切り離された祝福
サイス・ミランズは伯爵家の生まれだった。
何不自由なく育てられ、そうしてそのまま成長すればいずれは父の跡を継いで家の当主となり、立派な伯爵となる……はずだった。
その輝かしい未来を疑う事なんて何もなかったのだ。
ところが、その未来は砂上の楼閣であり、あっさりと崩れ去った。
幼い頃はその理不尽に泣いて憤り、どうしてこんな目に……と思うばかりであったのだが。
泣こうが喚こうが現実は変わらない。
かつて、輝かしい栄光があったはずのミランズ家は今では貴族の鼻つまみ者のような扱いを受け、今や没落寸前であった。いっそ家を取り潰されてしまえば、平民になってしまえば未練なんてなかったのだろうか……?
いや、と自嘲する。
平民になったところで、かつての不自由のない生活の記憶が消えるわけではない。
結局どちらにしても、未練はあった。
それを理解できる程度には、サイスは成長したのだと言えよう。
貴族の大半は魔法が使える。
サイスも実際昔は少しだが使えた。
今は使えなくなってしまったので、それもあって一部の貴族からは馬鹿にされているが、それもまぁ、仕方のない事だった。
幼い頃のサイスは、控えめに申し上げてクソガキだった。
周囲がちやほやするのが当たり前で、だからこそ自分の思い通りにならないなんて事はなくて。
嫌な事はやりたくないと駄々をこねれば最終的にやらなくてもよかったし、好きな事をやって好きなものに囲まれていて、一生そんな風に苦労もせず人生を過ごす事こそが当たり前なのだと思い込んでいた。
いつかは父のように立派な伯爵になったとして、その際にのしかかる責任というものに関しては、幼さ故に考える事はしなかった。それでも漠然と、どうにかなると思っていたのだ。
しかし実際はそうならなかった。
サイスの両親は政略結婚だった。
母の実家はミランズ伯爵家よりも身分が下の子爵家で、ミランズ家よりも資産を持つ家でもあった。
サイスが生まれる前のミランズ家の財政はやや傾いていて、それを立て直すためには金が必要だった。
それ以外にも理由はあったが、それこそが、きっとミランズ家の運命を決定づけてしまった。
幼い頃のサイスにはわからなかったけれど、ある程度成長した今ならわかる。
当時の自分がとんでもないクソガキであった事も。
父親の――ミランズ家がどうしようもない人間ばかりであった事も。
後悔したところで今更である。
物心ついた時には、母親とはあまり顔を合わせる事がなかった。
サイスのそばにいたのは祖母だ。父の母親にあたる人物。
当主の座をサイスの父――ロイに譲った後は、祖父母は領地の片隅に建ててあった屋敷に移り住んで、そちらで過ごしていたのだが、しかしサイスの母――エルミティアがサイスを産んだ後祖母だけが戻ってきた。
祖父は祖母へ引退後はのんびりと各国を旅しようと誘ったようなのだが、祖母はそれを断ってサイスのそばにいる事を選んだ。
乳母もいたけれど、幼い頃のサイスの世話と教育はほとんど祖母が主体となってやっていた。
幼い頃のサイスは何も疑問を持たなかった。
時々母親と顔を合わせる事もあったけれど、そういう時の母はあれをしろこれをしろと口うるさく言ってきて、とても嫌だった記憶がある。
当時は意地悪をされているのだと思っていたが、今にして思えばあれは必要な教育だった。
蝶よ花よとばかりに甘やかされて育てられていたサイスに、母だけが心を鬼にしてサイスのために色々と言ってくれていたのだ。
けれど幼かった頃のサイスにはそれがわからなかった。
そんな事はしなくてもいいのだと言ってくれた祖母に懐いた。
祖母が母の事を悪く言うのを止める事もせずに、自分に意地悪をするようなお母様だからそんな風に言われるのだと思っていた。
そして、祖母にそそのかされるままにサイスは母に対して心無い言葉を投げかけたのだ。
お母様なんかいらない。
いなくなっちゃえばいいのに。
どうして、当時はあんなことを言ってしまえたのだろうか、と今ならいくらでも悔やめるが当時は本当にそう思い込んでいた。
祖母の、あんなお母様ならいらないわよね? なんていう言葉に頷いてしまった。
祖母が自分をとことん甘やかしてくれていたから、自分に意地悪を言うお母様なんていらない。優しいお母様になってほしい――そういう気持ちで祖母の言葉に同調したのは、しかしどうしようもない事実である。
幼い自分にろくに構いもしないでたまに顔を合わせたら厳しい言葉ばかり投げかける母親の事を、嫌だなと思ったのは事実である。
嫌いと言う感情ばかりではなかった。
きっと、心の奥底では寂しさもあったのだと思う。
ただ、当時のサイスはろくに勉強もしないで遊んでばかりの子供でそこまで賢くもなかったから、目の前の事実が正しいと思い込んでいて、どうしてそうなっていたのかなんて気付けなかったのだ。
