009.高潮(三)
再び広い空間に出た一行はそこにいる魔物の構成を見て目を見張る。
さきほどの戦闘でミゲルが新スキルでようやく倒したクロチャッキーが今度は五体。
アモンがチラッと触れていた赤いヒューラットが二体。
加えてそれらよりも更に体の大きいジャイアントラットと呼ばれる魔物が一体。
そしてもはや雑魚扱いのヒューラットがチラホラと十数体ほど。
「マズイな」
一番先に言葉を発したのがアモンだった。
アモンをもってしてもこの魔物の一群に『青の開拓者』が対峙する方法が思い浮かばないのだった。
ノビリスに至ってはまたもや頭の中で撤退モードのループが始まっていた。
「ちょっと一旦戻ろっか」
意外にもヤンがそう言ったのでノビリスは渡りに舟とばかりに後退合図を出す。
* * * * *
広間に出る手前の通路を曲がって身を隠してから改めて作戦会議。
「アカクロ揃い踏みにドンチャッキーまで……。これはちょっと厄介だなぁ」
ヤンのちょっとがどれくらいなのかは現状誰にもわからない。
「ヤン君、赤いのと大きいヤツはどういう魔物なの?」
サラが初見の魔物についてのレクチャーを求める。
「アカチャッキーはクロみたいな耐性はないんだけど、とにかくすばしこいんだ。それに興奮すると体の毛が炎になって燃えるから熱くて大変なんだよ」
「体が炎ってどういう事なんだ少年」
「全身炎に包まれる感じかなぁ。あ、でも頭と尻尾はそのままだよ」
「なるほど耐性の代わりに火属性が付加されてるイメージか。確かに厄介だな」
今は冷静で頭も回っているミゲル。
「あと大きいのはドンチャッキーって言って、立ち上がって前脚の爪で攻撃してくることがあるよ」
「あの大きいのが立ち上がるの?」
「うん。そうすると高さが4mか5m位になるんだ。図体の割には動けるし力もあるし体力も豊富で倒すのは大変だと思う」
「…………」
四人とも言葉がすぐに出てこない。
「ドンチャッキーは普通なら代理主で戦うはずなんだけど、こんな所にもいるなんて完全に想定外だよ。やっぱり高潮って油断ならないなぁ」
「少年、そうすると代理主には今何がいるんだ?」
「うーん、なんだろう? 別な魔物かもしれないしレベルの高いドンチャッキーの可能性もあると思う」
「そんな先のことより今は目の前の魔物でしょ。ヤン君、何か作戦はないの?」
「ボクが口出ししていいの? ノビリスさん?」
「あ、ああ……もし何かあるなら是非アドバイスが欲しい」
まだノビリスは撤退モードから抜け出せていないのかもしれない。
「一匹ずつおびきだせればいいんだけど、ちょっとやってみる? 失敗して一気に来られたら死んじゃうかもだけど」
「おいおい少年、そんなギャンブルは勘弁してくれよ」
ヤンの口調がまるっきり冗談というわけでもなさそうなのでミゲルも半分笑っていない。
「メインルートまで戻るっていう手もあるよ。時間はかかるけど安全だし最後の代理主だけ気を付けたらいいし」
「なら少年はオレたちにそうしろって言うのか」
「ボクは案内人だから決めるのはボクじゃないよ」
「でも他に方法はないんでしょ?」
「全くないわけじゃないけど……」
「言ってくれ、ヤン」
言い淀むヤンをアモンが後押しする。
「本当はよくないんだけど、さっきみたいな感じでボクが一緒に戦えば簡単だよ。なるだけトドメはみんなに譲るようにするし」
「よくないというのは契約上ってことなのかな」
「まぁそれもあるけど、みんなは冒険者だから案内人なんかの手を借りるのは本当はイヤでしょ」
「イヤじゃねーよ別に。誰がそんなこと言ったんだよ」
「え? だって今までの人たちはほとんどそうだったよ。案内人なんかが出しゃばるな。オレたちだけでやれたのに余計なことをするなって」
「なにそれひどッ……」
