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見た目100点の美少女に囲まれて激アツ展開を迎えています  作者: ケイト


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20/26

練習デート


 「ありがとうございました〜」

 

高かった、予想の三倍は高かった。

なんだよ六万って、やばすぎるだろ!

遊タイム駆け抜けレベルでやばいって!

……やっぱり止めようと思ったんだけどさ。

 

『センパイ……ありがと』

 

巡に初めてドキッとしちゃって、嬉しそうな表情を壊したくなくて、もう支払うしか無かったんだよな。

 

「センパイ、本当に良かったの? 私にプレゼントするよりあてらにした方が良かったんじゃない?」

 

「あてら? 何で」

 

「センパイからプレゼントすれば、さらに惚れてくれるよ」  

 

「それはどうか分かんないけどさ、俺はお前にプレゼントしたかったんだよ」

 

「……。」

 

その服はあてらの雰囲気にあってない。

そもそもあてらにプレゼントするならもっと安い物にしてる。

 

「それはさ、日頃の礼も兼ねてると思ってくれ。いつもデータ分析、予想立て、狙い目のホール、穴場、全部調べてくれてんじゃん」

 

「でもそれはセンパイもしてる、私は手伝ってるだけ」

 

「それでもだよ、俺一人じゃ手回らない所もあるし、本当に助かってんだからさ、いつもありがとな、巡」

 

「私さ、センパイみたいに期待値を追い求めてパチンコを打つ人に出会ってこなかったの。私とまったく同じスタンスで、同じやり方で、同じ方向を向いている、そんな人に……」

 

巡はこれまでに見せた事のないような、それでこそ太陽のような輝きの笑顔を見せる。

 

「大丈夫、この服は出費じゃない、センパイは期待値を積んだの」

 

「それなら良かった、期待値は積むに越したことないからな」

 

「センパイが望む結果じゃないかもしれないけど、私はセンパイの為に頑張る。私が必ず、センパイの学費を稼いでみせる」

 

「ははっ、期待してんぞ、巡」

 

「うん」

 

「だけど今日は他にも行くとこあるんだろ? 明日から頑張ろうぜ」

 

「……あの、センパイ」

 

「ん?」

 

「この服、その、スカートの所のフリフリがちょっと長くて、踏んでコケたりするかもしれないから、その、えっと、手……握って欲しい」

 

「はいよ、んじゃ、次行くか!」

 

「……うん!」

 


 俺と巡が次に向かったのはなんともまぁ男一人で入ったらアラームが鳴り響き店内から追い出されるんじゃないかって思える程オシャレなお店だった。

巡曰くここのパンケーキをあてらが好むらしく、絶対に抑えておいたほうがいいとの事。

 

「えっと、このパンケーキ二つ、それにコーヒーも二つ」

 

さてと、この追い出されそうな雰囲気の店が連続した事はまぁどうでもいい。

それよりも俺は今、めちゃくちゃ困っている。

これまでにないベクトルで、どうしたらいいのかが分からないんだ。

 

何で困ってるかって?

そりゃ……。

 

「ここは絶対ハズレないから大丈夫、虹保留だと思ってくれていい」

 

この服を着て、普段見せない笑顔を全開で振りまく巡にドキドキしてるって事だ。

特にやばかったのはさっきの、手を繋ぐって所、あれはやばかった。

え、俺のドキドキって手から伝わってたりしないよな?

これ巡にバレてたりしないよな!?

 

「そういや虹保留ってハズレるらしいぞ? 確か某アイドルグループの台でそんな事があったような」

 

「ならインパクトフラッシュだと思ってくれていい、女の子からすればここのスイーツは全部全回転当たりみたいな物」

 

「あれ鳴っても別に全回転じゃねぇぞ? MAXラウンド確定なだけだ」

 

「とにかく期待していいって事を言ってるのに、センパイはすぐパチンコ関係の話をする。やれやれ」

 

「始めたのはお前だろうが」

 

「女の子のせいにしない」

 

「こんな時だけ女の子アピールを……」

 

少しツンとした表情だ。

店の雰囲気と彼女の服装は完璧に合っているし、これまた普段見せない表情。

……おちつけ、おちついてこのドキドキを悟られないようにするんだ、お前ならやれるぞ、遊!