先代から当主の座を渡されて、父は領地を盛り立てたり他にも色々と忙しいという話を聞いていたけれど、それでもサイスと関わる時間はあった。それならば、もっと時間がありそうな母はどうしてサイスとロクに顔を合わせなかったのか。
そういう不満もあって、そのせいでふてくされていたのだと思う。
今だから言える事だが。
ところが実際は、父は伯爵として、領主としてやるべき仕事の大半を母に押し付けていたのだ。
最終的な決定を下す時に自分のサインをするのが、父のしていた仕事である。
成程、そりゃ時間に余裕もあろうな、と今ならサイスだってわかる事だ。
政策だとかのあれこれは母にまるなげして、最終的な決定を下す時だけサラサラッとサインをするだけなら、無能であってもできる事だ。勿論その書類の内容を確認しなければならないのは言うまでもないが、父は恐らくそこら辺マトモに確認もしていなかった。
父よりも母の方が暇だと信じていたが、実際はそんな事はなくむしろ母こそが、あの家で一番忙しくしていた。
サイスが生まれてすぐにサイスは母から見ての義母と、乳母によって奪われた。
ある程度成長しても、それは変わらず。
そうして子育てに一切関わる事のないまま、母は父のかわりに仕事を押し付けられ、休む間もなく働いていた。母の実家の方が家格が低い事もあって、きっと侮られたのだろう。
父は母を庇わなかった。面倒な事は押し付けて、父もまた毎日を悠々と過ごしていたのだ。友と遊んだり社交の場でそれらしく振舞ったり。楽しい事だけをして、面倒な事は全て母に押し付けていた。
幼い頃のサイスはそんな事すら気付けなかった。
そもそも働いている母に近づく事ができなかったのだから、知りようがなかった、とも言える。
……言い訳にもならないが。
母の実家から金をせびり、母を労働力として扱う。
政略とはいえ、いくらなんでもあんまりな所業である。
ミランズ伯爵家は母の実家から見れば立派な寄生虫だっただろう。
確かにミランズ家は名家だったかもしれないが、それだけだ。高貴な寄生虫など、母とその実家からすればさぞ憎々しい存在でしかなかったに違いない。
……一応、政略とはいえ対等な関係として縁談を結んだはずなのに、いつから間違えたのか。
きっと、恐らく。
サイスが生まれてからだ。
彼が彼として生を受けた時。
サイスの祖母はミランズ家の正当な血を引いた後継者が生まれた事で、母――エルミティアの役目は終わったとでも思ったのかもしれない。
屋敷に女主人は一人で充分。
既に先代の妻となってお役御免となったはずだがしかし、祖母は領地でのんびり過ごすよりも、まだ華々しい社交界から離れたくなかったのかもしれない。
母として自分を尊敬し慕ってくる息子のロイと、孫であるサイス。
まだまだ自分の天下だと思っていたのかもしれなかった。
サイスは幼い頃、母と接するよりも祖母と共に居た事の方が多かった。
そうして実に様々な事を吹き込まれたのだ。
伯爵家の人間として相応しくないだとか、妻としても不足ばかりだとか、母親失格だとか。
幼い頃のサイスは身近な大人がそう言うのだから、そうなのだろうとなんの根拠もなく信じていた。祖母が正しい存在であると信じて疑わなかった。父もそれを良しとしていたので余計にそう思い込んでいた。
だからこそ、母の事をとことんまで軽んじた。
自分がどれだけ酷い態度をとったところで何だかんだ母親なのだから、最後には許されるだろうと思い込んで。
だが、今ならわかる。
親子としての時間をロクに過ごした事もなく、家族としての関係を築き上げたわけでもない相手を無条件で愛し続けるのは困難だという事を。
サイスの記憶の中の母は、すっかりと冷めた目をしていた。もうあの時には見限られていたに違いなかった。
お前なんかいらない、と祖母にそそのかされて言い放った言葉は、後にすっかりそのまま自分に返ってきたのだから。
エルミティアはサイスを産んだ後、一度も抱く事なく早々に引き離された。
サイスがまだ赤ん坊の頃はそれでもどうにかして取り返そうとしてくれたようだが、結局それは叶わなかった。
そうしてサイスが成長して、言葉を話せるようになってからサイスは祖母に言われるままに、母に酷い言葉を投げかけた。当時は意味を理解していなかったものもあるが、今ならわかる。
ただ産んだだけ。血が繋がっているだけの、育てたことは一度もない他人にあんな事を言われればいくら大人だって心が痛むだろうし、傷ついたに違いないのだ。
けれど、その思いを母はサイスにぶつけるのではなく、きちんと祖母へ向けていた。
だが、長年ミランズ家の女主人として君臨していた祖母と、嫁いだばかりな挙句仕事を押し付けられてロクに使用人たちとの交流もままならなかった母とでは、圧倒的に母が不利だった。
せめて父がそれでも母を守ってくれていれば、もしかしたら今とは違う未来を歩んでいたかもしれないが、父は幼い頃のサイスと同じように楽な方へと流れる性質で。