「依頼書で案内人の戦闘参加が有りになってても言われることがあるから、冒険者の人たちは自分たちの力で戦って勝ちたいんだろうなって思ってたんだけど、違うの?」
「みんながみんなそうだとは限らないと思うけど」
「いや、リーダーは人がいいからそう言うが普通はやっぱ多少は抵抗あるんじゃねーか」
「あんたもあるの?」
「オレぁ別にねーけどよぉ。少年には色々世話になったし」
「現金すぎて身も蓋もないわね」
「だが少年がそんなヤツらとオレらを一緒にしてるのは気に入らねぇ」
「同感だ」
ミゲルにアモンが賛同する。
「そうだな。少なくともオレは……いやオレたちはヤン君のやることはオレたちのためにしてくれているんだって思ってるし、ダンジョンに入ってからここまでずっと世話になりっ放しで感謝しかないよ。なぁみんな」
「リーダーの言う通りだぜ、ヤン少年」
ミゲルが初めてヤンの名前を呼んだのでヤンがちょっと驚いた顔になる。
「そうよ、ヤン君」
「そういうことだ」
と、アモンが締める。
「だいたいさっきは思いっ切り一緒に戦ってたのに今更そんなこと言う方がどうかしてるぜ。短い間かもしれねぇがヤン少年は今はオレたちの仲間なんだからよ」
とヤンの肩に手を回すミゲル。
ノビリスとサラもそうそうと相槌を打ちながらヤンの傍まで来て腕や背中をポンとソフトタッチ。
肝心のヤンはというときょとんとした顔でタッチされる度キョロキョロ頭を動かしていた。
最後にアモンがヤンの正面に立つと、右拳でヤンの左胸を軽くトンと突く。
ミゲルに肩を抱かれたまま、ヤンも右拳をアモンの左胸にトンと返す。
「なんだよこれ、チョー恥ずかしいじゃねーか」
ミゲルが堪らず本音を吐いたところでみんな大笑い。
「シーッ!」
アモンが半分笑いながらも口に手を当て、一応魔物がすぐ隣のスペースにいることを思い出させる。
するとみんなも真似て口に手を当てながら声を立てずに静かに笑い続けるのだった。
* * * * *
「よし来いッ!」
気合充分のノビリスが【盾防御】を発動した直後に一体のクロチャッキーが盾に激突。
【盾攻撃】!
ノビリスによる盾スキルのセルフ連携。
黒い巨体がジャッと声を上げて1mほど押し戻され怯んだその瞬間、ミゲルが飛び出す。
「食らえッ!」
【回転斬り】!
【回転斬り】!
【回転斬り】!
勢いよく回り続けるミゲル。
よほど三半規管が丈夫に出来ているらしい。
その後ろに更に二体のクロチャッキーが迫っているが前が詰まっているので先へ進めない。
何故前が詰まっているのかというと、ノビリスのちょうど正面を幅約2m程空けて両サイドに斜めに開く形に透明な石壁をヤンの土魔法で生成してあるのだった。
石壁の高さは約10m、長さは約50m。
見えない壁なので接近してくる途中から自然と壁ズリで中央に寄せられ、最終的には縦に並ばざるをえなくなる。
魔物側からすると見えない壁に阻まれる時点で混乱するし、こちらからはその様子がよく見える。
檻のように四方を完全に閉じ込めてしまうと全力で壁を破壊する方にいってしまうが、一方向のみ進行不可という場合は概ね方向転換へと行動が向かうらしい。
この状況でちょろちょろ動き回れるのはヒューラットくらいだが、そちらはアモンに任せてある。
サラはアカチャッキー戦に向けて魔力温存。
剣でノビリスのサポートに徹しているが、今のところほぼ出番はなし。
というわけで今現在はノビリスとミゲルがヤンのサポートでクロチャッキーを倒すというフェイズだった。
今接近している三体以外はヤンが別途石壁で足止めしており、そのコントロールにヤンは集中していた。
「ハイ、ひとーつ!」
言うなりミゲルが一旦ノビリスの背後に戻る。
次のクロチャッキーが倒れたクロチャッキーを越えてノビリスの盾に突進。
【盾攻撃】!
