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1日目 チェックイン

 そんなわけで2ケツ走行だ。頭部が嵩張るので二人とも完全ミイラ姿に戻り、明かりが灯り始める知らない街を走る。単車の出力(パワー)も心許ないし、そもそも二人乗りが初めてのことで不安があったが、ナビ含むドライブシステムが心強くサポートしてくれたので様になった。

 オルの奴は腰に手を回し、ピッタリと背中に張り付いている。柔らかい。

「……おーい、当たってんだけど」

「ワザとだよン」

 AHO、と言いかけて止めた。相手に付き合う義理はない。AHOは封印しよう。話題を変える。

「どうやって、ここまで?」

 すぐに元気な声が返ってくる。

「シンカンセン! ここまで6時間で来れた」

「そんなの移動だよ、旅じゃない」

「なら、これからがホントの旅! ということは、実現にこぎ着けた、ここまでのボクの努力の跡もまた旅ってことで間違いなし!」

「努力って、ただグランクラスでふんぞり返ってただけでしょ?」

「心細かったよぅ、ドキドキ? ウフフ!」

 取り合わない。

「今後のクレジットは大丈夫なんだろうな?」

「パパにそれはそれはもうもう、たっぷり援助してもらっちっち! カブちゃんは?」

「ママにたっぷりだ」

「いやんエッチ~~!」

「AHO……」

 そういうわけで、港から数分。ビジネスホテルに到着したのだった。


 ホテル本体は2階から――という構造物で、1階部分はまるまる駐車場になっていた。空いている駐輪スペースに単車をセットする。自動的にホイールロック。チェックインが認められると、エナジーである電気が補給される。チェックアウトでロック解除だ。そんな仕組みになっている。


 建物の中に入って、頭部の包帯を膨張、透明化した。素顔(素頭?)を見せる。

 さて――

 ここに来てオルの奴。まったくの予約ナシだという。あはは、どうしよう。

 この時期、ここに限らずどこも、部屋の空きなんてあるはずないし、さすらいの旅人御用達の格安宿は、セキュリティに信頼がおけない。どうしよう。


 どうもこうも、現実的に答は一つだけで、それは、自分のリザーブした部屋に一緒に泊まる、だった。

 というのも、僕がゲットした部屋はツインなのでして。そう、ベッドが一つ、余っていたのでした。

 なら、料金一人分の追加でいけるはず。

 2階のフロントにて、二人のID込みで通信し説明し、問題ないことをアピールしたんだけど、思春期の男女の突如の相部屋ということで、さすがにフロントAIでは対応できず、壁向こうのルームから、青色×白色模様のカバーのスタッフの男性が現れた。

 そのフロントマンはID確認後、口元を皺させつつ、僕らの素顔をマジマジと見比べる。

 やがて、納得したとでも言うふうに、一つ頷いたのだ。OKだ。やったね!

 ただ、迷惑をかけない旨の念書に、サインさせられたのだった。


 僕はペンにて署名する。


涼月(すずつき)(うかぶ)


 ペーパーとペンを回す。彼女もまた、筆記する。


涼月(すずつき)(かおる)


 そう――

 僕らは兄妹。それも双子の。

 だから、問題なんか全然なかったのさ。

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