第3話 選択
「あ、信じてくれた?」
「ええ、まあ……」
にこにこと嬉しそうに笑う神様(?)
本当に神様なのかと疑ってしまう。
しかし、死んでしまった以上、どうなるかも分からないのだし、取り敢えず従っておこう。
「君の名前は?」
「え、あ、時和菜乃です」
「うん、知ってる。因みに僕の名前はトート。宜しくね」
知ってるのかよ。記憶とか読めばわかるものなのだろうか。
ん? トート?
トートってエジプトの神様じゃなかったけ?
ならなんで日本で死んだ私のとこに居るのだろう。
「細かいところは気にしない気にしない」
そんなもんで済まされる話なのだろうか。
「ま、まあ、いいから」
いいのか。
間
「そんなわけで、君は転生します」
「は??」
間抜けな声が出た。
転生? マンガとか小説で見るあの、生まれ変わったら勇者とかお姫様とかの?
急すぎる。急すぎてわけがわからないよ。いきなりだよ。
なんで? どうして?
「『誰かの役に立ちたい。』 これは、君の願いだ」
そういえば。死ぬ前に確かに祈った。最後の願い。
でも、なぜ?
「転生には、強い願いと強い覚悟が必要なんだ」
願いと覚悟……
私にはそこまで強い覚悟があるのだろうか。
「大丈夫。君ならいけるさ」
「そうですか……」
少しだけ、勇気がわいてきた。
「それに、君には強い覚悟もある」
本当なのだろうか。私にそんなものが。
いいや、悲観的になってはいけない。昔からの悪い癖だ。
大丈夫。きっと。
「私、転生します」
覚悟を決めてそういった。
「そっか。覚悟、決めたんだね」
そう言って、トートさんは右手を私の頭に置いた。
瞬間。
目の前に私が立っていた。
「私がもう一人?」
「いや、正確には君の肉体だ。」
ということは今の私は……
「ま、幽霊みたいなもんだよ」
さらっと凄いことを言ってる。
「さあ、選ぶといい。君の肉体の記憶か、魂の記憶か」
5月31日
読みやすいように修正いたしました。