以後は同じ手順の繰り返し。
クロチャッキー、知能が高いとはいっても所詮はネズミ。
統率できるのも下位のヒューラットくらいで、クロチャッキー同士で連携を取るにはお互い競争意識が強すぎるらしい。
ましてやアカチャッキーやジャイアントラットとの連携などは望むべくもない。
「ふたぁーつ!」
最初の一体よりも早く倒せたのは偶然かミゲル。
「残りのクロチャッキーも来るわよ」
二体減ったのを見たヤンが別途二体の足止め用の石壁を解除したのだった。
尚、アカチャッキーとジャイアントラットは引き続き短い透明な石壁で作った迷路にハマったまま右往左往していた。
「いつーつッ! ってうわッ、マジかよ……」
「どうしたんだミゲル」
「いや、またピロリロリ~ンがきたんだよ。ちょっとヤン少年、後ろのヤツはまだ待ってくれ頼む」
「オッケー」
ミゲルはステータスを確認している。
「オホ! 【必殺剣】がレベル2になりやがった。ウソだろ今日覚えたばっかだぞ」
「クロチャッキーを一人で六体も倒したからだね。まだレベル1だったし」
「そうなのか?」
「そうだよ。一つの行動を出来るだけ集中して繰り返すのがこの塔で成長する一番の方法なんだから」
今ヤンがサラッと超超超重要なトリビアを口にしたのだがあまりにサラッと言ったためまるで一般論であるかのように聞こえてしまい結果スルーされてしまうという事件が人知れず発生していた。
「実はオレも今さっき【盾攻撃】がレベル2になったみたいだ」
「やったね、ノビリスさん!」
おそらくヤンがしつこくノビリスに【盾攻撃】を繰り返させていたのもそのためだったのだろう。
「なにそれ。ちょっとアモン、あんたまで何かレベルアップしたなんて言わないわよね」
分かり易く悔しがるサラ。
「残念ながら」
珍しく首を振るだけでなく言葉に出すアモン。
「ちょっとヤン君。あたしには何かアドバイスないの?」
「サラさんは今でも充分に多才だからなぁ。地道にレベル上げるしかないんじゃないかなぁ。強いて言うなら【氷槍】は強いヤツには三本に分散しないで一本に魔力を集中させた方がいいと思う。それと【氷結】ももっと使ってみたらしいいんじゃないかな」
「そうなの? ……ってなんであたしが【氷結】覚えてるの知ってるの? もしかして見たでしょ?」
「あ、ごめん」
全く隠す様子もなく即座に謝罪するテヘペロヤン。
「ヤン君のエッチ!」
「え?」
「はぁ?」
ヤンのみならず何故かミゲルまで反応する。
「ホラ、まだ終わってないんだぞ。集中集中」
ノビリスが脱線しかかったのを刈り取って戦闘に意識を戻す。
「じゃあ残りのヤツは一気に解放するよ。サラさんはアカチャッキーが燃え出したら【氷結】を試してみて」
「わかった」
「ノビリスさん、いい?」
「こっちは準備オッケーだ。ヤン君」
ヤンの作った奥側の石壁が消失し、進路に抵抗がなくなったのを理解したものからこちらへ向かってくる。
やはりアカチャッキーが断然速い。
だが、こちら側の石壁はまだあるので壁ズリで中央に寄って行く。
進路がわかっていれば対処はし易いのだ。
「ジャンプ注意だぞ」
ノビリスが念のためアラート確認。
【盾攻撃】!
