其の七
其の七
死神の尻尾。それは死者を生き返らせる事ができる物。その為には二つの条件がある。
まず一つ。
それは死神の尻尾に触れる事。
二つ。
生き返らせるにあたって、今後生きていく時間を決めること。
これら二つの条件を満たせば死神の尻尾は発動する。
死神の尻尾は何なのか?彼女は、それについて勘違いをしている。そしてそれこそが対価につながる答えとなるのだ。
死神の尻尾とは何か。
これがまず初めに考える理だろう。先入観を捨てる事。彼女の発言は間違っている部分がある。その先入観を捨てなければ答えにはたどり着かない。
わかりやすく先入観の事を説明しよう。
問題。
答えは英語で答えよ。
『犬』は英語で『ドッグ』
『猫』は英語で『キャット』
では『カッパ』は?
先入観を捨てること。答えは至ってシンプルだ。
答えは―――――
『レインコート』だ。
誰も『河童』とは言っていない。雨の日に着るカッパだ。
しかし誰もが『河童』を思い浮かべただろう。
それはなぜか。
それは『犬』『猫』が動物だからだ。だから『河童』をそこから連想してしまった。
これが先入観だ。
そしてその先入観とは猿の手のことだ。
猿の手。
意にそぐわぬ形で願いを叶えてくれる。彼女は最初に死神の尻尾が入った桐箱の蓋の裏に、願えば叶うと書かれていたのを発見し、即座に猿の手が思い浮かんだ。
彼女が猿の手など知らなければ、きっと勘違いをする事はなかっただろう。答えを間違う事もなかっただろう。
その答えがいつも一つだとは限らない。それも一種の先入観になるのかもしれない。真実はいつも一つではない。本当の真実と嘘の真実があるものだ。
そして先入観さえも一つだとは限らない。
一番重要なのは問題の意図だ。
十五文字以内と言われれば誰しもが、十五文字ギリギリを使って答えようとする。
十五文字以内というならば別に一言、五文字で答えても問題はない。
この問題の答えは一言で答えられる。文章をよく読む事。
死神の尻尾を使うにあたって対価があるなら、それは何かを十五文字以内で答えよ。
対価があるならそれは何かを十五文字以内で答えよ。
対価があるなら。
あるなら。
一言で答えるならば、答えは―――――。
『対価はない』だ。
そんなものは存在しない。全ては先入観だ。あるならという事は、ないかもしれないという事。問題自体がすでに答えの様なものだ。
ではなぜ対価が存在しないのか。それは死神の尻尾が変換器だからだ。
死神の尻尾は死者を生き返らせる事が出来る。
この考えは確かに間違っていない。命には限りがある。一度失ってしまった命は元には戻らない。
では、なぜ生き返らせる事が出来るのか。それは先にも言ったが、死神の尻尾が変換器だからだ。
死神の尻尾は持ち主によって、その長さは異なる。それは残りの寿命が人それぞれだからだ。
死神の尻尾の本当の力は―――――。
持ち主の残りの寿命を相手に分け与える事が出来る。
これが死神の尻尾の本当の力の正体だ。
自分の命を分け与えるという事は、既に自分の命を差し出している。
故に、その後の対価などないのだ。
そして仮に嘘の答えがあるならば、それは―――――。
『自分の命』という事になるのだろう。
『対価はない』『自分の命』。
これが答えだ。
しかし死神の尻尾を使うにあたって対価はないが代償がある。
対価とは対等なもの。死神の尻尾を使い切った事により代償を支払わなければならない。
その代償とは―――――。
次で最後になります。