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第3話
2026年6月2日
夜中にいきなり吠え始め、肝を冷やした。店員からは「夜鳴きはします」と聞かされていたが、身をもって体感するのは訳が違う。おかげで寝不足だ。目の下に濃い影を作って出社したせいで、佐々木に不審がられた。
この春、東京の本社から赴任してきた上司が、俺に対してだけ妙に厳しい。気付けば、隣の席の佐々木までがその標的となっていた。
「俺は大丈夫だ」
佐々木はそう強がるが、その表情には隠しきれない疲弊が滲んでいる。
苛立ちを抱えて帰宅する夜道。だが、玄関を開ければそこにはルナがいる。あの不器用な熱量が、組織という冷たい檻で摩耗した俺の心を、少しだけ溶かしてくれる。
牡蠣のように殻を閉ざしていた俺に、小さな相棒が風穴を開けているのかもしれない。




