010.青の開拓者
――ノビリス・クーの証言――
オレたちが初めてバルベル迷宮に挑戦する時にオグリムからスタルツまで案内してくれたのが当時見習い案内人だったヤン君だったんだ。
あの時はまだ十歳って言ってたかな……そうだ、確か一カ月後に十一歳になるって話だったから確かに十歳で間違いないはず。
今となっては申し訳ない話なんだが、最初は本当にこんな子供に銀貨五十枚も払って案内を頼む必要があるのかって思っていたんだ。
え? ああ、そうだった。
確かに見習いは銀貨二十五枚だった、失礼。
そんなわけで最初はものすごく不安だったんだけどダンジョンの中に入った途端、そんなのはキレイさっぱり吹っ飛んだよ。
もうなんていうか、見た目とのギャップがすごいというか、何から何まで圧倒されてしまってね。
実際あの後、他の案内人の人たちと何度も一緒にダンジョン探索をしたけど、ヤン君以上の案内人はいなかったよ。
ヤン君の場合、出来ることは何でも一足先にやってしまう感じで、オレたちに無駄な時間やストレスが一切かからないようにしてくれてたからとにかく快適なんだ。
食事も抜群にうまかったし、寝床はエアマットだし……そうそう、風呂を用意してくれるのもヤン君だけのサービスだったな。
あとはとにかくダンジョンのことをよく知ってた。
ダンジョン内の構造や塔則?とかいうルールについてや、魔物のことについてもね。
あの時はちょうど底層全体が高潮になった時に当たってしまってね。
普段よりも魔物が強いわ、上位の魔物がわんさか出てくるわで本当に大変だったよ。
ヤン君がいてくれたからこそ、オレたちみたいなダンジョン初心者でもなんとか魔物と渡り合って生き残れたんだと思う。
時には契約外のこともさせちゃったりしてヤン君には申し訳なかったけど、あの時のオレたちは案内人とその依頼人という関係じゃなくて、みんなでひとつのチームっていうか、ぶっちゃけヤン君も『青の開拓者』の一員なんだって思うくらいにはお互い信頼し合えてたんじゃないかな。
ヤン君がどうだったかは本当のところ彼にしかわからないけどね。
ヤン君は当時もう既にオレたちなんかより遥かに強かったにもかかわらず、本来の力は全く見せずに案内人としてあくまでも裏方に徹する形でのサポートにこだわってた感じだったな。
案内人っていう仕事に対するプライド、みたいな。
きっとオレたち凡人には想像もできないような努力を積み重ねてきたんだろうな。
そうそう、積み重ねっていえば朝の稽古。
アレは本当にきつかった。
それでも三日間かな、続けてやってみたら自分でも効果が実感できたから実はあれ以来暫くの間ずっと続けてたんだ。
ヤン君にもらったザックを背負ってね。
うん、ザックの中には石が入っててものすごく重いんだ。
だから筋力もつくし、バランスで体幹も鍛えられるらしいよ。
そうだね、今日実物を持ってきたらよかったな。
気が利かなくてすまない。
いや、あれ以来ヤン君には直接会ったことはないよ。
セインの町で遠目に見かけたことは二、三度あったけど。
あの頃にはもうすっかり有名人になってたし、オレのことなんか覚えてないだろうなって思ったから。
そういえば合同遠征の後方部隊に参加したこともあったな。
さすがにヤン君とはすれ違いもしなかったけどね。
これから?
オレはそろそろ冒険者稼業も潮時かなと思ってるし、引退したら例のあの国へ移住しようかと計画してるんだ。
オレ以外にもそう考えてる人は多いんじゃないかな。
今から楽しみでワクワクしてるよ。
え? ああ、どうもありがとう。
そんなことまで調べてるなんてすごいんだね。
うん、実は去年結婚して、こないだ子供も生まれたばっかりなんだ。
女の子でね。
これがもう本当に可愛くて可愛くて……あ、ごめん。
『青の冒険者』の由来?
オレとアモンの故郷はルガーツなんだけど、あ、知ってる?
