5日目 失恋
四人いっしょにお風呂から上がり、体を乾かした後は、超恥ずかしがる香様を元気づけながら、「出来るできる!」廊下を部屋まで歩いたのでした。
部屋にはすでに布団が二組、敷かれていて。(襖を隔てた隣の部屋にもそう、敷かれているのだろう。つまりこちらの部屋が自由国側としたら、隣は帝国側だ。)
そこで“違う国”の兄妹同士でチーム分けをし、互いに相手が見えるように、それぞれ布団に座ったのだった。
親睦を更に深めるレクリエーション。マッサージの時間である。
向こうのペアはオルとオレ君。
僕のパートナーは、ああ、憧れの香様だ! いい匂いの柔らかい香様を前向き抱っこし、開脚させ、ヨーイドンで、全力で揉みほぐし始めた。
香様は恥ずかしがり屋、ご自分の姿を全て見られて、見せられて、さらには敏感質な方のようで、たちまちに息も乱れていく。
「そこ、いけないわ! あっ……アン! アン……ハァンハァンハァン……!」
いくらも経たないうちに香様が負け(?)を必死に訴え、つまり自由国組、僕&オル兄妹の勝ち(?)となったのでした。
負けチームにはバツゲームが必要だろう? てことで定番、オレ君と香様には並んで立ってもらい、後ろを向いて丸いお尻を見せて、ご自分のお名前を“尻文字”で書いて貰うことにしたのだった。
手を叩き囃し立てる!「――“す”の字はどう書くの~~♪(笑)」
「こう書いて、こう書いて、こう書くのゥ~~♪(真っ赤)」
歌に合わせながら、あの大尉殿とその妹御が、のぼせ気味になりながら自ら白い細腰をくねらせる。楽しくて楽しくて、何度も対戦を再開したのだった。
結果、何度も勝ち、オレ君&クッシーさんペアを悶えさせ続けたのでした。
遠慮なしに笑い合った!
ああ――面白かった!
まぁ、これらの騒動が“きっかけ”になったに違いない。
大尉殿が、シリアスに香様を見つめたのだ。
「香、愛してる。結婚してほしい」
「はい、お受けします。わたくしも愛しております……!」
二人、手に手を取り合って――
隣の部屋に入っていく。やがて、襖の向こうから、二人の愛の営みの音が、聞こえ始めたのでした。
うん――
「彼は僕だから……」小声。
オルが抱きしめてくれる。
「試合に勝って、勝負に負けた、ネー」
苦笑いだった。的確すぎる。
オルが小首を傾げた。
「この頃は、お得意のエー・エイチ・オーが、出なくなったぞ?」
「旅をして、人間的に成長したんだろ……君が、だ」
「カブちゃんのくせにナマイキだー」
「それ、名台詞よな」
隣から、押し殺した香様の悦びの声が聞こえてくる。
「……聞き耳を立てながら、ボクを代わりにしてくれてもいいんだよ?」
「AHO……」
布団を被り、就寝したのでした。
翌日。7/25。
一人、座敷の中に立ちながら、赤い目をした裸の大尉殿は、ご意志を表明されたのでした。
「貴様ら二人が北海道に所在の間は、付き添うつもりであったが……」
つまり、ここからは香様と二人っきりで旅したい、ということだった。
「すまん」
「了解だよ。今まで助けられた。ありがとう」
男の子二人は万感の思いでキスを交わす。(見た目妹だし、なんだか弟のようにも感じるし、何より自分自身だし、つまり全く問題ない。)
こうして僕とオルは、再びS-A150Vの2ケツのペアになって、(外にまで出てくれた)僕たちの兄妹自身に見送られて――
涼しい空気の中、こころ暖かく、根室地峡をスタートしたのだった。




