4日目 予定は未定
第1北海道大陸走破となる記念の宿、宗谷の民宿にて――
お風呂は共同湯で男女(時間)別々。もちろん部屋とは離れた場所にある。部屋から移動するときは浴衣を着なければならず、つまりハダカでウロチョロすることはできない。とどめは布団。完全に一人サイズだった。
というわけで。
7月23日、朝、6時。自分のペース、爽快な気分で目覚めたのでした。
布団から身を乗り出し、まずは枕元のグッズを確かめる。カラーと、単車から取り外し持ち込んだ、エナジーパックのことだ。電気コードで部屋のコンセントに繋いでいたのだが、とくに問題なく充電されていた。一安心。
上半身を起こし、テレビを見る。
(参考)
『宗谷地方の天気は曇り。大気成分は、窒素78%、酸素15%、戦争ガス6%です……』
さすが(と言えば差し障りがあるが)道北地方だった。函館と比べても、ガス濃度が1%も高い。
『害獣予報です。各地方の各種出現確率はご覧の通りです。十分にお気を付け下さい……』
(第2)宗谷、紋別、網走の各地方は、程度良好のようだった。
ついで、本日の予定ルートを確認する。
カラーを被ると、背中に、熱い体のオルが抱きついてきた。勝手に僕のカラーの輪を広げて、自分の頭をくぐらせる。
僕は諦めたように声なく笑うと、二人の頭部だけに包帯を巻いたのだった。膨張させ、透明化。マップを仮想表示させる。
(A:稚内市宗谷 B:第2網走市 引用:グーグルマップ)
「ボクの正面に道はある。じゃ、キミの前には何があるのかにゃ?」
乗ってやらん。
「網走市まで、ルート距離は約290km。所要時間は推定7時間弱だ」
「昨日より更に短いネ」
「うん。いよいよ、“第2北海道”だからな。初日は慎重にもなるさ」
背中から、ぎゅっ、としてくる。
「今日の宿は、どんなところ?」
余程この民宿、お気に召さなかったらしい。
「実は、今日以降の宿は、予約も、それどころか検討さえもしてないんだ」
「なんでー……」
「“第2”以降は物事が不安定・不確実だから。しょうがない所があるんだよ」
「大丈夫なの?」
「多分ね……。モメたら、遠慮なく“優先権”を行使するつもり」
「強気だぁ。なら念のため、もう少し体力養生に努めましょ」
笑った。
「君がだろ?」
「やーん、カブちゃん成分が足りなーい。お肌がくすんじゃう……」
そう言うやオルはカラーを取り外し、強引に僕に覆い被さり――
「僕は化粧品かよ?」
力尽くに、布団に横に、させられたのでした。