そのルガーツの人々にとっての英雄で『青の勇者ロンビリュス』っていう人がいたんだ。
『五色の英雄』伝説は知ってるでしょ。
あ、名前だけ? 中身は?
……そっか、今の人たちはみんなそんな感じなのかもな。
とにかくその伝説的英雄の二つ名にあやかって名付けたのが『青の開拓者』ってわけ。
特にひねりもなくて拍子抜けしたみたいな顔だね。
いや、いいんだ。
別に他の人がどう思ってたって。
このパーティ名のおかげでアモンとも再会できたし、ミゲルやサラと四人で活動した大切な思い出の証でもあるから、
そっか、いや、オレの方こそありがとう。
オレなんかの話が使われるかどうかわからないけど、ヤン君に縁のある人っていう対象に選ばれただけでも光栄だよ。
もし何か形に残るならいつか娘にも自慢できるしね。
ははは。
それじゃ、キミも頑張って。
他のメンバーにもよろしく伝えてくれ。
* * * * *
――ミゲル・カブレオラの証言――
ああ、あんたか。
悪いが先に一杯やらせてもらってるぜ。
ここはあんたのおごりでいいんだろ?
その代わりヤン少年のことなら何でも聞いてくれ。
あんたも仕事で色々聞いてるんだろうが、このオレ様に聞きに来るたあいい目利きしてるぜ。
ヤン少年……もう今は青年か。
そりゃオレも年を取るわけだよなぁ、あのヤン少年が青年とか時の流れ容赦なさすぎだろ。
そうか、『青の開拓者』全員に話を聞くのか。
まぁ当然だな。
あのドリル・ヤンの発祥はオレたちと過ごした体験があったからこそだからな。
あぁ? それは初耳?
おかしいだろあんた、オレたちに話を聞きに来るのにそれ知らねぇとか漁師に話聞くのに魚のこと知らねぇのと一緒だぞ。
あ、いや、今のはちょっと言い過ぎたわ。
まぁとにかく、たった四日間一緒にダンジョンで過ごしただけでパーティメンバー全員がレベルアップしたんだからな。
ドリル・ヤン効果おそるべしだろ。
(注)実際には四人中三人がレベルアップ。
それもヤン少……もとい青年の朝稽古と魔物との戦闘中の徹底的な血も涙もない地獄の指導にオレたちが必死に食らいついていったからこそなんだけどな。
オレなんか戦いがほぼ終わった後に一人だけ連れ回されてしごかれてよぉ。
そうやってるうちに突然新しいスキルを覚えてなぁ。
あれはマジでヤバかった。
そのすぐ後だったぜ。
オレの人生で最高にハッピーだった瞬間が訪れたのは。
新しいスキルってのが確率で発動する必殺判定スキルだったんだが、それが初めて発動してクロチャッキーを倒した時だった。
オレ自身のレベルアップと同時に別なスキルまでレベルアップしやがったんだ。
あまりのことに頭が追い付かなくってよぉ。
まだ全然戦闘の最中だってのに一人でバカ騒ぎしちまって、ああ、今となっちゃ本当に恥ずかしい話なんだが、うひょーってな感じで浮かれまくっちまってなぁ。
なんだかよぉ、後から思い返すとヤン青年に全部仕組まれてたような気がするんだよなぁ。
なぁあんたはどう思う?
わかんねぇよな、そりゃそうだ。
とにかく何でもお見通しってことなんだよ。
我らがヤン青年はよぉ。
できることならもう一回……一回でいいからまた一緒に冒険したかったぜ。
どうだ、オレ様もこれぐらいはやるようになったぜって、ヤン少年に見せてやりたかったよ……。
それが今やこのザマってわけだ。
はははは!
