3退屈ほど尊いものはない
ここで、俺と後藤さんと徹君の年齢を明かしておこう。俺はたぶん20代だと思われる。自分の年齢も定かじゃなくなるほど、俺の記憶障害は重い。後藤さんは30代だと言っていた。もう詳しく覚えていないが、後藤さんが以前「僕は嵐君より一回り年上なんだねぇ」と言っていた為、俺は20代なのだと思われる。徹君はこの病院でも最年少の方で、18歳。
貴重な青春をこんな時間が止まっているんじゃないかと疑いたくなるほど退屈な場所で過ごさなければいけない徹君には同情するが、そういう俺も輝かしい20代の時間をこんな場所で浪費しているわけで。後藤さんだって、社会人としてバリバリやっているはずの30代を、ここでぐだぐだして過ごしているわけで。それぞれ、それなりにツイていない。
「本当の本当に退屈だ。テレビは人生の先輩方が占領しているしねぇ」
「毎日、同じ昭和歌謡を聴いてて飽きないんスかね」
「本当にね。飽きて、僕らに刺激的なドラマでも観せてくれればいいのに」
ホールに行けばテレビはある。だが、ご高齢の人生の先輩方が毎日、録画した昭和歌謡の番組をリピートして掛けている為、俺たち若者は好きな番組を観ることは出来ない。あの番組、いつ録画したやつなんだろう、と思うくらいにはもう長い間、同じ番組が再生されている。俺と後藤さんは、同時に溜め息をついた。
──退屈だ、と。
そんな時、徹君が目を覚ました。起き上がり、大あくび。そして、時計を見てガッカリする。まだ昼過ぎであることにガッカリしたのだろう。徹君の場合、ずっと寝ていれば一日が終わる。だが、眠りの浅い日も無くはない。それが今日だった。




