表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/47

1日目 再会

 とにかく宿にチェックインだ。そう思ってアクセルを開きかけたとき耳元の包帯が『ピポッ』通信が入った。

 透明な包帯越しに見ると、前方空間にメールが仮想(VR)表示されている。そのメッセージに一瞬目が丸くなった。思わず舌打ちする――


 函館フェリーターミナル・ビル前の駐車場に移動する。単車を降り、頭部を膨張させて透明にする。ほどなく、正面玄関から一人のミイラ姿(にんげん)が外に出てきて、すぐにこちらに気づいて、ぶんぶんと右腕を振った。左手にピンクのハードバッグを提げて、仔犬のように駆け寄ってくる。

 白色のカバーはピチピチにまで絞った“女巻き”。胸の部分が右、左、それぞれ弾んでいる。躍動する足は、膝下までのロングブーツで色はピンクだ。其奴は到着するとバッグを地面に放り両腕を空に広げた。

「ジャーーーーン!」吹き上がる綺麗な声。

 膨らんだ透明頭部の中は、肩まで流れるような金髪。前髪が長い睫にかかり、その瞳の色は明るい緑色だ。細い鼻梁に桜色の唇。スッキリとした首筋が、鎖骨が見える胸部へと続いている。所謂、世間一般に言うところの、美――少女だった。うむむ。

 何だかいきなり負けてしまった感がする。僕は難しい顔で条件反射的に応えた。

AHO(あほう)

「サプラーイズ!」

「AHO」

「嬉しいでしょ! このこのっ!」

「AHO」

「うふふ、顔がニヤけてる。にやにや?」小首を傾げて覗き込んでくる。

「Aほ――ブフッ」ついに堪えきれず噴き出してしまった。あーあ……。

「カブちゃんの負けーー!」

 なんてこった。「――オル!」

「ハ~イッ」

 それで女の子は、こちらの了解が得られたとばかりにハードバッグを、単車の後ろ、サイドキャリア・左側にセットしてしまう。チラと目をやり、

「ほうら、右側片側だけに自分の黒バッグ取り付けてるし。リヤシートも空いてるし。実はこーなること、期待してたんじゃない? にひひひひ!」

 鼻が少し痒くなったのだが、えいっ、今は旅の身の上だ。開き直った。

「“巡り愛”するつもりだったんだよ……」

 相手は遠慮なく大笑いだ。「ギャハハハハハ――」

 なんという台無し感! 僕は条件反射的に応えたのだった。

「AHO」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