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店長の一押し  作者: 葛西
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漫画みたいな恋をした

現実でいいことがなかった。

具体的には、男子に好かれてしまうが故の女子からの嫌がらせ。いじめを経験していた。

恋愛は怖いと思い、自分から壁を作った。だから友達もいない。それから物語に没頭するようになった。そこでは私はあくまで観客で、プレーヤーではないから、傷つくことがない。それなのに、物語に出てくる人物の、友人や恋人になれたような充実感を味わうことができる。物語は私にとって最高の娯楽であり、現実逃避法だった。

小説も好きだが、漫画が特に好きで、最寄りの駅前のTSUTAYAに通っていた。するとある日、店内改装に伴って、新たな試みとして店長の一押しというポップが貼られるようになる。店長の一押しを探して歩いてみると、そのポップが自分も特に好きな漫画によく貼られていることに気付く。そこでなんとなく、自分の漫画の趣味と店長の漫画の趣味が似ているのかもしれないと思い、その店長に興味をもつようになった。

店長は今まで一度も見たことがなく、(実際はあったのかもしれないが、これまで全く意識したことがなかったため覚えていない)尚更どんな人か気になった。そこで、今までは本に夢中で品入れをしている店員を意識したことはなかったが、(むしろ、立ち読みしているときはその存在を疎ましく思っていた)その日から通りすがりにネームプレートを確認するようになった。店長ならば、恐らく明記してあるだろうと思ったから。

それから、1ヶ月が経過したがなかなか店長には会えなかった。いつもいるのはアルバイトと思われる、怠そうな男の人と爽やかで感じのいい女の人だけ。女の人の方には一度、漫画の場所を教えてもらった。親切で優しかった。私の想像は膨らんでいく。一押しには少女漫画が多いから、女の人かもしれない。そしたら、友達になってくれないかなぁ。

しかし、そこからさらに半月が経っても店長のネームプレートをつけた人は現れなかった。そして今日、私は半ば諦めていた。もしかしたら、店長は管理者だから、品入れや接客はアルバイト任せで、店の奥で事務処理をするだけなのかもしれない。そう思いながら、でも漫画は読みたいので次に借りる漫画を選んでいると、いつもの怠そうな店員が近づいて来た。なんだろうと思っていると、「これ、面白いデスヨ」とぶっきらぼうに漫画を勧めてきた。?????えっ、なんで???今までずっとこのTSUTAYAに通い詰めてきて、話しかけられたことなんかなかったのに。不審に思いながらも会話を続けると、ずっと前から認識されていたこと、いつも楽しそうに本を選んでいるのに、今日は落ち込んだ様子だったから気になってつい声をかけてしまったこと。が分かった。そこで、私は落ち込んでいた様子を彼に説明した。店長の一押しは私の一押しとかなり一致していること、女性ならできれば友達になりたいと思っていたこと、でも会えなくて諦めかけていること。すると彼から予想外の答えが。「えっと、その店長、俺、デス…」

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