二刀流剣士が片手になって、挙句足まで悪くしたんじゃそりゃもう引退しかねぇわな。
オレの意地だけのために仲間を危険に晒すわけにもいかねぇし。
いや正直あん時は死んだと思ったよ。
それが気付いたら治療所の中で、なんだよ生きてるじゃねぇかオレって……。
あいつら見舞いに来ても何も教えてくれねぇから治療所のヤツに聞いたんだよ。
そしたらリーダーが自分も怪我してるのにオレを担いでセインまで戻ってくれたらしい。
アモンが応急処置をしてくれて、サラが氷魔法で傷口を凍らせてくれて……。
これがもしオレ以外の誰か他のヤツだったら、オレはそいつに何かしてやれるのかって考えたらよぉ……。
あ、すまねぇ。
ヤン少年と全然関係ねぇ話だったな。
まぁそんなこんなで色々あったけどよぉ。
スタルツのギルドの方で雇ってくれる話が転がり込んできた分、オレなんかまだラッキーな方だぜ。
教官っつったって模擬戦じゃせいぜいDランク程度までしか相手にできねぇけどな。
その代わり、溜まった鬱憤はドリルの方でしごきまくって晴らしてるって寸法だ。
あ、これは完全にアウトだな。
今のはナシ。
聞かなかったことにしてくれ。
でもまぁあのヤン少年が始めたドリル講習をこのオレが引き継いでいるっていうのも不思議なめぐり合わせだぜ。
冒険者としての人生は終わっちまったが、残りの人生はギルドの教官としてやれるところまでやってやるさ。
やってみると意外と面白いんだぜ、これが。
もしかしたら第二のヤン少年を育てる時が来るかもしれねぇしな。
え? あ、そっかそっか。
ヤン少年に戻っちまってたか、悪い悪い。
そこら辺はいい感じに頼むわ。
で、ちなみに次は誰なんだ?
ああ、サラか。
暫く見ねぇうちにそこそこ有名人になりやがって。
昔のダチがよろしくって言っといてくれや。
あ、ここまだもう少し飲んでってもいいだろ?
さすが、太っ腹!
ありがとよ。
* * * * *
――サラサール・リャドフの証言――
すみません、遅れてしまって。
ちょっと店の外で捕まっちゃって。
いえ、とんでもない。
あたしなんかまだまだ半人前で。
謙遜なんてとんでもない、本当のことですから。
それこそヤン君……いやもうそんな風に呼んだら失礼になっちゃうのかな。
え? みんなは昔の呼び方だったんですか?
良かった、じゃああたしもヤン君で。
それで何を話したらいいのかしら。
あたしなんてダンジョンデビューがたまたまヤン君の案内だったってだけで特別なことなんて何もなかったような……ああ、そう言えば下層が高潮になっちゃって、最後の方なんか分布相応な魔物がバンバン出てきて軽く絶望感満載だったのは覚えてるわね。
え、この話はもうノビさんが?
そっか、懐かしいなぁ。
え? 結婚したの? いつ、誰と?
へぇ娘さんまで……そっかぁ、あのノビさんがパパになったんだ。
きっと子煩悩パパになるわね。
あなたもそう思うでしょ。
ごめんなさい、脱線しちゃって。
脱線ついでにもうひとつだけいい?
ミゲルのやつは元気してた?
そう、そっか……良かったっていうべきよね。
え? 怪我の原因? 本人に聞かなかったの?
