問題児?編
起承転結の「起」の部分のその2です。
読んだ感想を聞かせて貰えると幸いです。
入学式の次の日。僕の入部が決まった。
「入部おめでとう光太君!しかし本当に良かったのかい?寮生活で。ご両親は?」
「単身赴任でいないので。皆さんがいてくれて心強いです」
「そうか。引っ越しの荷物はちょっとずつ運んでくるのででいいからね」
「はい」
「まだー?早く部屋決めよう!」
「わかったよ。部屋はくじ引きで決める。瀬良先生・光太君・芽依ちゃん・吉川君・舞依・俺の6人で2人1組を3組作る。そして三部屋あるからそこでそれぞれ生活する。それじゃあみんなくじを引いて」
くじの結果
一組目 吉川先輩・瀬良先生
二組目舞依さん・僕
三組目 芽依さん 中嶋先輩
「また瀬良先生とか」
「何でこいつとなのよ!最悪!」
嫌われすぎだよ僕。
「心配しなくて良いよ光太君。口は悪いけど面倒見は結構いいから」
「うっさい!」
「じゃあ各自部屋を移動して。終わったらまたリビングに集合」
「よし、終わった」
すると
「誰かー!手伝ってー!」
吉川先輩の声だ。
「今行きまーす!」
吉川先輩を手伝いに行くとそこには、三台のパソコンと二台のスマートフォン。そしてそれを繋がっている無数のコードがあった。
なんじゃこりゃ。
「これを二階まで運ぶんだけど・・・」
結局全員で三十分くらいかけて移動させて、またリビングに集まった。
「今日も依頼があるんだ。依頼人は一年一組の担任、山瀬 小夜先生。先日、仕事が長引いて夜遅くに帰っていると、芒月市のゲームセンターで一人遊んでいる1年1組橘 佳奈を見かけたそうだ。そして今日家族と本人に確認したが、何もないと言われてしまったらしい。が、同じ日の8時頃、同じく芒月市で橘佳奈を見かけたと校長先生が言っていたらしい。そこで、探知部に調べてほしいということだ。でも、今日はもう遅いし、調べるのはまた明日にしよう」
「あんたさっきの橘って子知ってる?」
部屋の電気を消したすぐだった。僕はベットに入りながら
「はい。中学から一緒でした。でも、同じクラスになったのは今年が初めてで、、話したことも多分ないです」
と言う。
一体いつから寝てしまったのだろうか。しかし寝落ちする瞬間というのは、はよく考えると奇妙なものだ。寝る瞬間の感覚を感じようとするといくら眠くても寝れないが、何も考えずただぼーっとしてるといつしか眠ってしまう。しかし、ぼーっとしていると寝落ちする瞬間の感覚を感じることができない。ここでやっぱり僕はこういう結論を出す。『人間は寝る瞬間の感覚を感じることはできない』と。
ここで諦めない人がすごい発明とかをするんだろうな。
「早く起きなさい!」
翌朝は舞依さんに叩き起こされた。
「すみません」
「何で私が起こすのよ。最悪」
「おーい。ご飯できたぞー」
ご飯はいつも中嶋先輩が作っているらしい。料理もできるなんて、ハイスペックすぎる。しかも作る料理が凝っている。フレンチトーストって。
瀬良先生はもうでかけたらしかった。やっぱり教師って忙しいのかな。
「いただきます」
「今日は帰ったらすぐ芒月市を中心に橘さんを探そう。ベストは寮でゆっくり話を聞けることだけど。まあ橘さんの方にも都合はあるだろうし、メールアドレスとかを聞けるだけで十分だよ」
「じゃあ私そろそろ出るね」
「芽依さん、出るの早くない?」
「日直の仕事があって」
「そうなんだ。頑張って」
「なあ、ちー。同じクラスに橘っているじゃん?」
「いるけど。それがどうしたよ」
「いやさ、同じ中学だったけども、そういえば一回も会話したことがないなって」
「確かに。でもそれなら俺もだよ。どころかあいつが誰かと喋ってんのすら見たことがない」
「そうか」
「どうしたよ光太君。まさか狙ってんの?」
「違うよ。そんなんじゃない」
「だよな。確かにあいつかわいいっちゃかわいいけど性格悪そうだもんな。個人的には、宇佐美さんあたりがタイプだな。かわいいし優しそうだし。まるで天使だね」
芽依さんが日直でいなくてよかったな。
─放課後─
「じゃあ早速俺たちは橘さんを探そうか。あまり遅くならないうちに帰って来るように」
とりあえず芒月市に向って歩いてるけど、うーん。橘さんどこにいるかな。いやまあ、そもそもいるかどうかもわからないけど。私最近全く役に立ってないし、光太君も入ってライバルも増えたからここで挽回しなきゃ。
さて気を取り直して。確かゲームセンターで見かけたって言ってたからやっぱりゲームセンターを探そうかな。いや、まてまて私。ゲームセンターは絶対誰かが先に行ってるはず。お姉ちゃんは騒がしいとこが嫌いだから行かないだろうけど。
「あれ。ここどこ?」
迷っちゃった。
こういうときって確か電柱とか自動販売機とかにここがどこかって書いてあったはず。
あ、電柱あった!
