page8
雨が降っていた。さらさらと静かな音を立てて。
そんな朝、柚穂と瑞希は二人揃って登校していた。柚穂がビニール傘を買わなくなったあの日から始まった習慣だ。
分かれ道に差し掛かると、瑞希は立ち止まり、柚穂に手を振ってくる。
「じゃあ気をつけてね、柚穂」
「ん」
「傘、今日の帰りにでも新しいの買いなさいよ」
「……これがいい」
「あはは……。気持ちは嬉しいけど、折り畳み傘だけじゃ不便よ。大きな傘もあった方がいいわ」
「……考えとく」
「うん。じゃ、また後でね」
瑞希は改めて手を振って、高校に向かう道を歩き出す。
「……行ってきます、お姉ちゃん」
別れ際、水玉模様の傘を広げる柚穂はそう小さく囁いた。
雨が降り続いていた。春の少し冷たくも優しい雨が。
そんな雨の日には、柚穂は姉の瑞希と決まってこんなやり取りをする――。
お付き合いいただきありがとうございました。作者の織田です。
春ですねえ。大分暖かくなって来ましたが、雨なんか降るとまだちょっと冷たかったりします。
そんなわけで「ビニール傘と春の雨」いかがだったでしょうか。なんか去年も雨を題材に短編いくつか書いた気がしますが梅雨じゃないのでセーフってことで……。
雨降ってるとなんか静かですよね。そんな雨って家の中で見てる分には結構好きなのです。
ただし暴風を伴う豪雨、お前はダメだ。
そういえば今回は久々に女性主人公でした。長編も女性主人公でしたが短編で扱うのは久しぶりですね。このサイトに投稿しているものでは一つも無かったような。まだまだ至らない感じがしますがなんとかこちらも上手くなっていきたいものです。
さてさて、それではこの辺で。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
またの機会にお会いしましょう。それでは。




