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束縛しちゃうぞ☆


 彼女の台はノーマルモード、つまり何のカスタムもしていない状態だから、演出が起こった時の当たる確率はデフォルトだ。

そしてあの剣保留はノーマルモードでも50%で当たる熱い演出っ!

 

『えへへ、先輩と話してるとなんだか心が温かいです』

 

そして彼女はそれに馴れているとでも言うのか、一切画面を見ずにスマホをいじっている。

この子あれか?

パチンコの演出に興味が無くて当るまで画面見ないタイプの人間か?

 

「あてら、画面見てみろよ、早速チャンスだな」

 

「チャンス……ですか? えーっと、そうなんですか?」

 

コイツまさか。

50%はチャンスでも何でもない、当たりとラッシュ突入

が確定するまではチャンスでも何でもないと、ラッシュに入ってからがパチンコのスタートだと分かっているんだ、そうに違いない!

 

「うるさ……じゃなくて……大きな音でびっくりしちゃいました、キャハ」

 

虹色の演出でてる!

そしてこのタイミングでようやくの笑顔!

成る程な、この子は俺よりも上のメンタルを持ってやがる。

普通パチンコってのは演出を楽しむ事が多いし、それ目当てで打ってるやつも多い。

だが、俺やその他のパチンコで金を稼ごうとする人間に取って演出なんて見なくていい物だし、当るまで画面すら見なくていい。

 

だけど……俺はついつい見てしまう。

いや別にずっと見るわけじゃないんだけどさ!

 

"いやなんも起きねーなー"とか"お、ワンチャンありそうなの来た"とかでチラチラ見ちゃうんだよ!

 

「先輩……そんなに見られると……恥ずかしいです」

 

さらにきっちりここでハンドルから手を離した。

当たっているのが確定したのだからもう今は打つ必要が無い!

なんだ……この子、初心者みたいだなって思ってたけど、全然違うじゃねぇか。


「……完璧だよ、あてら」


「私が完璧……? それって! それってつまり、もうそれって」

「ああ! お前は最高だって言ってんだ!」

 

俺は見ていた。

この子は保留が3になったタイミングで打つのを止め、熱い演出が来ても心を動かさず、ヘソ落ちを防ぐ為に当ったタイミングで打つのをやめた。

完璧だ、完璧にできている。

 

「その……結構重いですけど、それでもいいですか? 先輩が浮気したら許せないと思いますし、結構束縛しちゃうかも……勿論私は絶対に浮気しませんから! 本当に、本当に私でいいんですか?」

 

何の話?

結構重い?

……確率の話か?

確かに319分の1は重いけど……当ててるしそれでいいんじゃないのか?

 

後浮気、束縛って何?

まさか、ホールで打つ台をパチンコからスロットに変える事を浮気って言ってる?

となると束縛は……ハッ!

 

『先輩、今日はこの台打って下さいね』

 

『俺はその、そっちの台の方がいいと思うんだけど』

 

『釘読みも甘い! 当てられない! 示唆の推測も曖昧! そんな先輩が私に指図するんですか?』

 

パチンコ台をあてらちゃんに指定されるって事だ!

おいおいおいおい、これは、流石にこれは……。

 

……よくね?

いや全然いいわ、うん。

だって自分で調べなくても彼女が打つべき台を教えてくれるんだもん。

むしろこっちからお願いしたかった事じゃね?

 

「それはむしろこっちからお願いしたかった事だ」

 

ただ問題は打ち子として雇われるのか、それとも普通に情報を共有してくれるのか、だな。

このままじゃ打ち子まっしぐら……交渉しないと。

 

「先輩……!」

 

「だけど! ちゃんと指示は聞くけどさ、その、俺は俺でやらせてもらいたいんだけど」

 

「……浮気しないなら、少しは許します」

 

っっっしゃあ!

これで俺は打つだけでいい!

俺はツイてる、めちゃくちゃツイてる!

 

「ありがと! やっぱり最高だよ、あてら!」

 

「も、もぅ! ……先輩も……」

 

あ、そうだそうだ。

多分目押ちゃんもあてらの仲間だろうし、挨拶しとかないと。

 

『目押ちゃんも、これからよろしくな! 打ち子みたいな感じだけど収支別にしてくれるらしいし、がんばろうぜ!』


これでよし。

 

……勝てるぞ。

このままやれば100万なんて簡単に勝てる。

学費滞納せずに済むぞ!

 

「よっしゃぁ!」

 

思わず声を出してしまった。

また後ろからの視線が背中に突き刺さるが、そんな事はどうでもいい。

 

これから、俺の逆転劇が始まるんだ。

 

『何の話してんの、センパイ』

 

『言っちゃいけない決まりでもあんのか? まぁアレだ、これからしばらく一緒に打つ仲なんだからさ、よろしくな』

 

『やれやれ、センパイは私の美貌にほれてしまったのかな? 私は高いよ、コンプリートしたら声かけな』

 

『95000発で買われるなよ……』

 

『成る程、もっと高いって事か』

 

『自信を持つのはいい事だと思う』

 

『それはそれとして、そろそろ気付いた?』

 

『気付くって? 何に?』

 

『一回冷静になれ、ほら、飲み物でも買ってこい。私はコーヒーね』

 

一時離脱をした。

目押ちゃんはコーヒーをご所望だが、あてらは……。

お茶は一番無難だが……明らかにあてらは陽の者。

つまり無難なのを渡せば笑われる可能性がある。

しかしどれを選んでも……オシャレじゃない。

 

「……柚月に聞くか」

 

『好きな飲み物って何』


『ミルクティー、ミルクじゃなくて紅茶が強めのやつ。いきなり何?』

 

『何でもない、知りたかっただけ』

 

『暇人か?』

 

メッセージはすぐに返ってきてくれた。

この速さで返ってくるって事はお前も暇人だろうがよ。

とりあえずミルクティーでも買ってくか。

あ、目押ちゃんは俺と同じコーヒーでいいだろ。

 

自分の席が見えてきたぐらいで、目押ちゃんからいきなりメッセージが来た。

 

『今戻るな空気読め』


『は?』

 

『私がそっち行くから』

 

目押ちゃんが席を立ち、それをあてらが見ている。

……口が動いているから何かを話しているのはわかるんだが、ここからじゃ聞こえない。

 

あ、向こうの出口に来いって目配せしてる?

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