7 忘れない記憶作り
「ありがとうございましたー!」
売店のお姉さんの声を背に俺と中谷さんは売店を出た。ところで、俺と中谷さんはどこまで自由に病棟の外を歩いていいのだろうか。まさか、開放病棟と外来のある一階まで行けるのか?いや、用事なんて無いけど。
それに、今は俺復活祝いが先だ。俺は重いカートを押して中谷さんと病棟へ戻った。で、二重扉を開けに来てくれた宮田さんに爆笑された。なに、その大荷物!と。パーティーの準備ですが、何か?とは言えなかった。
「石見ちゃん以外には黙っててあげるけど、中谷さんのブラック・マネーで買ったんでしょう?」
「そうですよ、今日はパーッとやるんです!」
「ふふ、雨宮君、復活したもんねー!」
相性が良いんだろうなぁ、中谷さんと宮田さん。中谷さんがこんなに楽しそうに話す看護師さんなんて、宮田さんくらいなものだ。俺が少しへばっていると、宮田さんがスイスイとカートを押し始めた。え、いや、何でそんなにスイスイと運べるんだよ、俺でも押すのキツいんだけど。……看護職の闇を見た気がして仕方ない。
「このまま宮田さんが223へ押して行ってあげよう、特別だよー!」
「いや、悪いですって。他にも仕事あるッスよね?」
「ううん、石見ちゃんがバリバリやってるから特には。石見ちゃんも嬉しいんだよ、雨宮君」
……やっぱり周りの人間に恵まれているな、俺は。記憶障害にも感謝しなきゃいけないのかもしれない。普通に生まれ、普通に生きて、普通に死ぬ人生とはまた違った幸せに囲まれている。俺はそう感じた。




