3中谷さんがやってきた
223に戻った俺は、後藤さんと徹君に向かってピースサインをしてみせた。服は妙な汗で濡れて気持ち悪いし、顔も汗だくだろうし、格好つかないけど、俺はやった。お隣さんの名前、そして、性別という重要な情報を入手してきたのだ。
「嵐君!よく生きて戻った!!」
「やるじゃねぇか、嵐!よく無傷だったな!!」
「……死ぬくらいの覚悟は要りましたけどネ」
よく分からないテンションで、俺は後藤さんと徹君に抱き着かれる。しかし、俺の頭は既に安堵することに飽き、自身の命を懸けているような勇み足で向かった先での戦果を後藤さんと徹君に、一秒でも早く伝えたがっていた。
俺は、その名を口にした。
「中谷。中谷 智恵里って女の子の名前が書いてあった……」
ドッシャン!バキバキバキッ!ガラガラガッシャン!!未だに続く、もう破壊音と言っていいほどの騒音の中、俺が口にしたお隣さんの名前、そして、性別に後藤さんと轍君はフリーズしていた。しばらく、お隣りの破壊音以外の音が無くなる。
「……女の子、だったんだ?」
と、後藤さん。
「智恵里って、女の子の名前ッスよね……?」
と、返す俺。次は徹君が言う。
「ちょっと洒落た名前だけど、ばあさんかもしんねぇぞ?」
……しかし、お隣りの中谷さんがおばあさんだとして、じゃあ、今も続く破壊音はおばあさんが出していると?それは考えにくかった。徹君も言ってからそのことに考えが至ったようで、むむむ、と唸った。そんな時、不意に破壊音が止んだ。三人全員、嫌な予感に身構える。




