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第9話 普通

 なんだかんだで、今日は色々な所に連れまわされた。

 漁港、商店街、町工場… 沢山のものを見て回った。そこで見たものは、車やコンクリートで舗装された道路、空に交わる沢山の電線…ではなく魔法で動いていると思われる大きな籠、石畳の道、電線なんか一本も通ってない青い空。夢のような世界だった。私の眼には、その全てがキラキラと輝いて見えた。

 そんなことを思いながら、私は布団に潜り込んだ。ふかふかとしていてすぐにまぶたを閉じてしまいたくなるが、何やら母と父が喋っているようだ。

 耳を澄ましてみた。聞こえてきたのはこんな会話。


「何かおかしくない?」

「どこがだよ。普通の大人しい子供じゃないか」

「なんだか、私変なことを言ってるようだと思うけど、聞いてくれる?」

「何だよ改まって」

 母が急に真剣な声になった。

「私ね、あの子…ナノがなんだかとても大人びているように思えるの」

「気のせいじゃないか?最近の子はそうなんじゃない?」

「もうちょっと聞いて。なんて言うか、中身が年相応じゃないっていうか…記憶だけ別な人みたいな気がして…」

「そんな訳ないだろう。例えそうだとしてもナノは俺たちの子供だ。それは絶対に変わらない。そうだろう?」

 父が話し終えてから一拍おいて、母が言った。

「そうね。それが周りから見たら普通じゃなくても…」

「さあ、もう寝よう。明日も仕事がある」

「そうね。おやすみなさい」

 ふっと明かりが消えた。私も寝よう…


「こーんにっちはーーーー!!!!」

「うわあああああああ」

 至近距離で、しかも大声であいさつをしたのは私をこの世界に導いた神、トートだ。

「なんだ、トートさんか」

 というとここは夢の中ということになるのかな?

「いや~また会えてよかったよかった。どう?」

「どうって言われましても…まぁ多少は慣れましたよ」

「それは何より」

 相変わらずの笑顔で言われる。なんだか久しぶりな気がする。

「それはそうと」

「なんでしょう?」

「なんで君は僕が名乗ったときにエジプトの神様だって分かったのかな?」

 なんだそんな事か。

「それは、中学校の先輩に神話とか宗教に詳しい人がいて、教え込まれたんですよ」

「物好きな子もいるもんだ。それが普通だった?」

 なんだか急に難しい話になってきた気がする。それでもなぜか答えないといけない気がする。

「まあ、そんな感じです」

「君にとっての普通って?」

 私にとっての普通。そんな事、考えたこともなかった。

 今までの日常。父親は母の浮気と母の作った借金に苦しみ、私に当たる毎日。学校では特に無視もされず、そこまで人気者ものでもなく、成績は並よりほんの少し上で運動はそこそこ。部活では時々描いた絵が県の推賞に選ばれたりする位。あと、動植物の声が聞こえるから割とぼっちだった。

 でも、意見というか考えというかそんな感じなのはある。

「私にとっての普通は、人それぞれだと思うんです」

「そっか。君はあらゆる思想を受け入れるんだね」

「まぁそんな感じです。でもそんな大層なものじゃ…」

「さあ、もう朝だ。目を覚ましなさい」

 そんな大層なものじゃなくて、私のはもっとちっぽけな考えだと言いかけた途端にとん、と額を押されて私は夢の中から現実へと戻ってきた。

 外は明るかった。

あなたにとって、普通ってなんですか?

良かったら教えてください。

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