第三話 村田和夫2
まだ、浮き足立っていた。先ほど駐車場であった彼女。まさに理想の女性だ。
「彼女欲しいなあ」
Youtubeで流れるマッチングアプリのcmを真剣に見てしまう。和夫は女性と交際したことが無い。25年間一度も。しかしながら、彼の境遇を考えれば仕方のないことかもしれない。
和夫は真面目な性格ゆえに勉強はできる方だった。中学受験をし、有名私立に合格した。そこは男子校だ。エスカレーター的に高校へ進学し、その後、有名大学の工学部、大学院へと進学。工学部には女性はほとんどおらず、男子校とほとんど変わらなかった。現在は大手企業のエンジニアとして働いているが、女性社員は見たことがない。そう、彼の人生では女性と関わる機会がほとんど無かったのだ。
まだ、マッチングアプリのcmが流れている。やってみるか、軽い気持ちで和夫は登録をした。気になる女性にいいねを送ることができるらしい。女性側がいいねを承諾すればメッセージのやり取りを開始できる仕組みになっている。数人にいいねを送ったが、一向にメッセージが始まらない。誰も承諾してくれなかったということだろうか。時計に目をやるとすでに0時を回っていた。
「明日はバイクに乗って海にでも行こう」
そんなことを考えながら、和夫は静かに眠りについた。