父は父なりに母を愛していたのかもしれないが、それは母本人ではなく自分に楽をさせてくれる、使い物になる妻と言う名の便利な使用人としてではないのかとサイスは思っている。
結局最終的にいよいよ堪忍袋の緒が切れた母は、実家に助けを求め離縁状を突き付けて泥沼の離婚劇を繰り広げて颯爽と実家へ帰っていった。
ミランズ家よりも家格の低い母の実家であったけれど、しかし軽んじてはいけない理由があった。
貴族の大半は魔法が使える。
その魔法はどうして使えるのかというと、どうやらかつて、この国を建国した初代の王と精霊王とが結んだ契約に基づくものらしく、つまり魔法とは国を導く者たちに与えらえる精霊の加護だ。
その中でも一際魔法の力が強い者がいる。
そういった者たちは総じて精霊の愛し子と呼ばれ、その愛し子から生まれた次の世代もまた愛し子となる場合が多い。
エルミティアは、愛し子だった。
つまり、そのエルミティアから生まれたサイスもまた愛し子であるはずだったのだ。
ミランズ家は愛し子の血筋ではなかった。
だが、エルミティアと結婚し、そうして生まれたサイスはミランズ家の跡取りであるのなら、精霊の愛し子の血筋はミランズ家に入る事にもなる。
ミランズ家の輝かしい未来を祖母が思い描く原因の一つだったのだろう。
愛し子を育てたという実績や、そんな愛し子が正当なる後継者になるという事は。
ところがそうはならなかった。
サイスは愛し子ではないからだ。
愛し子にはなれなかった。それをぶち壊したのは祖母だ。勿論祖母はそんな事を知らなかった。
これが一介の貴族の単なる離縁であるのなら、そこまでオオゴトにはならなかっただろう。
けれども愛し子を酷使し、その実家から金を搾取していた家だ。
身分的にはミランズ家の方が上であっても、精霊の愛し子の血を引く家をだからといっていいように利用していいわけではない。
けれどもミランズ家は軽んじた。軽んじてしまった。サイスが生まれたのだから、愛し子の血筋は受け継がれたのだと甘く見た。
今までエルミティアが酷使された分と、無駄に払わされた資金。
財政がある程度立ち直った後もミランズ家はあれこれとエルミティアの実家から金を引き出し続けていた。巧妙にあの手この手で色々な理由をつけて、そうしてエルミティアからの手紙を装って――要は偽装したのである。手紙を。
筆跡だけなら真似る事は可能だったが、しかし魔力の痕までは偽装しきれなかった。
精霊の愛し子であるエルミティアの実家は、そういった鑑定ができる正当な第三者を入れて離婚裁判にて証拠を提出し、結果として不必要な搾取という点においてはミランズ家が言い逃れもできない状況に陥った。
この裁判は王家も注目していた。
王家とて、魔法の力の恩恵に与っているのだ。ここで精霊を敵に回すような真似をしてそれらの力がなくなれば、国は一気に衰退する可能性が充分にあった。
ミランズ家の搾取や酷使が間違いであったのならともかく、それらが事実であると立証されてしまえば王家が早々にミランズ家を見限る結果となるのは、言うまでもない話だったのだ。
裁判の時には旅行から戻ってきて領地でのんびり過ごしていた祖父もまた引っ張り出されていた。
祖父からすれば寝耳に水というか、青天の霹靂だった事だろう。
今まで明らかに劣っていたわけではなかった息子に家長の座を譲って、精霊の愛し子の血筋でもあるエルミティアと共にこれから先二人で上手い事やっていくだろうと信じて疑ってすらいなかったのに蓋を開けたらこれだ。サイスが生まれる前までの嫁と姑の仲も悪くなかったからこそ、祖父は安心しきっていた。
ミランズ家が支払うように言われた慰謝料と賠償金はあっという間にミランズ家を再び傾かせたし、離縁はやむなしとされ早急に認められる形となった。
母などいらぬ、と散々祖母にそそのかされて暴言を吐いていたサイスを、エルミティアは引き取ろうともしなかった。それ以前に、祖母がサイスを手放すつもりがなかったのも確かだ。
ミランズ家の将来はサイスにかかっている。精霊の愛し子の血を引いた彼がいればエルミティアなど不要だと祖母が思っていた事と、エルミティアがロイに対して愛も情も失くした事もあって、エルミティアはさっさと実家に帰っていった。
母親に置いていかれた、という事実を当時のサイスはどこか信じられないような気持ちでいたけれど、寂しいとか悲しいとかそういう感情ではなかったと思う。
ただ、もう会う事はないのだろうな……と漠然とした不安のようなものがあったのはハッキリと憶えている。
それでも、エルミティアがいなくなった事に祖母がご満悦だったのは確かだ。
もっとも、直後に祖母は祖父と離縁されて家を追い出されたのだけれど。
当然だろう。