えーっと桐鳳?
あれ?私芒月市に向かってたはずだけど。真逆じゃん。
「あの、もしかして宇佐美さん?」
「きゃあ!」
何?何?うまく聞き取れなかったけど、今私の名前呼んだ?
「そんなに怖がらないでよ」
この人・・・
「橘さん?」
「佳奈でいいよ」
やった見つけた!じゃなくて。
「か、佳奈ちゃんは何でこんなところに?」
「家を・・・追い出されちゃってさ」
え?嘘、家を追い出された?
「何で!?」
「わからない。昨日は帰ったら急に遅くなるまで帰って来るなって言われて、今日は友達の家に泊めて貰えって言われて、私友達とかいないからどうしようかと思って」
かわいそう。だったら
「だったら、私の家に来ない?寮だから他にも人がいるけど」
「ありがとう宇佐美さん」
佳奈ちゃん、すごく辛かったんだろうな。涙がボロボロこぼれてる。
「芽依でいいよ。私達もう友達なんだし。じゃあ寮に行こう」
「うん!」
そうだ。皆に見つかったってメールしないと。
「私道迷っちゃったんだけど、道わかる?」
「ううん。私も当てもなくただ歩いてただけで、ここには来たことがないから」
「芽依のことだからどうせまた道に迷ってるんでしょう」
「あーまた芽依ちゃんの方向音痴ね」
「橘さんもいるらしいし大丈夫じゃないか?」
「ごめん!道に迷っちゃって!」
「やっぱり迷ってたのね。遅いわよ」
「すみません!」
「橘さんに言ってるんじゃないのよ。そっちのバカに言ってるの。」
「私はバカじゃない!」
「そうですよ!芽依ちゃんは・・・確かに頭は良くないですけどとっても優しいんですよ!」
「佳奈ちゃん私頭そんなに悪いの?」
「・・・だってテストの点数は良くて二十点は流石に」
「・・・」
「芽依さんってそんなに勉強ができないの!?」
「光太君まで・・・」
「なるほど。事情は分かった。今夜は泊まっていったほうがいい。客間が空いてるからそこを使ってくれ。瀬良先生には話しておくから」
「ありがとうございます」
「さて、そろそろご飯の支度をしようか。みんなは先にお風呂に入っといで」
「佳奈ちゃん、一緒に入ろう!」
「いいよ」
「案外広いんだね。お風呂場」
「そうかな?普通じゃない?」
「じゃあ普通だけどやや広めってとこかな?」
「あたたまるー!」
「だね。そういえば部屋って一人一部屋あるの?」
「ないよ。二人で一部屋」
「芽依ちゃんは誰と一緒の部屋なの?」
「優先輩だよ」
「いいなあー中嶋先輩かっこいいもんね。もしかしてそういう関係だったりする?」
「そういう関係って?」
「ううん。なんでもない。違うならいいんだ」
「ところで佳奈ちゃんって何部?」
「一応バレー部。お母さんも高校のときやってらしいし。でも両親と気まずくてかったりして大変だったから、あんまりいけてないけど」
「お父さんとお母さんって何のお仕事してるの?」
「分からないんだ」
「分からないってどういう・・・」
「私が中学の頃まではテレビとかパソコンとかを修理する仕事をしてたんだけど、私が中学を卒業してから仕事をやめちゃったんだ。それから何かしらの職についたとは思うんだけどさ、何の仕事をしてるのかは教えてくれないんだ」
「ごめんね。変なこと聞いちゃって」
「大丈夫。それより芽依ちゃんのご両親は何してるの?」
「警察官」
「どっちとも?」
「うん。でも、三年前に死んじゃったんだ」
「え?・・・ごめん。こっちこそ変なこと聞いちゃった」