 

「私だって……女の子だもん」

 

いや無理ーーーッ!

普通に今可愛いよ巡って言いそうになったんだが!?

これがギャップってやつか? そうなのか!?


「センパイ? 俯いてどうしたの」

 

「何でもねぇよ、ただ……あー、女性客ばっかりだなーって」

 

「む。あのねセンパイ、女の子と二人で出かけてる時に他の女の子の話はしちゃダメ。あてらなら自分に魅力が無いと勘違いしてへこんでたよ」

 

「お前はへこまないのかよ」

 

「……元々可愛くないし、無愛想だし、趣味も本業もパチンコだし」

 

「いや可愛いって」

 

「えっ」

 

「あっ」

 

漏れ出てしまった。

やっべぇ……セクハラだって言われるか?

確か柚月は……。

 

『いい? 女の子はね、好きでもない男に可愛いとか言われたり、変な目で見られるのはただ気持ち悪いだけなのよ! だから絶対にそんな事言っちゃダメ!』

 

『それは心から思ってもダメなのか?』

 

『当たり前でしょ! 相手がどう思ってるかどうかが大事なの! ……アタシなら……いいけど』

 

『柚月が可愛い? あはは、面白いこと言うじゃん! よっ、筋肉ゴリラ!』

 

『ぶっ飛ばすわよ』

 

だったよなぁ……。

まずい、とにかくまずい。

空気が死ぬ前に話題変えるか?


「…………」

 

巡黙ってる!

空気重い!

あ、これやばい。


「私は、あてらの親友だから……」

 

何かわけわかんねぇ事言ってるし。

と、とにかく動かねば死ぬ!

 

「センパイ、あのね」

 

「あーパンケーキもいいけど何か飲みたいなぁ! コーヒーじゃなくってもっと別の」

「でしたら、お客様! 当店にはスペシャルなメニューがございます!」

 

「うへぇ!?」

 

また背後に店員がいやがった。

おいおい、今日の店員はどうなってんだよ、全員潜伏しなきゃいけないルールでも出来たのかってぐらい静かに背後取りがってよぉ!

 

「スペシャルなメニュー、ですか?」

 

「はぁい! しかもこれは普通では注文する事すら困難、そちらのメニュー表にも載っていない、いわゆる……裏メニューですわ!」

 

ここはお嬢様コンカフェだったのかと思うような、金髪縦ロールのお嬢様風店員が裏メニューを勧めてきた。

普段なら、なんだこの人怖っ!

ってなるだけだろうけど、今日、そして今のこの空気をぶち壊すにはぴったり!

よくやったぞ、金髪お嬢様!

 

「それはすごい! じゃあそれをお願いします! 巡もそれでいいよな?」

 

「あっ、まって、ここの裏メニューは」

「もちろん2人分のを用意しますわ! それではすぐお持ちしますので、少々お待ちを、ですわ〜!」

 

嵐のようなお嬢様店員だったが、空気は完全に変わった。


「裏メニューってどんなのか気になるな」

 

「えっと、センパイ、ここの裏メニューはね……その……」

 

「知ってんのか?」

 

「うん、だから」

「お待たせしました、ですわ〜! カップル限定特別ドリンク"愛のVストック"をお持ちしましたわ〜!」

 

「愛の……えっと、なんだって? Vストック?」

 

「あらお客様、パチンコをご存知ありませんこと? Vストック、つまり次の当たりがストックされていると言う事ですわ」

 

「いや分かるけど、分かるけどなんでVストック?」

 

「それはもう……このドリンクを飲んだら次が確定するから、ですわ〜!」

 

次が確定って何、わんこそばみたいな事?

つーか待て、名前のインパクト強すぎてドリンクを見てなかったけど、これって……。

 

「言われた通り、ストローは二人で飲めるようにハート型の物を用意しましたわ! このドリンクの自慢点はこの色と味にありますわ! ご覧下さい、この輝くレインボー色を!」

 

確かに輝いてる。

それこそ虹保留とか虹演出レベルで、もう本当、人体に影響が出るんじゃないかって、レベル。

色は問題じゃないんだよ、いや問題なんだけどさ。

 

「これってその、アニメとかでよく見るカップルが頼むタイプの飲み物じゃ」

「もちろんですわ! 当店の裏メニュー、カップル限定ドリンクですわ」

 

カップルじゃないってのーッ!