折角息子の事を考えて、家格が下だろうと引く手あまただった家の令嬢との縁を結び付けたというのに、あまつさえ資金だって援助されていたというのに、そんな相手を大切にするどころか奴隷のように扱っていたのだ。
祖父はその原因となった祖母を許さなかった。いつまでも自分たちが近くにいてはやりにくかろうという思いとともに、引退後の第二の人生を過ごすべく身を引いたというのにそれを台無しにしたのだ。それでも、エルミティアと仲良くやっていくのならまだしも、彼女の立場を奪いいつまでも君臨し続けていた、となれば。
赦せるはずもなかった。
今更離縁して家に帰されたところで、祖母の居場所などあるはずもないがそれでも祖父は家から追い出したのだ。きっとあの時点で祖父はミランズ家の終焉が見えていたのだろう。
実際資金援助される以前よりも家は傾いたし、母に仕事の大半を押し付けていた父は今までロクに真面目にやってこなかったのもあって、いざ自分で何もかも執務をこなせとなったところでできなくなっていた。
母の手を借りる以前は、それでもできていたはずの事なのに長い間やらなかった結果、やり方をかなり忘れてしまっていたようだった。
朝から晩まで机にかじりつくようにして書類をさばいていた父だったが、一向に終わりが見えず彼は逃げ出した。
そうして、魔法が使える事もあって冒険者にでもなって一旗揚げようとでも思ったのかもしれない。
彼は、後日死体で発見された。
たまたま居合わせる形となった冒険者曰く、魔物と戦っていたようだけど、突如無防備になって一方的にやられたとの事だ。
遠くで目撃し、そうしてその冒険者が駆けつけた時にはすっかり手遅れだった。
恐らくは魔法を使おうとして、しかし不発に終わったのだろう、とは予想ができた。
ミランズ家の当主が死んで、権利はサイス――ではなく祖父へと戻された。
そうして祖父は、没落寸前の家を細々と凌いでいる状態だ。
いっそ、爵位を返してしまえばいいのかもしれないが、しかし平民になったところでサイスの人生が明るくなるわけでもない。それどころか、醜聞まみれの家の話がいつまでもついて回る。どれだけ頼りない盾であろうとも、貴族という身分はサイスの身を守る一つとなるだろう、と祖父が言うからサイスは今もまだ貴族と言う身分でいられるけれど、しかし周囲がこちらに向ける目は決して温かなものではない。
自分も父のようにどこかに逃げ出したい、と思う事は何度もあった。
けれど、祖父に逃げたところでそれらとはいつか折り合いをつけなければ、いつまでも付きまとうのだと言われて。
すっかり以前とは様変わりした生活を、しぶしぶながらも受け入れるしかなかったのだ。
父が魔法を使えなくなっていた、という事から調べてみれば、サイスも魔法が使えなくなっていた。
それについては、母の実家から原因についてを知らされる形となったので未知の病気などでもなく、普通に精霊に見限られたからだと知った。
精霊の愛し子であるエルミティアを軽んじ続けていたのだ。
自分が好ましいと思う存在を雑に扱われて、そんな相手を慈しみ、助けようなんて思う精霊はほとんどいない。
サイスは祖母に言われるまま、母をいらないもの扱いしていた。
それが結果として、精霊たちから顰蹙を買ったのである。
それでもまだ離縁前は家族として精霊たちも様子を見ていたようだが、しかし離縁した時点で血の繋がっただけの他人に成り下がった。
結果として、愛し子から生まれたけれどサイスは愛し子とはなれなかったのだ。
むしろ精霊たちが愛する存在に害をなすかもしれない存在とみなされた。
精霊直々にトドメを刺しにくるような事はなかったが、しかしもっと直接的にエルミティアを害するような事をしていたのならばどうなっていたかはわからない。
事実、父は精霊から見捨てられ、肝心な時に魔法が使えず命を落としたのだから。
周囲から蔑まれる日々。
それは、知らないとはいえサイスが母にしていた事と同じもの。
違うのはサイスは身内からそういう扱いを受けるのではなく、多くの貴族たちからという点だが、祖母にそそのかされたとはいえ、それがどれだけ酷かったのかを遅れてサイスは知ったのである。
魔法が使えなくても、それでも貴族として恥ずかしくない生き方をしなさい、と祖父はサイスに言った。
今まで父と、それから祖母に散々甘やかされてきたサイスにとって、とても辛くて苦しい生活だったけれど、それでもどうにかやってこれたのは祖父がまっすぐ向き合ってくれたからかもしれない。
……祖父も、きっとわかっているのだ。
祖父までもがサイスを見捨てたなら、本当の意味でサイスは独りになるのだと。そしてサイスはまだ一人で生きていけるだけの力は持っていない。
サイスを見る祖父の目には、家族としての情と、苦い後悔のような色が常に滲んでいた。
もし、父に当主の座を譲った後も共に屋敷にいたのなら、こんな事態は避けられただろうか……?
