1中谷さんがやってきた
ガタガタ、バタン。ゴンッ、バキッ、ガシャン!!
荷物の片付けをしているのだと思うが、隣りの個室から聞こえてくる音はだんだん物騒になっていく。ベッド周りのカーテンを三人とも全開にし、三人で顔を見合わせている。それが、今の223の状況だった。一体、どんな重症患者が入ったのだろう。男か、女か、それ以外か。俺、後藤さん、徹君は小声でそれぞれの憶測を口にしていたが、当然のことながら答えが出ることはなかった。後藤さんが言う。
「嵐君、ちょっと挨拶にでも行ってきたら?」
「や、たぶん隔離だと思うんで……やめときます」
「いや分かんねぇぞ、こんだけ騒がしく出来るくらいなんだから開放かも」
隔離にしろ開放にしろ、あまり関わりたくない、いや、関わってはいけないという俺独特の勘のようなものが働いていた。しかし、名前くらい知っておいた方が今後、お隣さんのことを話す時に困らないかも。そんな好奇心混じりの考えも頭に浮かぶ。
……ネームプレートくらい、そっと見に行くか。
「っし、男、雨宮 嵐……ネームプレート見に行ってきまっす!」
「「おぉっ!!」」
俺が大したことでもないけど勇気のいる行動に出ると宣言すると、後藤さんと徹君の歓声がハモった。そう、俺も男だ。付いているものは付いているし、それだけは俺がどんなに重度の記憶障害を持っていても間違いようのない事実なのだ。
俺は気合いを入れる為、自分の股を叩いた。うん、確かに付いている。俺は男だ。俺はやれる。いざ、お隣さんのネームプレートの前へ出陣!!後藤さん、徹君、俺の無事を神様か仏様に祈っておいてくれ!と、俺は勇み足で病室を出た。