おいおいおいおい、これ巡にどうやって説明すんだよ。

思い返せば巡はやめとけって雰囲気出してたのに、俺全部無視してんじゃん!

 

「カップル……センパイと……」

 

「あ、いや違うぞ巡! 俺はお前とカップルなんかじゃない! だよな?」

 

少し大きな声で言ったからなのか、店内の目線が全て俺に集まる。

そしてその目線の全てが、めちゃくちゃトゲトゲしい物ばかりで、お嬢様店員もさっきまでの笑顔とは打って変わって、すっげえ睨みつけてくる。

 

「そうだよね、私じゃ……」

「大丈夫ですわ……お客様、少しお連れ様をお借りしますわ」

 

巡を連れて店の端に行ってしまった。

……くっそ、さっきは巡との間の空気に苦しんで、それが終われば店内の空気に苦しむのかよ。

なんか店内BGMも止まってるし!

頼む、やはく戻ってきてくれ!

 

「ごほん、彼女さんを借りてしまい失礼しましたわ、お客様、先程この女性を彼女ではない、そうおっしゃいましたよね?」

 

「えっと、はい、そうですけど」

 

「でしたら、本来このドリンクはカップル限定激安価格で提供しているのですが、正規料金を請求させていただきます」

 

「うぇ!? いや待って下さい、俺は値段知らなかったんですよ?」


「値段も知らないまま注文をしたのはそちらでしょう? もうこうして提供したのですから、お代はいただきます」

 

くっ……言い返せねえ。

確かに俺が注文した、しかも値段を見ずにだ。

ま、まぁどうせ千円ぐら

「お代は一万円ですわ」

 

「一万!? ま、まじで!?」

 

「とーぜんですわ! これでも安いぐらいですのよ?」

 

クソぼった店じゃねぇか!

ホール以外でこの言葉を使う事になるとは思わなかったが、明らかにクソ店だ。

 

「巡、お前からも」

 

「……わ、私はその」

 

顔がめちゃくちゃ赤い。

怒ってる?

いやそらそうか、いきなり一万払えって言われたらそりゃそうなるか。

 

「本来はきっちり一万円のお支払いをしていただくのですが……お客様方がカップルであると言うならば話は別です」


「と、言うと?」

 

「カップルであればカップル価格の五百円で提供しますわ」

 

「……くっ、巡、嫌かも知れねぇけど、今だけ俺の彼女になってくれ!」

 

……ん?

あれ?

何で店内で物音一つしないの?

何で巡はそんなに悲しそうな顔をしてんの?

そんなに嫌か?

そりゃ……嫌だよなぁ。

 

「そんなの認めませんわ! 料金は二倍、二万円にしますわ!」

 

「ちょっとまて! それもう何かしらの法律に引っかかる売り方だろ!」

 

「口答えすると三倍にしますわよ!」

 

ぐぬぬ。

 

「……いいですか、はっきり言いますが、彼女はお客様の事を嫌ってはいません。むしろ好」

「は、話と違う事言わないで!」

 

巡がめちゃくちゃ慌ててる。

 

「……失礼しました。とにかく、そんなデリカシーゼロでこの場しのぎの発言はNGです! 誰もバカにしませんし、茶化したりしません。ですからどうか、真剣に、彼女に告白して下さい」

 

店内の目線が柔らかい物に変わった。

見渡すと女性はキラキラとした目で俺と巡を見ているし、キリッとした目つきで男は親指を立てている。

……つまり、値段を下げたければ嘘でもいいからマジっぽい告白をしろってことだよな?

 

「……わかった」

 

巡は最高に挙動不審だ。

目もキョロキョロしているし、手元も手遊びが止まらない。


「巡、俺を見ろ」

 

「ふぇ……」

 

今から嘘で告白するけどセクハラとか言わないでねと口で言えない以上、アイコンタクトぐらいしか伝える方法は無い。

 

「いいから、俺の目を見ろ」

 

「……はい」

 

目が合った。

しかし告白か、何を言えばいいんだろうか、した事が無いからまるで分からない。

……待てよ、確か告白成功で大当たりの台があったよな?

