2日目 毒化
岩内町から進路を東に取り、国道1-276号にて内陸へ。まずは平野を通り、ほどなく。道路を国道1-5号に乗り換えて、北上開始だ。僕らは稲穂峠へと、山の中に入って行こうとして――
停車したのだった。
時刻は16時過ぎ。夏だからまだ日の光は十分にある。なのに、どこか――薄暗かった。
函館から約380km。昨日の分もあって、はっきりと疲れを感じている。そのせいかもしれないが、道が、この先が、どこか――不気味に感じるのだ。
ほどなく、原因の一つに気づく。アスファルト舗装された、ちゃんとした道。不自然なまでに交通量がなかったのだ。皆無。
当然、オルが聞いてくる。
「ねぇ、なんでガラガラなの?」
「……間接的には、すぐ横を、函館本線、国鉄が走ってるからだろう。バイクとか車、列車に積んで移動できるんだよ」
「それも旅だよね?」
「断固拒否したいところ、だけど」
「直接的には?」
「う~ん、進めば分かるというか……分かりたくないというか」
チラと前方に目をやる。
いかにも、出そう、だった……。
ここに至ればオルにも察しが付く。そういやテレビ、“害獣予報”、チェックしてなかったわね、と。
「ボクたち、今まで平気で飲み食いしてたけど?」
「海鮮物は大丈夫。陸地のも、ランチやファームで管理された家畜、野菜は問題ないから安心して。ただ、野生モノがね」
背中でオルが柔らかくブルルとした。
「“北海道で野生動物”ったら、なんと言っても、“アレ”よねぇ?」
「不吉なこと言わないの! そうでなくても、ただの虫けら、例えば蜂なんかであったとしても、その毒針は車の装甲を簡単に穴だらけにする。たいへんな脅威なんだから!」
なぜか、このとき。“死”を強烈に感覚したのだった。
「で、どうするの? 海岸線ルートに戻る?」
なんとオルがそんなこと言い出す。
「いいや、ここまで来たら――」
逆立場で僕は主張する。
「行って見よう。なぜか、今回は、“出来そう”な気がするんだ」
「……オッケィ!」
ということで、発進しようとして――
僕らは、摩訶不思議を目の当たりにするのでした。