3日目 ウニ丼と塩ラーメン
増毛町を出発して、次の城塞都市が留萌市である。だけどゴメン、ただ通り過ぎる。
ここから国道は1-232号と、番号が一つ上がった。
国道沿いのその食堂に到着したのは、計ったように12:00の時だった。
「ここが昨日言ってたお店なのね?」
「イエース。入ろう!」
昼食は、そう、ウニ丼である。
3000エン。
高い。でもここまで来たら食べないと格好が付かない。オーダーしたのでした。
さすがの人気店で混雑していたが、逆にまぎれて、注目されずに済んだのは良かったことだ。
そして、やって来る。
どん!
ああ、ウニだなぁ~。ウニ。笑。
今、目の前にして――実は。ウニ丼を食するのは、これが初めてのこと。どうやって食べたらいいのか分からない。笑。楽しくなって、黄色×白色の給仕のおばさんに聞いてみたら、オホホと笑って、「普通に、上からご飯ごと掬って食べたらいいのよ」と宣う。
うんうん、そりゃそうだろうけど、じゃ、中央に鎮座しているワサビをどう取り扱ったらいいのでしょうよと? それが知りたい。
隣から、「じろり」
ふざけ過ぎ、て目でオルに睨まれて――
あはは……。
箸を付ける。
文句なしに美味かったのでした……!
(参考:うに丼)
昼食にちょっと時間を使ってしまったか、天塩町に到着したのは15:00頃だった。
「ウフ!」
にやける。今、そんな顔になってるだろう。
「?」と、オル。
いや実は――
ここから、ある意味この旅で、一番期待していたルートに入るのだ。
ただ、ひた走る――“道道1-106号稚内天塩線”!
天塩、稚内間を結ぶ、延長68kmもの路線だった。
大半の区間を日本海に沿って走り、サロベツ原野の中を一直線に進む。人家や電柱などの人工物がほとんどなく、直線主体の道路である。(Wikipedia)
道の入り口、町のコンビニで缶コーヒーを買う。イートインにて休憩する。落ち着け俺。もはや目の前。道路は逃げやせぬ。
缶を口に運び、ミルク・砂糖入りだったことに「あっ」と思うも遅かりし。笑。
外を眺めつつ……やがて、交通量がほとんどないことに気づくのでした。
「僕は、プランニング時、ここに魅力を感じていたせいもあってか、ひょっとして渋滞するかなぁ、と心配してたんだ」
「なら良かったジャン」
「うん」
というわけで、さぁ発進――
天塩川を渡る! 橋の上から、胸躍らせて行く手を眺める。遠く、何かが見える。見えてしまう――
橋を渡りきって北上開始。やがて右手に現れたのは――さっき目撃した、巨人の列。正体はオトンルイ風力発電所だ。
発電塔28基で、列長約3km。周囲が大平野だという環境が、スケールを際立たせていたのでした。
ついでながら。オトンルイはアイヌ語で“浜にある道”を意味するらしいです。漢字では『音類』と書き、これはセンスいいと感心したのでした。
(参考:天塩橋手前からオトンルイ風力発電所(ズーム))
発電所を通り過ぎ、そして広がるのが緑の大平野だ……。
(参考:天気、曇でした残念)
※ ※
自分が今、走っているんだか、止まっているんだか、わからなくなる。
もちろん、風があるし、加速度もちゃんと感じている。
だけど、そう考えてしまう。
スタートからゴールまで、標高ゼロの真っ平ら。
走ってるのか、止まっているのか、わからない。
生きているのか、死んでいるのか、わからない。
今の自分の位置がわからない。
風景が変わらない。これは、大平野を走っているのに、大距離トンネルの中を走ってるのと変わらない。両者のどこが違う?
風景が単調なら、無限に解放されてある空間は、閉鎖されてある空間と、実質同じでは?
いわゆるニートの人は、ゼロ次元世界の住人で。
トンネル人は、一次元世界の人。
平原自在な流浪の民は二次元の人だが、今の僕は一次元的二次元人。
この世界は三次元だというのに、何をやっているのだろう?
でも、気持ちいい。
僕は本州しか知らない。外国も知らない。だから感じる。北海道は別次元。
大きい。
感性を揺さぶられる。
これが感動か――
※ ※
――なんちゃってね。笑。
ところで交通量なし、と言ったけど、実際はポツン、ポツンとあるんだ。
停車して記念写真。地平線になにもない光景を撮りたかったから、前を走る車両が消えてなくなるタイミングを待ってたんだけど、そのタイミングで後ろから来た車が通り過ぎていくのです(笑)。その車が地平線に消えていくのを待ってると、次の車が出現するって感じで、もう、妥協したのでした(笑)。
道道を堪能したところで稚内市市内だ。これは、長かったオロロンラインの終わりでもあるのでした。
そして、国道1-238号を東進。本日の宿のある、(第1)日本最北の地、宗谷地区へ!
――到着!
本日のルート距離、約370km。
到着時刻は17:30。所要時間9時間30分だったのでした。
(参考)
宿は民宿で、オルの事情は午前中に、ホストの人に直に連絡済みだ。部屋が和室で寝具は布団なので、対応は簡単だと一発で快諾してもらえたのでした。
部屋に入って、窓が、防寒のためだろう、3重になってるのは驚きだった。
食事だが、これも、始めから素泊まりの予約だったから迷惑を掛けていない。夕食は外でと、遠乗り計画時から決めていたのでした。
「――で、なに食べるのさ?」
「名物」
「だから、なにって!?」
「うふふ」
「AHO!」
というわけで、その店に入って、オーダーしたのは――
塩ラーメン、だったのでした。
やって来る一品。それは――
「おお!」
「おお!」
なんて美しい一品。それは――
スープは火傷するほど熱いのに、氷のように透明で――美味しい!? ああ、美味しい――!
僕は、塩味が好きだなぁ……!
味噌味や醤油味、トンコツは、やぼったい。
塩味こそ、宇宙の星ぼしの煌めき、ロマンを感じさせてくれないだろうか?
もう夢中になったのでした。ああ、美味かった……!
(参考:塩ラーメン)




