第5話 転生
真っ黒な世界。先ほどの、どこまでも白い世界とは違う。ただただ真っ黒な世界の中、私だけがいる。
「どこ? ここ」
やっぱり、返事はな……
「ここは、君の新しいお母さんのお腹の中だよ」
不意に、さっきまで一緒にいた神様の声が聞こえた。そして姿も見えた。返事があるだけでこんなにも有り難い。あと、ほっとした。
「……本当に生まれ変わるんですね」
「まあ、君は選んだからね」
そう、選んだ。
もう後戻りはできない。だけど、私に後悔なんてない。何があっても受け止めるつもりだし、どんな困難があったって、立ち向かっていくつもりだ。
「さて」
「どうしたんですか急に」
「いやあ、そろそろ君とお話しできるのもこれで最後かなあって」
最後……?
「当たり前だけど、君はそろそろ生まれるんだから。せいぜい喋っていられるのはあと4~5分じゃないかな」
そっか、転生するんだから、生まれるのは当たり前だった。すっかり忘れていた。
「じゃあ、何かこれからのことでも教えてくださいよ」
彼は、一度びっくりしてから、にっこりほほ笑んで、
「いいよ。雑談はまた今度にでもできるからね」
今度にでもできる? どういうことだろう。これで最後じゃなかったのかな?
「じゃあ、時間もそろそろ無くなりそうだし、手短に」
「お願いします」
「君がこれから生まれ変わる世界は、実は僕にも分からない。魔法が有ったりするかもしれないし、元居た世界かも知れない。龍の国だったり、小人の国かも……
君の姿形も性別も分からない。男の子だったり、人魚だったりね」
なるほど、常識は通用しないのか。いや、常識なんてあてにならないか。
「続けるよ。まあ、ゲームじゃないからステータスとかそんなものは無いからね。
そうそう、生まれ変わってから、僕と会う方法は夢の中位かな。あとは……おや、時間だね」
「え?」
え?まだ聞きたい事が沢山あるのに……
次の瞬間、目の前の景色はわからないが、確かに明るい世界に私は出た。
「あぁーーーー、おぎゃーーーー」
やっぱり、赤ちゃんからですよね。
「おめでとうございます!! 元気な男の子ですよ!」
何?
男の子だって?
やっと転生です。