新婚に舅も姑もずっといるとなれば、息が詰まるだろうと気遣った結果だったはずなのに。
だがその結果が家を傾かせ、サイスの父は命を落とす事にもつながった。
ロイとエルミティアを結婚させなければ良かったのだろうか……?
その場合サイスもまたこの世に生を受ける事がなくなってしまうが、もしかしたらその方が良かったのかもしれないな……とは、最近になってサイスも度々思う事はあった。
そうは言っても生まれてしまった以上、生きていくしかないのだが。
祖父によって色々と教えられたサイスは、他家の貴族の子らと比べて随分遅れた状態で教育を受けなおす形となった。甘やかされてお勉強なんて嫌だと駄々をこねて遊んでばかりいたのだ。だが、いずれ祖父も死んだ後、残されるのはサイス一人だ。彼がせめて一人でも生きていけるだけの能力を身につけられるように、と祖父はサイスが泣こうが喚こうが生きていく上での重要な知識を教え込んだ。
どのみち魔法は使えないまま、貴族として生きていくにしても、ロイとエルミティアの離縁の際に慰謝料として領地の一部も持っていかれてしまった。残されたちっぽけな領地を経営し盛り立てるにしても、かつての栄光はきっともうその手にする事もないだろう。
遠い目をして何かを懐かしむようにかつてのミランズ家の事を語る祖父の事を、サイスは最初の頃はなんとも思わなかったがしかし、それでもずっと根気よく自分に向き合ってくれる祖父の話を何度も聞くうちに、自分たちがエルミティアを軽んじた事で祖父のかつての思い出でもあるミランズ領を見る影もなくしてしまったのだと。
そう思うようにもなっていった。
若さゆえの過ち、と言ってしまえばそれまでだが、それでもやらかした事実であるのは確かだ。
自己満足にしか過ぎなくても、サイスはまだ拙い状態であったが手紙を書いた。
かつて、母だった女性へ。
また自分と親子としてやっていきたい、なんて都合の良い事は書かなかった。
やり直せるのであれば、そもそも離縁する時点できっと彼女はサイスの事をなんとかして連れていこうとしたはずだ。
けれどもそうではなかった。
捨てられたのではない。
既にこちらが最初に手を離したのだ、という事を理解してしまったからこそ、幼さ故の無知と、信じるべき大人を間違えた事も含めての謝罪と、今後こちらがそちらと関わる事はない――迷惑をこれ以上かけるつもりはない、というこちらの意思を改めて伝え、それから。
せめて、これから先自分たちとは関係のないところで幸せになれるように、という祈りを。
サイスなりに、最初で最後の手紙だという気持ちで綴ったのである。
赦してもらおうとは思っていない。
きっとそんな時期はとっくに過ぎた後なのだから、サイスもそれを期待はしていなかった。そもそもこちらが願う立場ではないだろう。
幼かった頃のサイスであればわからなかった事も、ある程度成長した後となれば理解できるようにもなっていた。
手紙に返事がくる事など期待はしていなかったけれど、しかしそんなサイスの予想を裏切って返事が届いた。
そこには精霊の愛し子についても書かれていた。
精霊の愛し子が親となり、子を産んだとしてもそれだけでその子が精霊の愛し子にはなれないという事。
愛し子として、精霊との関わり方を親から子に伝えていくその過程で、精霊たちもまた生まれた子を愛し子として認めていくのだという一文を読んで、サイスは自分が愛し子でないという事実に納得したのである。
愛し子であった母を軽んじて更にはいなくなってしまえと言い放ったサイスが精霊に認められるはずもない。
精霊から見放されて魔法が使えなくなってしまったのも納得だった。
生まれたばかりの時の事をサイスは憶えてなんていないけれど、もし、その時祖母ではなく母がそのまま育ててくれていたのなら。
きっと今頃はサイスも愛し子となっていたのだろう。
既に失った未来ではあるけれど。
もしそうだったなら、果たしてどんな未来を歩んでいたのだろうか……?