よし、あれなら!


「巡、お前は俺にとって大切な人だ。口にするのも伝えるのも初めてだけど、いつもありがとな」

 

「……うん」

 

「最近思うんだよ、お前にとって俺は友達なのか、ただの友達なのかって」

 

「…………」

 

「そう思った時、巡からすれば友達だって思われてる事がすっげー嫌だったんだ」

 

「……なんで」

 

ここでの"なんで"は赤テロップ演出だ。

これはどうやらコイツにも嘘告白だって事が伝わってるな、よしよし。

 

「俺はお前に友達以上の感情を持ってたからなんだ! 俺と同じ物を求めるのは間違ってるのかもしれない、だけど、お前にも俺を好きになって欲しいんだ!」

 

次のセリフは……JUDGE前最後のセリフだから、アレだな。

 

「俺はお前が好きだ! だから、どうか、俺事を好きになって下さい!」

 

ここでボタンを押すもしくはレバーを引く!

そして帰ってくる答えは……"言われなくても、もう好きだよ、バーカ"だ!

 

「センパイには、あてらがいる。あてらの想いを、私も、センパイも知ってしまってる。ここで私がセンパイに振り向いたら……どう説明すればいいのか分かんない」

 

「えっ……」

 

「私だってセンパイが好き! 一緒にいて楽しいし、向いてる方向も同じで、お互いを助け合えてるし、センパイとならパチンコだけで食べていけるとも思う! でも、でも私はあてらの親友だから、センパイの彼女になる訳にはいかないの!」

 

おいおいおいおい。

セリフ違うじゃねぇか。

これ会話のボール俺に来てるよな?

もうセリフ無いんだけど?

ねぇ、どう返すのが正解なの!?

 

「……ごめん、でも、私はセンパイの彼女にはなれないよ。あてらを裏切れない」

 

「あてらの事は今どうだっていいだろ」

 

こうなりゃヤケだ。

思った事を話すしかない!

 

「ッ! あてらはセンパイの事が好きなの! それを知っておきながら私がセンパイの彼女になったら」

「俺はお前の気持ちが知りたいんだ! あてらの事も俺がなんとかする! お前とあてらを仲違いしないようにしてみせる! だから今は、お前の気持ちを聞かせてくれ!」

 

「私の、気持ち?」

 

「巡はずっとあてらの事を気にしてたな、でもよ、パチンコも人生も結局の所個人戦だ。そんな遊タイムが近づいたから台を渡すみたいに、もったいない生き方すんなよ!」

 

「……私は」

 

「お前の本心、聞かせてくれ、お前の気持ちを知りたいんだ」

 

「……あてらに負けないぐらい、ずっと、ずっと、センパイの事、好きだよ、バーカ」

 

店内が拍手に包まれる。

多少アドリブが入ったが、最後はちゃんと演出のセリフを持ってきてくれた。

あーあ、これが本当の告白だったら、巡と付き合えたのかもしれねぇな……。

少しだけ、いや嘘だ、結構勿体無い事をしたよな、俺。

 

「これこれこれですわ! お互いの本心に恐れながら触るような空気、甘酸っぱいこの感覚……あぁぁぁぁ、脳にキマりますわ〜!」

 

「……そりゃどうも、つーかパンケーキはまだですかね」

 

俺がパンケーキの話をするとよだれを垂らしているお嬢様店員は"やっべ、忘れてた"と言いながら厨房に戻っていった。

 

「ふー、なんとかなったな、巡」

 

「そうだね、セリフ、バレなくてよかった」

 

「やっぱり気づいてたか、なら変にアドリブ入れんなよな」

 

「ねぇセンパイ、あのアドリブ、本心だと思う? それとも即興で作った嘘だと思う?」

 

「……嘘なんじゃねぇの」

 

「ならセンパイのアドリブも嘘? それにしては感情入りすぎてた気がしたんだけど」

 

「俺のは本心だよ! お前はあてらに遠慮して自分の事を」

「私も本心だよ、センパイ」

 

巡は今日一番の笑顔を浮かべていた。

 



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