5 窓から薬を投げ捨てる女
「中谷さん、触られんの嫌いだったりする?」
「嵐君はいいよ、触っても。でも、あの男の看護師さんはやだ……」
「……あぁ、品川さんのことか」
品川さん。うちの病棟では数少ない男性の看護師。ボディはムキムキ、メンタルもタフ。でも、繊細さに欠けて失言も多く、暑苦しい体育系。厳しめなことをバンバン言う微妙に評判の悪い看護師さんだ。
しかし、何で中谷さんに触ろうとしたんだか。
「なんか触られるようなことした?」
「んー……寝癖で髪がだらしない、って言われた。で、俺が直してやるって」
「男性看護師が女性患者に触ろうとするのは、ちょっとなぁ……」
落ち度は品川さんにある。今回の騒動は理由あってのことで、そこまで中谷さんが悪いわけではなさそうだ。俺は後藤さんや徹君にも意見を聞きたくて二人の顔を見た。まず、後藤さんが口を開く。
「介助入浴でもあるまいし、男性スタッフが女性患者の髪を触るのはいただけないねぇ」
続いて、徹君。
「俺も同意見。セクハラだ、って師長に訴えても通るぞ、きっと」
まぁ、そうだよなぁ。中谷さんはやっちゃいけないことをしたけど、全面的に中谷さんが悪いわけではない、というのが答えで良さそうだ。俯いて鼻をすすっている中谷さんの頭を、もう一度撫でる。
「投げ捨てたのはもう気にすんなって。ていうか、毎日ちゃんと薬飲んでるのか?」
なるべく優しい声で言うと、中谷さんが顔を上げてすぐ傍に立っている俺の顔を見上げた。目は赤くなってるけど、やっぱり可愛い。正直、泣き顔も可愛かった。いや、別に泣いてる女の子に興奮するとかいう性癖は無いけど。無いけど!