そうよね、面と向かってはなかなか聞き辛いわよね。ごめんなさい。
でも他人のあたしが言うのもそれはそれで問題あるんじゃないかしら。
あたしたちがパーティを解散した理由にも関わってるし。
当たり障りのない範囲で言うと、あたしたち『青の開拓者』で上層に上った時のことよ。
ミゲルは普段から階層主討伐が目標だって公言してたんだけど、ヤン君のアレに触発されちゃったみたいで、急に本気になって取り組み始めたのよ。
それから半年ぐらいしてあたしたちの準備も出来たからって天井目指して行ったんだけど……。
今だからわかるんだけど、四人パーティじゃやっぱり上層は難しかったのよ。
最低でも五人は必要なんじゃないかな。
あたしの今のパーティは七人構成なんだけど、それでも毎回必死よ。
あ、ありがとう。
でもすごいのはうちのリーダーとパーティであって、後から入ったあたしじゃないのよ。
話を戻すけど、第三十三階層に入った辺りでこれは引き返そうってことになったんだけど、ミゲルがどうしてももうちょっとだけ先へ行こうって譲らなくてね。
ただ逃げ帰ったってだけじゃなくて何か成果が欲しかったのかもしれないけど……。
結局、先へ進んだ所でアシュラムの集団に囲まれてね。
当時のあたしたちじゃとても太刀打ちできる相手じゃなかったのよ。
いつもなら撤退の殿はノビさんがやるんだけど、あの時はミゲルがやるって聞かなくて。
無理言って先に進ませた自分のせいだって思ったのかもしれないわね。
意外とそういう所があるのよ、ああ見えても。
あの時はミゲルがうちのエースだったのよ。
範囲攻撃もあって即死攻撃もあって……もし無事だったら今頃はAランクになってたんじゃないかしら。
あたしたちがもっと本気で止めてればあんなことにはならなかったの。
だからみんなそれぞれが責任感じちゃってね。
なんとなくこれはもうパーティとしてひとつにまとまるのが難しいんじゃないかって。
たぶん、そんな空気に人一倍責任を感じちゃったノビさんが解散を宣言しちゃったのよ。
普段はあんまり空気読むのとか苦手なのにそういう時はわかるみたい。
でもやっぱり空気読めなくて自分一人で決めちゃったってのもノビさんらしいけど。
……あれ? ちょっと待って。
これって別にヤン君関係なくなっちゃってない?
あ、雑談なの?
え?
そっか、あたしが振ったんだったわね。
ごめんなさい。
じゃあもう本題に入りましょ。
ヤン君の朝稽古?
あれね……二日目の朝から三人でやってたのは知ってたけど、ノビさんがあんまり辛そうにしてたから。
あんなガッシリした男の人でさえついてくので精一杯なのにあたしなんかが一緒にやれると思う?
まぁアモンは平気そうな顔してたけど、彼は元々野生児みたいな人だし、なんか妙にヤン君と意気投合しててなんかちょっとキモかったわ。
……っとごめんなさい。
今のは失言ね、訂正させて。
え? 何がおかしいの?
ちょっとやめてよ、どこがミゲルと同じなのよ!
全然違いますから。
で稽古の話に戻るけど、結局あたしが参加したのは四日目の朝だけ。
ミゲルもそうよ。
どうせあいつのことだからずっと参加してたみたいな口ぶりだったんでしょうけど。
……ホラやっぱり。
でも二日目の朝ヤン君に誘われた時あたしも参加したらよかったのにってあの後すぐ後悔したのよ。
だって結局ヤン君と一緒にいる間にレベルアップ出来なかったのあたしだけなのよ!
魔法はひとつ新しいのを覚えたけど、他の三人はレベルアップしたのに……。
きっと最後に第九階層の代理主を倒せなかったせいよ。
あの時もうちょっと、ほんの少しだけ早く到着していたらあたしたちが倒したはずだったもの。
え? 知らないの?
そうよ、最後の最後に他のパーティに横取りされたのよ。
しかも仮にも代理主のくせにドンチャッキー一体って……どういうこと?
高潮じゃなかったの?
