2日目 昼食
白神岬から左手の海は、日本海になる。なんて明るいブルーだろう……。心洗われるような美しさだった。
自然の中を走り、ぽつんと集落が現れる。あっという間に通り過ぎるとまた、長々と自然の中だ。
そうして何時間。沖合遠くに島――奥尻島がうっすらと見えてくる。道は国道1-228号から1-227号に、そしてすぐに1-229号に変わった。番号は変わったが、道は道なりのままである。
オルは大人しくしている。退屈して騒ぎ出すかと心配してたが、さすが僕の妹。配慮してくれてるようだった。
函館を出発から約5時間半。13:00、道道1-740号、せたな町・尾花岬に到着だ。
「と言ってもご覧の通り、走りながらのトンネルの中なんだけどね。本当に行こうと思ったら、トンネルを出た所で駐車して、険しい海岸線をひたすら歩かないとならない――らしい」
「ソコって、何なの?」
「北海道最西端。大陸全体でも、最西端だよ」
「行く?」
「止めとこ」
自然のままの険しい場所だ。万が一しつこい観光客に捕まったら、こんどこそ逃げられない。危険はパスしたい。そう説明する。
「ところで、ひもじいんだけど、これはボクの気のせいなのかな?」
「そんな貴女に残念なお知らせがあります」
「きゃーそんなー!」
「君と一緒にいると楽しいよ」
「腹へった」
「出発してここまで、ルート距離にして、約230kmです」
「ゲッ……」
「このままだと、小樽到着が19時くらいになりそうです。これは休憩時間なしでの計算です」
「断固抗議します! メシメシメシ――!」
「ああ、やっぱしこーなったか……」
頭を抱えたのだった。や、実際には抱えないけど。運転中だから……。
たとえば札幌市周辺、石狩平野とか、よほど開けた場所以外は、内陸部は危険だった。安全のためには、延々と海岸線を進むしかないのである。
「音に聞く積丹半島の神威岬とか、歩かせてあげたかったけど、時間がなぁ……」
「そもそもが無茶苦茶なプランだったのよ!」
「僕一人だけのつもりだったから」
「ぶーー!」
「やれやれ……」
ドライブシステムを半オートにし、僕はマップを仮想表示させる。口頭でAIにルートの再検討を指示し、結果をアップした。
(引用:グーグルマップ)
「とにかく岩内町までは行こう。そこから半島の根元を横切ろうか? 内陸だけど、1桁ナンバーの国道1-5号に賭けてみるのも手だと思う。この場合、最初のルートより、約70km短縮。小樽到着を17時半くらいに出来そうなんだけど」
「これが最善?」
「距離的には」
「じゃ決定。ごはんにしよ。時間30分くらい使ってもいいから」
「仰せのままに」
ああ、僕の旅よ……。こっそり溜息をつくのでした。
※ ※
海沿いの道を走る。オルがぽつりと口に出した。
「ねぇ、なんで旅するの?」
すぐに答えられない。
「それは……『なぜ山に登るのか?』と一緒で、人類にはまだ回答が見つけられてないことなんだ」
海沿いの道を走る。
「ふうん……」
僕は無言になるだけだった。
(参考:日本海)
※ ※
お昼ご飯は道沿いの、なんの変哲もない食堂にて洋定食を注文した。サンドイッチにオレンジジュース。オルはご不満の様子だったが我慢して貰った。
「ウニ丼は明日、評判の店があるからそこで食べよう。それとも半島を回る? そちらにもいい店があるみたいなんだけど」
「いじわる!」
「ナンデヤネン」
「一緒にお風呂入ってあげないんだから!」
「ナンノコッチャ」
「ここ、カブちゃんの奢りだからね!」
「ナンボデッカ」
「プッ――」
てことで僕の勝ち。笑。
それなりに食事を楽しみ――
店を出て、ブラックコーヒーを忘れたことに気づくのだった。




