスの皆、その話には耳をかさないでいたが、僕はそれ以来少し河童の存在を信じている。
盛田の名字が、その日から成田に変わっていたからだ。