1話 「メス転生」その四
「世界を包む炎の元に集え、我が眷属よ!」
今度は俺とガロの死体を囲む紅の魔法陣が完成した。魔法陣は回転始めギュオンギュオンと音を立てている。
魔法陣が光り始め、貫いたガロの心臓の部分に集結していく。ボワッと音を立てて心臓に収束した魔法陣は灼熱の炎の渦に変わりガロの死体を包み込んだ!
「すっ...すげぇ。」
と思わずこぼしてしまう。さっきは無我夢中でソル・フレイムを打ち、魔力切れで意識もフラフラしてたからちゃんと見れてなかったけど...これが魔法か。隣で見ている鳥さんも「クッ...クエェ。」と同じ様なセリフを口にしている。
全くなんて可愛い奴なんだ。
そんなことを思っていると、死体を包んだ炎が球体になり再度ボワッと音を立てて消えていった!
これで『炎の眷属』とやらの完成かと覗いてみると...。
そこにあったのは、ガロの骨らしきものだけだった。
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・失敗しました。
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ウィンドウにそう表示された。
そしてまたもや俺はその場で倒れてしまった。今回は失敗してしまったからかレベルアップはないようだ。
「これは暫くは動けないなぁ。」
仰向けになり、穏やかな草原のベッドの上でどこまでも続く青空を見つめる。
日の登り方的に今は昼ぐらいだろう。幸い目に見える範囲にモンスターはいないし暫くはこのままでいるか。
俺は少し眠ることにした。
目を覚ますと青空は夕焼けに変わり、日は落ちかけていた。
そろそろ帰ったほうがいいかと寝ながら考える俺をじっと見つめる鳥さん。俺も何となくじっと見返してみた。
なんて可愛いやつなんだ。お目々までクリクリじゃないか。
撫でようとしたところで体が動くことに気づく。しばらく休めば魔力は回復するらしい。
起き上がると鳥さんの足元に木の実や果実が置いてあることに気づいた。
気づいた俺に気づいたらしく、鳥さんはメロンぐらい大きな丸い果実を一つ啄むと「どうだ!俺がとってきてやったんだぞ!だから食え!!」と言わんばかりのドヤ顔で見つめてくる。
啄んだ果実と同じものを一つ食べてみる。...味は葡萄に近い、結構いけるな。
二人で果実を食べながら鳥さんをじっと見つめる。というか色々あって忘れてたけど...こいつは一体何なんだろうか?
俺のことを助けてくれたり、こいつを守りたいと思った時に魔法陣が発動してスキルに目覚めた。
フェウスではないにしろ、俺のことを助けてくれたし俺もこんな可愛い鳥さんとここでバイバイするのは嫌だ。
試しに聞いてみた。
「お前俺と一緒に来ないか?」
って言ってもわかんないよな。
「クエッ!!!!!」そういうと鳥さんは羽を羽ばたかせてとても嬉しそうにこちらを見てきた。
どうやらついてきたいらしい。と言ってもモンス○ーボールがあるわけでもないしなぁ。どうしようと思っているとあることを閃く。
「あっ!一回殺して『炎の眷属』にすれ...ば?」
まで言ったところで鳥さんから熱烈な視線を感じた。どうやら先程の骨だけの状態を見せられて恐怖しているんだろう。しかし、そのまま連れて帰ると両親が心配してしまうしなぁと思いダメ元で殺さずに『炎の眷属』にできるか試してみることにした。
「世界を包む炎の元に集え、我が眷属よ。」
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詠唱者メスと対象モンスターに資格がありません。
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そう表示された。...おかしい。まず、対象モンスターである鳥さんに資格がないのは分かる。死んでいないからだ。
だが、俺に資格がないのが分からない。まず、ランク絶対のこの世界で、ガロが鳥さんを狙った。そうなると鳥さんはおそらくガロと俺と同じFランクだろう。ただ単に『炎の眷属』に出来なかっただけならさっきみたいに「失敗しました。」と出るはずだ。一体どういう事だろう。
まぁ深く考えても仕方ないか!どうせできない物はできないんだ。今どう考えたってそれは変わらないだろう。
...というかこの鳥さんの名前決めてなかったな。
再び鳥さんに視線を戻すと「クエッ?」と戯けた表情を見せた。なんてあざといんだ。
「クエッ...クエッ...クエ...チョコボー.............チョコ!!!!!」
「クエッ!!!!!」
この鳥さんはチョコと呼ぶことにした。
「て言ってもチョコとは帰れないんだ、、、ごめんな。」
「クエ...。」としょげるチョコ。
そんな顔しないでくれ!俺だって置き去りにしたくはないんだ!!!
俺まで泣きそうになっていると、チョコが羽を一枚ピッと抜き取ると俺に渡してきた。
俺がその羽を受け取ると、ウィンドウが表示された。
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アイテム名:チョコの羽
ランク:F
※チョコの羽。羽にはチョコの魔力が流れているためチョコから所有者の居場所が分かる。
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バッとチョコを見ると、すごく嬉しいそうな顔で俺のことを見つめていた。
気がつくと俺は泣いていた。すごく恥ずかしいが、初めて俺のことを認めてくれた気がして嬉しかったのだ。
チョコは泣き出した俺を心配しつつも羽を大きく広げて飛び立った!!!
「ていうかなんかちょっとおっきくなってね?あいつ。」
思い出してみると俺がガロを倒した時にチョコが少し大きくなった気がしたが、もう確認ができないほどチョコは遠くへと飛び去っていた。
チョコを見送った俺は一人になるももう今までの孤独とは違った感じがして嬉しかった。
「よし帰るか!!」
俺はメスの記憶を頼りに歩き出した。