先頭のアカチャッキーにノビリスのレベル2スキルが発動。
レベル1の時はクロチャッキーが1mほど後退した程度だったが、今度はなんとアカチャッキーを10m近く跳ね返した。
後ろから来ていた二体目のアカチャッキーの頭上を回転しながら跳ね返されて後方に着地。
それを見た二体目がノビリスの盾の手前から跳躍。
しかしそれを予想していたかの如く、ノビリスが下からバスターソードを投げてアカチャッキーのガラ空きの下腹部へ命中。
「後は頼むッ」
そう叫んでノビリスは弾き返した一体目のアカチャッキーに集中。
ノビリスの剣を腹に突き立てられたまま着地したアカチャッキーは着地の際に剣の柄が地面に押されて更に体の奥深くまで剣が入り込んでしまったため、激痛でのた打ち回る。
のた打ち回りながらチラホラと炎が体の表面に出てくるが、痛みで理性を失っているためか炎も全くコントロールされていない様子。
「【氷結】!」
サラの声が響き、アカチャッキーが一瞬で氷漬けになる。
「え!? 効いた?」
サラ自身がびっくりするほど、あまりにあっけなくアカチャッキーが凍ってしまった。
ノビリスの剣で出血していたところから体内の血液まで一気に凍ってしまったのが要因なのかもしれない。
「やるじゃん、サラさん」
「あ、ありがと。でもなんで?」
「考えるのは後。まだいるからね」
とヤンが言っている後ろでノビリスたちが煮詰まっていた。
「ミゲル! 一旦後ろに下がるんだ!」
ノビリスを石壁の出口に配置し、アカチャッキーとジャイアントラットが向こうに渋滞している状態。
「ノビリスさん、アカチャッキーはこっちに入れちゃおう」
「なるほど、そういうことか。わかった」
ヤンの言葉を即座に理解したノビリスは出口から一旦体をどけてわざと通り道を空ける。
警戒していた様子のアカチャッキーがノビリスがどいたのを見て後方にいたヤンとサラの方目がけて急加速。
ノビリスの脇を通り過ぎた直後に再びノビリスが出口を塞いでジャイアントラットを止める。
「ボクに任せて!」
アカチャッキーの鼻面を素手で正面から受け止めるヤン。
クロチャッキーで見たのと全く同じ光景だが、アカチャッキーには耐性がないので攻撃は通る点が前回とは大違い。
「【氷結】!」
動きが止まっている今なら魔法も使えるとサラがアカチャッキーの足下中心にかける。
パキパキと四本の脚を氷が覆いつくし地表も含め一帯を氷漬けにする。
レベル1の割には威力が高いのはサラの持つ魔力と知性パラメータの高さによるものなのだろう。
ジャアアアアッ!
アカチャッキーが威嚇の叫びを上げる。
「うりゃああああッ、らあッ! るおあッ!」
側面から【回転斬り】の連続攻撃。
「ちょっと! せっかく凍らせたのを砕かないでよね」
「知るか! おりゃッ、りゃッ」
スキルが発動したら即死なのはわかるが、些か性急に過ぎるのではないかミゲル。
一方、ミゲルのいる反対側の腹へはアモンの矢が一つまた一つと突き刺さる。
一矢毎に全神経を集中させ力を込めたショットなので威力は申し分なし。
それを神経と血管の集まっている内臓のある腹を狙って打ち続けているのだ。
生命の危機を感じたアカチャッキーが突如発火。
一気に全身を炎が包み、サラの氷は全て一瞬で溶けてしまった。
「ヤン君!」
サラが目にしたのは燃え盛るアカチャッキーに対して全く怯まず抑え込みを続けるヤンの姿だった。
髪の毛が焼け焦げる臭いがしてきた。
もはや脚が自由に動かせるので全力で逃れようとアカチャッキーは暴れまくっている。
ミゲルも一旦側面から距離を取って待機。
「ヤン少年! もういい! 離れろ!」
ミゲルが叫んだその時、アカチャッキーの足下に何やら黒い沁みが出来ていく。
どうやら腹部から大量に出血が始まったらしい。
今度は血が焦げて蒸発する臭いが周囲に広がっていた。
「サラさん、もう一回!」
ヤンが叫ぶ。
「【氷結】!」
サラにも狙いは当然わかっていた。
滴り落ちる血から出血箇所まで遡り、そこから体内の血液を凍らせるのだ。
幾ら体表を炎が覆っていたとしても反対属性を集中させた魔力には抗う術はない。
血液が凍った手応えを感じた時点でアカチャッキーの体の内側から外に向けて再度【氷結】を流し込む。
パキパキと大きな音を立てて、炎を噴出したままの姿で氷漬けになるアカチャッキー。
「ナイス! サラさん」
アカチャッキーが凍る直前に離れたヤンが前髪を気にしながらもサムズアップ。
最初に凍ったアカチャッキーと同じ種類の魔物とはパッと見では区別できないかもしれない。
「おお、すげぇなこりゃ」
ミゲルが感嘆しながら近づくや、凍ったアカチャッキーの炎部分に触れてパキッと折る。
「炎の氷か……」
ガゴン!!
