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俺と並び打ちして情報交換しないか?


そんな話を聞いているうちに、早くも俺の順番が回ってきた。

今回の抽選はボタン式、赤と青のボタンで2列に分かれて抽選を受けるタイプだ。

ちなみにどっちのボタンが当たりとかは無い、どちらも繋がっている先は同じ機械で、ランダムに番号が渡される。


中にはこのボタンは右側が良番、いい番号が出やすいとか、青色の方がいいとか……まぁ何の根拠もないオカルトを信じてる奴もいるらしいけど。

そんなの、バカの考える事だ。

 

「まって、遊さん」

 

「ん?」

 

「私が青色に行きたいから、遊さんは赤行って」

 

「……えっと、どっち引いても変わんないと思うんだけど」

 

「ふっふっふ、私の髪色で何か気付かない?」

 

髪色……青だ。

だから……?

 

「ハァ……今日のラッキーカラーは青って朝の占いでやってた。だから髪色も青にしたし、ボタンも青にすべき。だからかわって」

 

変わってんのはお前だよ。

口に出かけた言葉をなんとかして飲み込んだ。

あっぶねぇ、占いをパチンコに持ち込んでくる奴見たの初めてだったから思わず言いそうだった。

いや正確には初めてじゃなくて、コイツが初めてか。


「じゃあ俺が赤側な」

 

「ありがと、優しいね遊さん。ここで徳を積むとパチンコも当たりやすくなる。……見方によっては私が徳を積ませてあげた、つまり私も徳を積んでいるとも……」

 

やっぱりかわってるよお前!

徳とか普段使わないよ!?

徳を積むと当たりやすいって何?

パチンコは全部確率!

それ以外に介入する物なんて殆どないの!

 

「ごめんなさい、目押ちゃん昔から占いだとかスピリチュアルな物が大好きみたいで……」

 

「あー……成る程……残念な感じかぁ」

 

目押ちゃんが青色のボタンを押す。

画面に表示されている番号は画面の角度的にこっちからは見えない。

あ、俺もボタン押すか。

 

「ふっふっふ、今日の私はツイている。明らかに機械から番号が出てきたタイミングが違う感じがするし、手に取った感じがいつもと違う、温かい」

 

そらそうだろうよ。

印刷されたばっかの紙を掴めば多少温かいっての。

だけど、あそこまで自信満々に言われると少し彼女の番号が気になってしまう。

 

「遊さんが触った後のボタン……えい!」

 

後ろに並んでいたあてらちゃんまでいきなり何か言い出したんだけど。

……俺から運を吸い取るとかそんな感じのやつ?

 

俺の番号は66番、決して悪くはないが良くもない。


「二人共、どうだった?」

 

あてらちゃんは自分の番号が印刷された紙を俺に見せてきた。

こ、これは……!

 

「67番です! これって……いい番号……ですよね?」

 

「うんまぁ、その、特に悪くもないけど良くもないかな。丁度俺の後ろだし」

 

「遊さんの後ろですか!? ……普段スピリチュアルな物は信じないけれどここまで環境が揃うと……」

 

自分の手元を見て、俺を見る。

また手元に戻って俺を見る。

そしてそれを一人でブツブツと何か言いながら繰り返しているあてらちゃん。

 

……目押ちゃんと仲が良い理由が少し分かったような気がする。

 

「遊さん、私の番号を知りたい? 聞きたい? 知り聞きたい?」

 

なんて自信に溢れた顔ッ!

明らかにいい数字を引いたに違いない。

悪い番号、通称クソ番を引いてこの顔はまず出来ない!

 

ま、まさか本当にスピリチュアルパワーで、オカルトで番号を掴み取ったって言うのか!?

 

「……番号は、何番ですか」

 

「それはね」

 

何だこの緊張感。

よく考えればここは朝一のホール前で、ここにいるのはただの女の子だ。

なのに、それ以上の何かの圧力を感じる。

目押ちゃんの後ろから風が吹いている、俺とは違うぞと、何かを放っている!

 

「それは……?」

 

「今確認するから待って」

 

「へ?」

 

「私番号が印刷された紙を取る時に見ないようにしてるんだよね、だから手の中のクシャクシャになった紙を広げないとわかんな……あ、211番」

 

……風が止んだ。

圧力も消えた。

目の前にはあてらちゃんに番号の交換を涙目でねだる女の子がいるだけ。

 

「交換しようよあてら、ほら、いつもみたいに」


「目押ちゃん、もうさっき送った話を忘れちゃったの? 絶対に嫌だから大人しく後ろで並んでてね」

 

そして引き子って言ってたあてらから番号を譲ってもらう事にも失敗した彼女は、トボトボと自分の番号が床に書かれた場所に移動していく。

 

あれ。

ちょっと待て。

目押ちゃんまさか……。

 

「目押ちゃんの後ろの人はどこに行ったんでしょうか?」

 

最後尾引いてるぅ!

そしてあてらちゃんもめちゃくちゃ煽ってるぅ!

あ、やべ、目が合った。

 

『カ・ワ・ッ・テ』

 

口パクで話しかけて来やがった。


『イ・ヤ』

 

だから同じように返してやると、彼女はその場に座り込んでしまった。

……悲惨だ。

 

「さてと、そろそろ入店だけど、あてらちゃんは何打つか決めてるの?」

 

「え、えーっとですねその……こ、これです!」

 

あてらちゃんのスマホに映っているのは俺が打とうとしていた種類のパチンコだ。

さっき初心者かと思ったが前言撤回、この子はこのホールの研究をしているに違いない。

 

あてらちゃんが選んだ種類のパチンコ台は最新の台じゃない、だけどこのホールは最新の台よりも一つ古い台を勝ちやすく使ってくれる傾向がデータとして明らかだった。


「……成る程ね。俺もそれ打つつもりだったからさ、一緒に並びで打たないか? 色々と情報交換したいし」

 

「並びって、隣で、って事ですよね?」

 

「そうそう」

 

やれやれ、いつまで初心者のフリしてんだか。

 

「隣で情報交換……つまり……そういう事ですか!?」

 

「勿論だ、あてらちゃん」

 

この子に聞けば他のホールの傾向や熱い日、さらに抽選人数が少なくて勝ちやすいホールとかの情報をもらえるかもしれない。

 

「わかりました! 是非お願いします!」

 

だが情報はタダじゃない。

こっちもデータを根拠にした情報を渡さないと彼女はおそらく、いや絶対に情報を出してはくれない。

そのへんの駆け引きをどうするか……だな。


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