6日目 親切な人の家にお世話になる
そのピンクのペスト医師に、民家に招待された。
や、真実は……こちらから頼み込んだのですが。
否応はなかった。戦勝国人と戦敗国人、助けた人と助けられた人、という力学の働きが如実に表れた形になってしまったんだけど、仕方ないというもので。
「ここ、借家なんです……」
せめて汚さないでくれ、という意味だろうか、控えめな、嘴マスクでくぐもった、しかしながらどこか聞き覚えがある声で、訴えられて――
「感謝します」
そう応じて――
この場はとりあえず、トイレ問題は、解決したのでした。笑……。
畳部屋に招かれた、ってことで、頭部の包帯を解放した。
上座だ。座布団にオルと二人並んで正座する。ピンク医師さんは正面に正座した。
やおら嘴マスク含む頭部の装備を脱いで、素顔をさらす――
「ふぅ……」愛らしいしぐさ、すんなりと垂れる金髪、明るい緑色の瞳、桜色の唇。
オルだった。
そう――第3日本の、日本神国での、僕の妹だ。
その女の子が、悲しげな顔で、弱々しくも可愛いらしい声で自己紹介するのだ。
「初めまして……と言いましょうか? わたしは涼月香です。敗戦国の一、民間人です。どうか手加減のほど、お願い申し上げます……」
手をついて頭を下げる。
「……予感はしてた」
妹、涼月香が応えたのだった。




