其の二
其のニ
彼女そのままは桐箱を持ち帰った。しかしどうすればいいのかわからずに悩んでいた。
――うーん。実際にこれが猿の手と同じ効果があるのかわからないな。もし同じなら、なぜ猿の手ではないんだ?なぜ死神の尻尾なんだ?つまりは効果は違うと考えた方が妥当か。
そこで彼女はいくつかの仮説を立てることにした。
「まず分かっている事を書くか」
そう言うとノートを開き、ペンを走らせていく。
「まず・・・・・分かっている情報は・・・・・っと」
スラスラと書いていく。
分かっている事。名前。蓋の裏に書かれた願えば叶うという事。何かの骨の尻尾である事。
「この三つか・・・・・。少ないな。まず一つ一つ考えてみようか。名前から。死神の尻尾。当然あの死神の事だなぁ。あれに尻尾なんてなかったはず。でも誰もローブを脱いだとこは知らない。いや、そもそも実在するとは思えない」
彼女はそういう類の話は信じてないのだ。幽霊など非現実的な事は、ありえないと思っている。
「しかし、本当に実在すると考えてみようか。なぜそれが本体から離れている?しかも桐箱に入ってまで。・・・・・わからないな。何か理由があるとは思えない。だとすると単なる余興なのか・・・・・。気まぐれ?なぜ?んー、わっかんないなぁ。後回しにするか。問題は次だ。願えば叶う」
言って尻尾の骨を見つめる。
「願えば叶うねぇ・・・・・。これが猿の手と同等なら、あたしの周りに何らかの影響が出るはず・・・・・まぁ出るなら出たで問題はないんだけど。願いの回数が気になるかなぁ」
猿の手には三つという願いの数が決まっている。しかしこの死神の尻尾には願いの数は書かれていない。つまり、
「つまり、願いは回数制限ではないと言うこと・・・・・かな?何度でも叶えてくれる?でも差し出す物があるはずだよねぇ・・・・・。対価が必要なはず。それが何かわかんないし。ん~・・・・・わかんないなぁ・・・・・まじファックだわ」
腕を組み、悩む。そして答えは出た。
「良し。使ってみよう。それが一番手っ取り早い。三つ目は・・・・・まぁどうでもいいか」
という結論に至った。
彼女には何も恐る事はないのだ。
周りには興味はない。どうなろうが知った事ではない。
仮にも自分の身に何かが起きても構わないと思っている。
生きる事に意味を持てずに自殺を考えていたのだ。最悪、自分が死ぬ結果になっても、それは彼女にとっては都合がいいのだ。
しかし彼女はまだ知らない。これを使う事の意味を。その結果どういう結末が待っているのも。
ヒント三、それは確認のしようがない対価