「いいよ。お互い様ってことで」
「そろそろ上がろう。のぼせちゃう」
「そうだね」
「そうだ、後で見せたい漫画があるんだ。さっき言ってたやつ」
「私もそれ見たいと思ってたんだ」
「今出たよー」
「後一人ぐらい入る余裕はあるけど」
「じゃあ僕入るよ?」
「珍しいな吉川が早めに風呂に行くのって」
「私も今入っちゃいたいんだけど」
「ふたりとも、ジャンケンで決めたらどうだ?」
「ちょっと優、バカにしてんじゃないわよ。いいわ、勝てばいいんでしょ勝てば」
「芽依ちゃん。どういうこと?」
「お姉ちゃんジャンケンすっごく弱いんだよ」
「なるほど」
「芽依、余計なこと言わないで」
「まあまあ落ち着いてお姉ちゃん。勝てばいいんだよ」
「やってやるわよ。ジャンケンポン!」
吉川先輩はグー。
お姉ちゃんは・・・チョキだった。
「何でまた負けるのよ!最悪だわ」
「じゃあお先に入ってきますね」
「行こう佳奈ちゃん」
「・・・そうだね」
「ご飯できたぞー!」
「今行くー!」
「中嶋先輩って料理もできるんだね」
「うん。すごく美味しいの。今日は・・・ハンバーグだ!」
「先生は先に食べていいって言ってたから先に食べよう」
いただきます。を言おうとしたときだった。バッドタイミングだよ先生。
「先生、おかえりなさい。ちょうど話したいことが」
瀬良先生は優先輩の言葉がまるで聞こえていないかのように
「橘さん・・・ここにいたのか。警察の方が探してたよ。みんなすまない。私はまだやることがある」
「何で私が?」
「君のご両親が逮捕された」
「どういうことですか?そんな・・・逮捕って、冗談ですよね?」
「本当のことだ。君のご両親は暴力団と関わっていたんだ。詳しくは警察の人に聞いてくれ」
「・・・わかりました」
「みんな、ご飯が冷めてしまう。後で説明するから先に食べなさい」
それから誰一人全く喋らずに食事をした。
「先生、話してください。佳奈ちゃんのご両親のこと」
「もちろんそのつもりだ」
「面会の時間です」
何でなの?お父さん。お母さん。
「ごめんな。佳奈。こんなつもりじゃなかったんだ」
「お父さん!何があったの?」
「見ての通り捕まったんだよ。お前が中学を卒業したぐらいの頃だ。父さんと母さんはほら、機械いじりが得意だろ?だからそれで暴力団に脅されて仕事をさせられたんだ。でもうまくいかなくってね。情けない。見切られたんだよ。ふたりとも」
「お父さん・・・」
「いいんだよ佳奈は何も気にしないで。ごめんな、こんな父親で」
「何で・・・何で・・・」
「おい、何泣いてんだよ佳奈」
「お父さんだって泣いてるじゃん」
「はは、ほんとだ」
「さあ、もう帰るんだ佳奈。明日も学校だろ?」
「うん。そうするよお父さん」
「そうだ最後に」
「何?」
「父さんと母さんはお前のことを愛しているからな。それだけは忘れないでくれ」
「分かった。じゃあバイバイ」
「あなた。ほんとに良かったの?全部話さなくて」
「ああ。佳奈を人質に取られてたなんて言えるわけないだろう。あと、それを話したら佳奈のやつ絶対背負い込むじゃないか。佳奈にはもう前に進んでほしいんだ」
「そうね」
「佳奈は明日から一人暮らしになるのか。大丈夫だろうか」
「あの子なら心配ないわ。とてもしっかりしてるもの」
如何でしたか?
タイトルにもなっているシャガがここで初めて出てきます。
それではまた次回。