4中谷さんがやってきた
しばらく本当の無音だった。が、いきなり223の扉を「ノックする」わけではなく「叩く」という行動に出た者が現れた。バンバンバン!!小さく悲鳴を上げる、いい年をした男三人。俺は恐怖で顔が引き攣っている。
絶対に「中谷さん」だ。絶対にそうだ。きっと俺がネームプレートを読み上げた時に、俺の存在に気付いたのだろう。でも、どうして俺が隣りの部屋の患者だと分かった……?背筋がゾッとした。
「ど、どど、どうする?嵐君!」
「何でもかんでも俺に投げないでくださいよっ……」
「……俺が殺ろうか?」
「「いやいやいやっ!!」」
後藤さんが俺に判断を委ね、俺がそれを拒否し、徹君が物騒なことを言い出して、俺と後藤さんが全力で止めた。それが現状、鳴り止まぬ扉を叩く音。どうしよう、ナースコールしてしまおうか。
と、俺が迷っていた時だった。
キィ……。そんな消え入りそうな音を立てながら、223の扉がゆっくりと開いた。え、あ、ちょっと!開けないで開けないで今看護師さん呼ぶからちょっと待ってお願い!そんな俺の願い虚しく。彼女は、姿を見せた。
「さっき、私の名前を呼んだ人、いる?」
中谷さんだと思われる女の子は、こてん、と首を傾げた。……可愛い。対面しての第一印象はそれだった。声も顔も可愛いが、着ている服も可愛いし仕草も可愛い。セミロングくらいの長さのライトブラウンの髪が、ふわりと揺れる。
223の男たちはすっかり、(外見とかが)可愛い中谷さん(?)に見惚れていた。