いくらなんでもラクしすぎでしょ。
その直前まであたしたちが相手にしてきた魔物の方が何倍も、いえ何十倍も大変だったんだから。
えっ、ああ、そうね。
スタルツ直前の必須ルートなんだから毎日のように倒されてて、高潮の影響が出なかったのよね。
理屈はわかるけど感情的には納得できないのよ。
しかもタイミングがね。
ちょうど倒し終わるところへあたしたちが到着して……。
ミゲルとか大激怒で暴れそうになって止めるのが大変だったわ。
向こうの案内人がまたちょっとクセのありそうな人で、名前は忘れたけどヤン君の知ってる人っぽかったわ。
とにかくなんか嫌味ったらしいことを言ってきたのよ。
それでミゲルがってわけ。
ううん、冒険者の人たちは普通だったわよ。
逆になんか申し訳ないみたいな感じで恐縮してたくらいで。
とにかくあの代理主さえ倒せていればあたしもレベルアップしてたはずなのよ。
だってスタルツに着いた後、すぐ次の戦闘でレベルアップしたんだから。
だから本当にあとちょっとだったの。
あとちょっとでヤン君にレベルアップした所を見せられたのに……。
っていうのがあたしの心残りかな。
他の人はどうか知らないけどあたしはあの後もヤン君とは二回くらい会って話もしてるから。
でもあんなに近くで一緒に戦ったのはあの時だけよ。
ヤン君が本気出したらすごいのよ。
まずあたしたちになんか全然姿が見えないんだから。
気が付くと魔物が倒されていなくなっちゃってるの。
十歳の時であれなら今はどんなにすごくなってるのかな。
絶対敵にはしたくないわね。
だから……あ、これ以上は言わない方がいいわね。
あたしの国も関係してくるし、場合によっては亡命しなきゃいけなくなるかも。
ダンジョンの中にいるうちはまだいいんだろうけど。
あたしとヤン君の話はこれくらいかな。
ほんのちょっとしか話題がなくてごめんなさい。
おいしい所はアモンに譲ったげるわ。
ええ、それじゃ。
* * * * *
――アモンディ・キルモアドの証言――
ヤンのことならオレに話せることはない。
何度も同じことを言わせるな。
……あんたも相当しつこいな。
なら五分だけだ。
聞くなら早くしろ。
『青の開拓者』か。
ああ、いいパーティだった。
十七で参加してから六年間世話になった。
そうだな。
順調なら今頃はBランクパーティの上位まではいけただろうな。
ああ、そうだ。
最初についた案内人がヤンだった。
オレたちにとって一つの大きな契機になった日だ。
もし他の案内人が付いていたら2年と持たずにバルベルから撤退していたかもな。
オレとヤンの関係?
他のメンバーたちがそう言ったのか。
別に不思議なことは何もない。
あいつをオグリムのギルドで最初に見た瞬間わかった。
オレたちとは次元が違うってな。
年が幾つとかは関係ない。
あの目と佇まいだけで充分。
だが、あの頃はオレもまだ若造でな。
つい好奇心に勝てなくて色々ちょっかいを出してしまった。
いやなに、先頭を歩いているあいつに後からちょっと、な。
見事なものだった。
振り返るどころか、警戒するそぶりすら見せずに全て自然な動作で回避してたよ。
もちろん他のメンバーは誰一人気づいていなかった。
最後までな。
二度目の休憩の時に向こうからコンタクトがあって……いや、話していないし近寄ってすらいない。
ハンターたちがよく使うやり方だ。
ほんの小さなジェスチャーや音、口の動き、瞬きなど色々種類があるんだが、あいつはオレを値踏みするかのようにそれらを組み合わせてメッセージを伝えてきた。
まぁ遊びだな。
他の誰にも気付かれずに内緒話をする類の。
そんなやりとりを繰り返してるうちに自然と距離が近くなった。
見た通り、オレはこんなだからな。
それまでは意識的に他人とは関わらないように生きてきたんだが、ヤンと出会ってから少し変わったらしい。
自分ではよくわからないんだが、メンバーが何度も言ってたからたぶんそうなんだろう。
不思議なヤツだよ。
そういえば、最初の戦闘の時にオレの弱点を看破されたのも驚きだった。
それで翌朝からヤンの鍛錬にオレも付き合うことになってね。
いや、どうだろうな。
ドリル・ヤンって呼ばれるのはもっと後のことだし、単なるヤンの日課にオレが勝手に便乗しただけの話だ。
最初の受講生かどうかは別に興味がない。
ミゲル?
あいつはノビリスがレベルアップしたのを見て急に自分も参加すると言い出したんだ。
調子がいいにも程がある。
ミゲルといえば、ヤツの引退で『青の開拓者』が解散することになって、オレも身の振り方をどうしようか悩んでいた時、ちょうど例の募集が始まったんだ。
即決したよ。
『青の開拓者』が解散してなければ絶対にありえない選択だった。
普段あまり信じないんだが、こればっかりは運命とか縁みたいなものを感じる。
まぁその後はあんたも知っての通り。
オレとしてもそこからの話は色々と都合が悪いから話せないし、そろそろ時間だろう。
……ああ、今行く。
ちょうど部下が呼びに来たようだ。
いや、もうこういうのは勘弁してくれ。
じゃあな。