このままではサイスの将来は決して明るいものではない。
魔法が使えなくなった以上、そして領地も減ってしまった以上、サイスがこの先大人になってもどうにかやっていくためには、文官の道に進むか、はたまた騎士となるかの二択だった。
祖父が根気強く勉強を教えてくれたとはいえ、サイスはあまり頭を使う仕事が得意ではないというのを既に理解してしまったので、そうなると騎士の道に進むしかない。魔法も使えなくなった以上、頼れるのは己の肉体である。
最初のうちは辛くて厳しいものだったけれど、それでも最近はようやくどうにか形になってきたと自分でも思えるようになって、先輩の騎士たちにもどやされるばかりだったが、それでも何回かに一度は褒められるようにもなってきた。
サイスが成人する頃に、はたして祖父がまだ生きているかはわからない。
祖母は――離縁され家を追い出された後、それでもどうにかしてサイスに取り入ろうとしていた。
個人資産を隠し持っていたのか、生活は随分と貧相になったもののそれでも生きていけるだけの貯えはあったのだろう。何度もミランズ家の周辺に現れて、どうにかサイスにとりなしてもらいミランズ家へ戻ろうと必死だった。
けれども、その少し後で母からの手紙で愛し子にはなれないという事実を知って。
サイスは、祖母の希望を打ち砕くべく、その真実を告げたのだ。
貴方がお望みの精霊の愛し子は、貴方の手でその立場を永遠に失いましたよ、と。
精霊の愛し子は精霊の力をより上手く扱えるのもあって、魔法が得意な者が多い。
けれどサイスはその真逆。魔法が使えなくなってしまったのだから、愛し子など名乗れるはずもない。
そんなつもりはなかったとしても、祖母のやった事はミランズ家を壊したも同然で、愛する孫の人生を初っ端からぶち壊したようなものだった。自身も離縁され、家を追い出され生家に戻ろうにも受け入れてもらえるはずもなく、更に孫からすべての元凶は貴方だとばかりに言われ、そこでようやく祖母は縋る希望を失った事を知ったのだ。
ミランズ家の次の跡取りが精霊の愛し子になれば、祖母はそんな孫を育ててきたのだと自慢できただろう。けれども実際は。
彼女の願望とは正反対の結果が現実となってしまった。
希望がなくなった、という事実を知り、祖母はすっかり消沈し、祖父に追い立てられてどこぞへ消えた以降、サイスは祖母の行方を知らない。
生きているのか、それとも既に死んでしまったのかも。
サイスにとっては優しい祖母だった。けれど、母との関係を壊したのも祖母だった。
死ねばいい、とまでは思えなくても、それでももうあまり関わりたいとは思えなかった。祖父も、あいつの事はもう考えるなと言っていたのでサイスはそこで、祖父の言葉に甘える形で祖母の事はもう考える事もしなくなった。
自分のせいではない、という思いは今でもある。
けれど、それでも自分もやらかしたのだというのもわかっている。
もし、当時の自分がもう少しだけ賢かったなら。
そんな風に思ったところで今更で、だからこそこれから先の未来はたとえ明るいものではなくても、どうにか足掻いて生きていくしかないのだ。
せめて、後は。
祖父に顔向けできないような人生を歩んだりしないように。
貴族としてまだかろうじて末席にいるような状況のミランズ家だが、しかし先はない。
祖父が死んだ後、サイスがきっと最後の当主となってミランズ家は終わりを迎える。
そういう事がうっすらとでもわかるようになってきたからこそ、サイスもどうにかその事実を受け入れて、覚悟を決めた。
嫁が来るとは思っていない。
たとえどうしようもない醜聞まみれの家となっても、せめて終わりは少しでもマシに……とは思っている。
そう思えるようになるまでには少しばかり時間がかかったけれど、しかしどうにかそれらを受け入れたのだ。
「……だからさ、僕を結婚相手に、っていうのはこれっぽっちもお勧めできないよ」
長い、長い前置きだった。
事の発端は、同じ騎士仲間である子爵家の令息が、親が決めた結婚に反発していて婚約者を蔑ろにしていた、という噂を耳に挟んだ事だったと思う。
サイスの身の上もあって、いくら家が決めた結婚で納得できなかったとしても、不誠実な態度を取る事がいずれどのような不都合となって我が身に降りかかるかわかったものではないのだ。
それもあって、サイスはそれとなくその子爵令息に忠告したのだが、しかし身分的にかろうじて上であってもサイスは没落寸前のミランズ家の人間であると知られている。そのせいで、サイス自身も軽んじられてその言葉は聞き入れられなかったのだ。
そうしてその子爵令息は、結婚をする前に早々にやらかしたのだ。
大勢の前で婚約破棄を告げ――ようとして、しかしその時には既に相手の方から婚約を破棄されていたという事実が大々的に知られる形となってしまった。
盛大な赤っ恥をかく結果となって、その子爵令息は騎士寮の自室に引きこもっているようだが、そのうち引きずり出されるだろう。
そして、婚約がなくなった事で婚約者だった令嬢は、何を思ったのかその足でサイスの元へと訪れて、そうして結婚の話を持ち掛けてきたのである。
「えぇ勿論ミランズ家の醜聞は知っております。
でも、精霊の愛し子を蔑ろにしていたのは、貴方が物心つく前の、やっていい事と悪い事の区別をつける以前の話だったのでしょう?
今はそうではない、違いますか?」
「そりゃあ……今はそれなりに分別がついたとは思ってるけど……」
「でしたら、問題ありません。
私、かつての婚約者だった彼に色々と酷い態度を取られてしまって、困った事は何度もありました。
でも、そういう時そっと助けてくださったでしょう?
