第7話 昼下がりの妖精と親バカと私
私が生まれてから、もう1年が経とうとしていた。
布団の上でぼんやりと考えていると、すぐ傍の窓から落ち着いた女性の声が聞こえた。
『あら、かわいい子。イマドキ珍しいわぁン。綺麗な赤毛だなんて』
『そうね、珍しいわね』
鳥……じゃない。小人でもなければ何なのだろう。羽が生えていて、鹿みたいな角らしき物が頭から生えているし……例えるなら、妖精?
「よぅせ、いさ、うぅ」
うん。うまく喋れない。赤ちゃん言葉は喋れるのに、普通には喋れないなぁ。なんというか、呂律が回らないというか何というか……
『あら! この子見えてるのね!』
『もしかしたら私たちの言ってることが分かるんじゃなァい?』
おお、妖精さんすごい。なんでこれだけで分かるんだろう。
『かわいいかわいい私たちのお姫様』
『あなたの為なら私たちは喜んで力を貸すわ』
『だってあなたは私たちが見えるンだもの。特別な存在よ』
『じゃあねン。私たちのお姫様』
そう言って、彼女たち(?)はキラキラと金色に輝く風に包まれ、ふわり、と昼過ぎの窓から静かに去って行った。
去り際の言葉には、どんな意味が有るのだろう。今の私には、全く分からない。きっと、いつか分かる日が来るのだろう。まだまだ先は長い事だし、きっと色々な出会いもあるだろう。
ガチャリ
木でできたドアが開く音がした。誰だろう? と思いドアの方向を見る。しかし、そこは赤ちゃん。背が低くてタンスやら何やらに視界を阻まれて誰が来たか全く見えない。ちょっと柵に摑まってよいしょ。あ、お母さんだ。
「ナノちゃん。ママですよ~……あら! あらあら! この子立ってるわ! あなた~、来てちょうだい!」
「なんだなんだ……おお! 流石は我が娘。成長が早いな~はっはっは!」
と、ちょこっと立っただけで大騒ぎ。うわ、お父さんヒゲ! 痛いジョリジョリする!!
これが、親バカというやつなのか……