ノビリスがジャイアントラットの爪攻撃を受け止めた音。
ミゲルはあまりのタイミングの良さにビビりまくる。
「壁なくすよ」
ヤンが大きく叫ぶ。
ジャイアントラットの進路を妨げる壁はもう消えているが、ノビリスに釘付けなので気付かない。
「あとはコイツだけだ! 集中!」
ノビリスが改めてターゲットを指示。
「【氷結】!」
ジャイアントラットの下半身から地面が凍る。
尻尾で足下を叩いて氷を砕こうとするジャイアントラット。
「させるかよッ!」
【回転斬り】に行くミゲルだが、尻尾が邪魔で連続では続けられない。
ミゲルは頭部に集中して矢を射かけているが致命打にはなっていない。
「ボクも一発」
やにわにトコトコトコーっとヤンが飛び出してきたかと思うとジャイアントラットが大きく上に浮き上がりそのまま落下して地面に大の字に気絶してしまった。
「いただきッ!」
ミゲルがここぞとばかりに【回転斬り】を連発。
他のメンバーはジャイアントラットが起き上がってきた時に備えていたが結局起き上がることはなく、そのままミゲルがトドメを刺してしまった。
「よっしゃー! オレ大勝利!」
「ちょっとなんであんたがトドメ刺すのよ。魔石がドロップしなくなるでしょ」
「ふはははは! 聞いて驚け! クロチャッキーは二つほど落としたぜ」
「マジ?」
「マジマジ、大マジ。ほら」
ミゲルは自分が倒したクロチャッキーがドロップしたという魔石を二つ、サラに出して見せた。
「すごいでしょ。それ中級魔石だよ」
ヤンの見立てならおそらく間違いないのだろう。
「ははは、どうよ。オレ様の中級魔石はよぉ」
「うううっ、なんか腹立つわ」
「崇め奉り給え!」
「イヤよ」
「お前たちいい加減にしろ。せっかくみんなで協力して窮地を脱したんだ。ここはもっと喜びを分かち合うべきだろ」
真面目ノビリスちょっとウザい。
「いや、ぶっちゃけそんなにピンチでもなくね? ヤン少年がいれば余裕っしょ」
「その言い方……。ヤン君におんぶに抱っこで恥ずかしくないの」
「……全くだ」
「!!!」
思わぬ方向から援軍があって場に緊張がはしる。
「ほら、アモンもそう言ってるし」
「てめーアモン、裏切り者め!」
「まだ代理主戦がある。油断するな」
「お、おう……まぁそりゃそうだ。にしてもお前も普通にしゃべるようになってきたな」
ノビリスは思わずうんうんと頷きそうになるのをぐっと堪える。
「……」
無言でミゲルに背を向けるアモン。
「おーい……」
しまったという顔のミゲル。
またやってしまいましたわねこの軽口男。
これでまたアモンが戻ってしまわないとよいのだが。
「じゃあボクは魔石を回収してくるね」
「頼むよ。さぁ、オレたちは装備の点検だ」
おそらくこの依頼中最後の戦いになるであろう代理主戦に向けて小休憩を取る『青の開拓者』たちであった。