感謝して、そうしてこうも思ったの。
貴方が婚約者だったらよかったのに……って」
「たまたま居合わせた時に、できる範囲でのフォローしかできなかったよ。
それだって微々たるもので、役に立てたとは思えない」
「それでも、その気持ちが嬉しかったの。
それにね?
私の家も、精霊の愛し子なんです」
「……それは」
「今の貴方はもう誰彼構わず陥れたり悪し様に言うような人ではないのでしょう?
でしたら、今からでもやり直す事はきっとできます」
「やりなおす、って言われても」
「精霊の愛し子となれるかはわかりません。それは、精霊の気持ち次第だから。
でも、愛し子になれなくても、隣人くらいにはなれるんじゃないかなと思うの。
愛し子でもある私が言うんだから、保証するわ」
「けれど」
「あと、いずれ爵位を返すというのなら、そうやってミランズ家を終わらせるくらいなら、うちに婿として来てほしい、っていうのが本音ね。
他に目ぼしいお相手もいないし、肝心の元婚約者様はあぁなっちゃったし」
「あぁ……うん」
ミランズ家の醜聞を、あの子爵令息だって知っていたはずなのに、そして時たまそれをちょっと馬鹿にするような事も言っていたのをサイスは知っている。
揶揄うネタ、程度で言っているんだろうなと思っていたし、実際本当の事だったからムキになって相手と事を構えるような真似をすれば、喧嘩両成敗でこちらもお叱りを受ける可能性があったから受け流したけれど。
いくら気にいらないといっても婚約者のご令嬢をよくもまぁあんな風に蔑ろにできるな……と思っていたが、まさかサイスの母と同じく精霊の愛し子と聞いて、あぁだからあいつあんなに落ちぶれたのか……と納得もしてしまった。
今までは魔法の腕も優秀だと評価されていたはずなのに、ある日突然魔法が使えなくなった事でその評価も一転、地の底にまで落ちたのだ。
身近に落ちぶれたケースが存在していたのに、まさか同じような事をしでかして落ちぶれるとは……自分だけは特別で大丈夫だとでも思っていたのだろうか……と呆れを隠せなかったものだ。
もっとも、サイスの場合は幼い頃に大人にそそのかされたというのもあるが、その子爵令息の場合はそそのかされるも何も……という話だったのできっとサイスよりも状況は酷くなるだろう。
「駄目かしら?
貴方が頷いてくれないと、私あとはもう年の離れた相手から結婚相手を探さないといけなくなるの。うちの両親の事だからあまり酷い相手を選んだりはしないと思うけど、でも、最初に選んだ相手が彼だったじゃない?
……次もそうだったなら、もっと大変な事になりそうなのよ。
その点貴方なら、既にやらかした実績があるから同じ過ちを繰り返さないっていう信頼があるわ」
「……嫌な信頼」
「ごめんなさい。でも、困っていた時にそっと手を差し伸べてくれたのが嬉しかったのも本当で、あとはそうね……精霊たちの反応がそこまで悪くなかったから」
「昔やらかしてるのに?」
「えぇ、今はそうじゃないから。精霊たちも貴方の事をどういう風に見ていいのか、きっとわからないのね。まだ許せないっていう声と、でも今はもう悪くないっていう声と。精霊たちの中でも意見が割れてるけれど、でも、まだ貴方の事を許せないっていう精霊たちも今すぐどうにかしてしまえ、って言ってるわけじゃないの。
許すタイミングがつかめてないみたいよ」
「そう言われても……」
「精霊は人間と違う。でも、理解しあえないわけじゃないの。
そうね、喧嘩して、謝るタイミングがお互いわからない……そんな感じかしら。私が見た限り」
「そういうものなのか……?」
「多分。貴方は精霊との関わり方を知らない。私は知ってる。
だから、一緒に生きていくのならそれを教える事はできるわ。
愛し子になれるかはわからない。でも、もしかしたら、魔法が使える程度には関係が修復できるかもしれない。
…………貴方が、私と結婚するのが嫌で、精霊との関係も今のままでいいのなら、無理にとは言わないけれど。
…………そうね、結婚してくれないなら私、いっそ修道院に行くのも視野に入れるべきかもしれないわ」
「さらっとこっちに責任を押し付けてこないでくれるか」
「悪いとは思ってるのよこれでも。
でも、結婚するなら貴方がいい」
そこで、サイスは言葉に詰まってしまった。
そもそも今まで、当たり障りのない友人関係を築くだけでも充分すぎる状況だったのだ。
すっかり落ちぶれてしまったミランズ家と付き合っても家の利にはならない。それもあって、サイスの存在など社交界から見れば取るに足らないものでしかなかった。
騎士としてやっていくために鍛えてはきたけれど、出世は恐らく見込めない。
