ただつね、いえやすの元へ
居ても立っても居られないただつね、伯父のよしひさからしぶしぶ許可を得て、いえやすのもとに向かいます。
「いえやす殿に会いさえすれば・・・」
ただつねは功を焦っていました。
さて、いえやすはというとミカワにいました。
彼の傍らには若くて新進気鋭、しかも重鎮の職についているなおまさがいます。
ただつねは長い旅を経ていえやすたちに会います。
「この度はただざねの反乱の仲介をしていただきありがとうございました」
ただつねは彼らしくないしおらしい態度で家康に丁寧にお辞儀します。
「なんの、なんの、と言いたいところだが・・・」
いえやすは言葉を溜めます。
「しまづもただざねも頑固で仲介するのに苦労したわ、ハッハッハッ」
さっそくいえやすから言葉のパンチです。
「まこと、恐れ多きことです」
ただつねは恐縮しました。
これがノブナガやひでよしと相対した中央の圧力か・・・
ただつねは父や伯父とも違う圧力を感じました。
ここで傍らにいたなおまさが話を変えます。
「此度のとくがわの仲介はしまづに大いに期待しての事、今後われわれが困った時にはもちろん味方になっていただけると考えていますが、いかがですか?」
ただつねは即答できませんでした。
少しと言うには長すぎる沈黙の後にこのような言葉をつなぎました。
「このただつね、誠心誠意御恩とご期待にお答えしたく」
言葉はゆっくりでしたが、はっきりした口調ではありません。
今の僅かな時間の間にただつねの頭は国のこと、父と伯父の事、社内の混乱あらゆる悩みの種が脳内を駆け巡り辛うじてでたこん身の言葉が後にただつねを苦しめます。
皆さんも守るのが大変な約束をするときにはよく考えてくださいネ。