女の争い
今日は本気の本気、先輩と本気で結ばれる日。
下着も可愛い物を選んで、目押には夕方までに帰るように言っておいた。
二万円で言う事を聞いてくれるなら全然安いし、彼女は私の恋を応援してくれてる。
「目押の為にも結ばれないとね……よし、いつも可愛いけど今日の私は五割増で可愛い!」
今日のホールの近くのお店にホテルの場所、ホールを出てから先輩をどう誘導して連れ込んで貰うかも完璧にシュミレーションしたし、現地も見てきた。
「私の為って言うけど、自分の為でしょ」
「うっさいわね……じゃなくて、うるさいぞ、目押ちゃん」
「センパイと私でそこまで態度変えるの、酷くない? そのままのあてらでもいいと思う」
「多分先輩はそれでも受け入れてはくれる、だけど、受け入れてくれない可能性もあるんだよ」
「そこは、信じるべき」
「そんなリスク背負いたくない。だったらどんな男にも好かれる男の理想の女を演じてたい」
「でもそれは、本当にあてらの事が好きだって事になるの? 作られたあてらが好きなだけじゃない?」
「作られた私も私だよ、目押ちゃん」
先輩からの連絡、あと少しでここに来るらしい。
ボロを出さないように、いつもの可愛いあてらを作るのに集中する。
「私は先輩に決めたし、先輩も私に決めたの」
そう、だから私がこの運命を守らないといけない。
あの幼馴染から、先輩を守るんだ。
「……そう、でもね、あてら」
「私達、親友だよね、目押ちゃん」
「うん」
「だったらさ、応援してくれると嬉しいな」
「私はあてらの親友として、貴女を応援しているのは分かって」
目押の奴、嘘ついてる。
どんだけ一緒にいるとおもってんだ、瞬きが多いぞ。
嘘といっても多分さっきの作られた私が〜って話の所かな?
きっと素の私を出すべきだと心から思ってる。
「あっ、センパイ来た」
「……よしあてら、今日は攻めるよ!」
自分に喝を入れ、目押の見る方向に視線を移す。
何十時間も練習した嫌味の無い笑顔で、可愛い彼女がお出迎え……。
「えっ」
「あ、財布の人だ」
何で、その人が隣にいるんですか、先輩。
あんなに注意したのに何で?
優しくしないでって、お願いしたのに。
どうしてですか、先輩。
「二人共早いな、まだ抽選まで三十分はあるぞ」
「気合いが違う、それに占いに先手必勝とあったから、早く来た」
「お前占いって……まぁいいや、目押はもう会ってるとは思うけど今日は俺の幼馴染も連れてきたんだ! まぁパチンコを嫌ってるから番号引いたら帰るみたいだけど」
気まずい空気が流れてる。
あの女はこっちを見て驚き、私の服装と雰囲気で何かを察したみたいだ。
今さら睨んでも遅いんだよ、バーカ。
「流石私の先輩! 今日もかっこいいです!」
先輩の隣にいた女近くの腕を掴み、おもいっきり私の胸を押し当てる。
「あてらさん!? あた、当たって、その」
「えー、よく聞こえないですぅ、もっと近づいてもいいですかぁ?」
顔を真っ赤にする先輩。
コーヒーを飲みながらぼーっとしている目押。
そして……。
「ちょっといいかしら、計数さん」
笑顔を作れてすらいない、余裕を無くした女。
「あっ、花代先輩じゃないですか、おはようございます」
「おはよ、それで、ちょっとこっち来てくれない?」
「いやーん、怖いですぅ! 先輩助けて」
目押の奴!
ぼーっとしてないでこの女押さえといてよ!
言ってないから無理だと分かってる、だけどコイツと先輩が近づくのは許せない!
「柚月、何怒ってんだよ」
「何でも無い! あと怒ってないから!」
「うわ、めちゃくちゃ怒ってんじゃん。お前さてはあてらの可愛さに嫉妬して」
「黙んなさい」
これはここで解決しないな。
「目押ちゃーん、ちょっと来て〜」
「ん、そういや先輩、今日の狙いなんだけど」
「昨日話したろ?」
「あれは番号が良かった時の話でしょ、悪かった時の台を細かく決めてなかったから、あてら、先輩貸して」
寄ってきた目押は状況を理解していたみたいで、先輩を呼んで今日の狙い台の話をし始めた。
悔しいけど本気で勝ちに来てる先輩からすれば、彼女よりも事前の打ち合わせの方が大切なはず。
だから、これは仕方ない。
「ねぇ、協力してくれるんだよね?」
「はい! その為にまずは好みを知ろうと思いまして。ここじゃアレですし向こうで話しましょうよ、色々聞かれて困るんじゃないですか?」
「コイツ……!」
二人でホールの裏側に来た。
ここなら多少騒いでも先輩は来ない。
「……私も女だからさ、なんとなく分かるのよ。アンタ、本気でしょ?」
「もしそうだとしたら、どうしますか? 可愛さで私に勝ちますか? それともスタイルで勝ちますか?」
スタイルも可愛さも私の方が上、お前が勝ってるのは先輩との思い出の量だけだ。
「……ッ! アイツはそんな外見で判断しないわ!」
「外見は中身の一番外側です。つまり外見が悪いって事は……アハハ! どうしましょう、花代先輩は何もかも私に勝ててないみたいですね」
「うるさい……負けない、嘘つきの泥棒猫のアンタなんかに絶対に負けないんだから!」
「幼馴染ってだけで、ただ昔から一緒ってだけで何もしてこなかった臆病者のくせに、私に噛みつくの止めてもらえませんか? どーせこれまでも先輩相手には何も出来ないから、近づく女に対して何かしてきたタイプでしょうけど、あんまり私を舐めないで貰えます?」
「そんな事してないわよ、それをしてるのはアンタなんじゃないの」
「ええ、してますよ? でも私は自分からもアタックしてますから」
「アンタみたいな性格ブスに遊は渡せないわ」
「お前みたいな臆病で全て私の下位互換の女に負けるビジョンはまったく見えませんけど、頑張って下さいね」
今日のお前の服は私が着ていた服。
先輩はお前を見ても私の事を考えるように仕込んであるし……何より、この勝負はそもそも意味がない。
この女は私がもう先輩の彼女だって事を知らないからこんな事が言えるだけ、フフフ、可哀想。
「さてと、先輩の所に戻りましょうか、負け犬せんぱ……じゃなくって、花代先輩」
「……だから女には気をつけなさいってあれ程言ってたのに、こんな女に狙われて、遊が可哀想だわ」
「可哀想なのはどっちだか、すぐに分かりますよ」
本当に可哀想なのはお前だよ、バーカ。