それでも、細々とでもやっていけるだろう程度にはなれていたから、それ以上望むのは過ぎた事だと割り切っていた。誰かを好きになっても、一緒になっても苦労するのが目に見えている。
それもあって、無意識にそういった感情に蓋をしていたつもりだった。
それでも、仮にも友人だと思っていた相手の婚約者に思う部分があって、あれこれ手を貸してしまったけれど。
きっと自覚はしていなかったけれど、サイスは彼女の事が好きだった。決して自分と結ばれる事がないとわかっていたからその好意は簡単に封印できた。
報われる事がないと最初からわかっていたから、彼女にありのままで、親切にもできた。変に恰好をつけようとしていたら、空回りしていたに違いない。
そんな彼女の婚約が消えて、そうして彼女の方からそんな風に言ってくれるなんて、一体これは何の間違いだろうか……とすら思ってしまう。
「……結婚したところで、幸せにできるかわからない」
「幸せにしてもらおうとは思ってないわ。二人でなるのよ」
「……君は、強いな。心が」
「精霊の愛し子って大体そういうものよ」
そうじゃなきゃやってけないわ、なんて言われて。
サイスはふと、かつて母から返信された手紙の内容を思い出した。
最初で最後の手紙。返事なんてこないと思っていたのに、しかし精霊の愛し子について書かれていたそれには、最後の方に結婚はこりごりだから、修道院で生活すると書かれていた。
だから、もう会う事もないだろうと。
その生活を楽しみにしているという一文を、当時のサイスは強がりで書いたのだろうかとも思っていたけれど。
もしかしたら、本当に本心からそう書いたのかもしれない。
「婿、と言われても君の家に相応しくはないと思う」
「没落寸前でも伯爵家、うちだって伯爵家よ。
夫として色々不足していると言っても、貴方が存外努力家なのも知ってるわ」
「油断するとすぐ楽な方に行きそうになるから、必然的にそうするしかないんだ」
「そう。自分を追い詰めすぎるようなら、その時は私が息抜きに誘うわ」
「他にも色々と言ったところで、一つずつ封じられるんだろうな」
「えぇそうね。貴方が私とどうしたって結婚したくない、お前なんか嫌いだ、って言われるまでは諦めないわ」
それを言えば、本当に彼女は諦めてくれるのだろう。
それをサイスは理解してしまった。
けれど――
「……それは、言えない」
嘘でもそれだけは、言いたくなかった。
降参だとばかりに肩のあたりまでサイスは両手を上げる。それを見て、彼女は笑った。
「それじゃあ、いつまでも君、だなんて素っ気ない呼び方はやめて、名前で呼んで」
「……リュミエラ。その、君、という呼び方は別に一線を引いていたからというだけではなくて」
「知ってる。うっかり噛みそうなんでしょう? いいわ、貴方にならルミって呼ばれても何も問題ないもの」
やはり、何を言ったところで彼女はサイスを諦めてはくれないようだった。
仮にも妻になるであろう女性の名をきちんと呼べないなんて、問題でしかないと思ったのに。
ミランズ家の終わりは近づいていた。
けれど、それはきっと思っていた終わりとは異なるものになるのだろう。
祖父に結婚して婿入りする事になる、なんて言ったら驚きすぎて心臓が止まったりしないだろうか……なんて考える。
実際確かに驚くのだけれど、しかしそこでこうしちゃいられぬとばかりに奮起して最近衰える一方だった祖父に活力がみなぎって医者の予想を裏切って相当長生きする事を――今のサイスはまだ知らない。
リュミエラと結婚し、子が生まれたあたりで今まで使えなくなっていた魔法の力が蘇る事も、今のサイスは知らない。長い間魔法が使えなかった魔法初心者も同然のサイスが、自分のこどもたちと一緒になって魔法を習うまであと――
精霊は人間と同じように色んな種類がいるので、それぞれ愛し子の家での関わり方が異なります。
なので、その家のやり方で上手くいくのはその家と長い間付き合ってる精霊であって、他の精霊と上手くいくとも限りません。愛し子となればそれなりに手を貸してくれるけれど、愛し子じゃなくても一応貴族であれば魔法は使えます。精霊に見捨てられていなければ。
精霊と仲良くできるのなら、平民からも魔法が使えそうな相手が出てくるかもしれないけれど、精霊王との契約があるので基本は貴族の血を引いてないと使えません。
次回短編予告
婚約者との関係を終わらせたい。そう願ったものの、しかし相手の方が身分は上。
こうなったら記憶喪失にでもなって相手の事を忘れた事にして解消してもらうしかない……!
ところが何故だか婚約者が溺愛してきて……!?
っていう、よくある感じのを書きたくなったんです。
甘さがないのはなんでだろうな?
次回 嘘を纏う私たちは
ジャンルは恋愛……コメディ……いややっぱ恋愛か……?
相変わらずジャンルがわからない。