4日目 オホーツク海
国道2-238号を一直線に北上する。
左手すぐそばに、道路と海抜差0メートルで、深い色のオホーツク海が広がっている。何かあったら水浸しだろう。こんな光景があったのか、と心揺さぶられた。
空気はどこか包帯に寂しく、しかしながらぶつかって来る風は物理的に強烈で、一瞬の気の緩みで単車ごと、道路の左端から右端へと持って行かれるのだった。
(参考:国道238号)
前を走るは大尉殿――オル曰く、“オレちゃん”――のS-A250V-J。
その後塵を拝する僕、S-A150V、という並びだった。
オレちゃんは、僕らが北海道第2大陸に所在する間、付き添いをすることになった。
「厚かましい言い分だと自覚してるが、どうか我が国を見限らないでほしいのだ――」
という当人からの強い申し出で、現実的にこちらに拒否権はなかった。
先の例もあるし、大尉殿の随行は、メリットは計り知れないと認める。が、何というか、この旅の主体を持って行かれた感がするのは、どうしたことだろう……。
前を見る。
猥褻罪認定された、特殊裸の丸いお尻がシートに跨がっている。妹のやつは今、遠慮なく、こちらの兄と2ケツ乗りしていた。これも、単車の馬力的にはバランスのとれた差配と認めるところ、やぶさかではない。もともと一人旅だったのだし……と納得しようとするのだが、正直。モヤモヤとする胸の内、だったりするのでありました。
耳の包帯がオルの声を届けた。
『……オホーツク、という名前だけで、どこか、ロマンチックな光景ね』
「そうだな」と、二つの僕の声が重なって――
『クスッ』と、妹が笑ったのでした。僕と僕も笑う。アハハ……。
アハハ……。
(参考:オホーツク海)
『ビッキーと名乗る、裸体主義者の少女? 美少年? の誘導で、こんな状況となってしまったのだ。承知してほしい』
唐突に、オレ君の砕けた口調だった。もちろん、歓迎だ。
「僕らも、第1北海道で一度、導かれたんだ。何者なんだろうね?」
『そのときの状況を話ししてくれないか』
ならばと、記憶の限りを口述する。
聞き終えて、相手の僕が笑ったのだった。
『つまり、貴様らお二人の旅は、“守られている”、ということだ』
貴様よばわりはアレだが、納得できる意見だった。
「なぜ、守られているんだろう?」
『この、貴様の旅の目的は、何なのだ?』
「長い距離を、ひたすらに走ること、だ」
『それは、ただトラックをぐるぐる回っても、達成できそうだな?』
「言葉を修正させてくれ。“遠い距離を”、だ」
『なら、答はシンプルだな。可及的すみやかに、ゴールしてもらいたいと考えたのだろう』
「ふむ」
『そのゴールは、どこに設定してあるのだ?』
「海岸線を道なりにまっすぐ、北海道第3大陸、第3函館市だ。つまり――」
『“北海道一周”だな』
「彼の者にとって、それに意味があったのだろうか」
『フム……』
言葉が途絶えた。
オルが陽気に聞く。
『ねぇねぇ、オレちゃんの妹ちゃんは、どうしたのサ?』
『彼女は今、東京の屋敷だ。何というか、その、とてもお固い人物でな。今回は留守番を――』
『ちゅーはした?』
ここからオルの、怒濤の独壇場だった。
『父、平九郎は、宇宙軍大将の位にある。軍司令官だ。正直、そのヒキで、俺の今の地位がある。親の七光りと言われてしまっては返す言葉に困るが、それでも。ふさわしき中隊長ならんと日々努力はしているつもりだ。嬉しいことに、隊員の支持は得られていると自負している――』
『バリ可愛いもんね!』
『こうして先頭を走ることを許して欲しい。自分としても、こうしたことは――旅は! 生まれて初めてのことなのだ。そうは見えないかも知れないが、今、俺は、さすらいの身に興奮を覚えているのだ――!』
『今夜は寝させないゾゥ!』
「……」
じんわりと――
ここの地のあの僕に、この僕は――
好意を覚え始めたり――
する僕だったり、するのでありました……。
(参考:オホーツク海)




