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Dogma of Judas  作者: 墨崎游弥
後編 Will to Vision
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57 The World Will Be Yours

 強引にドアを開けた。その先にはやはり暗い部屋があったが、最奥部には階段がある。


 ジェシカ、ライオネル、ユーグの3人は辺りを見回していた。どうもここに敵の気配はないようだがユーグは何かを探しているようでもあった。それに気づくライオネル。


「何か探し物でもあんのか?」


 と、ライオネル。


「よくお気づきですね。ライオネル、ケイシーがセーブポイントという言葉を多用することはご存知ですね?」


「知ってるよ。能力とセーブポイントについては俺も聞いた。それを探すってか」


 ライオネルは悪戯っぽく言った。


 ユーグとライオネルの言うセーブポイント。ジェシカもその話は聞かされていたが、その存在に実感がわかない。それもそのはず、セーブポイントという言葉はケイシーが口にしてはいるが、存在そのものは確認されていない。セーブポイントがケイシーの虚言であり、存在しない可能性だってゼロではない。


「察しが良くて助かります。これから私たちはこの隠された空間でセーブポイントの候補となるものを探します。少し時間はかかるでしょうが、関係者を拷問すればどうにかなるはずです。ケイシーがここに立ち入る時間はさほど長くありませんでしたから」


 セーブポイントの存在を疑わないライオネルとユーグ。そんな二人を見てジェシカはほんの少し不信感を抱いていた。だが。


 ――騙そうとしていても、殺せばいい。


 ジェシカの脳裏にその考えがよぎった。


 ライオネルは早速部屋の中を物色していた。

 一応、セーブポイントとされるものを探しているようでもあったが、何か別のものを探しているようにも見える。

 緑色の照明に照らされた室内で、ライオネルは机の上を漁る。積み上がっていた資料の中から何か使えそうなものを探していた。と、ここでライオネルの表情が変わる。


「お、これは研究者のリストじゃねえか?」


 ライオネルは言った。


「貸してください。手がかりがあるかもしれません」


 ユーグに言われると、ライオネルは研究者のリストを手渡した。するとユーグはリストに目を通す。


「ライオネルはそのまま続けてください。ジェシカ。貴女は壁のキーボックスを当たってください」


 ユーグはジェシカとライオネルに指示を出す。

 ジェシカは疑いながらも壁に取り付けられたキーボックスの前に移動する。


 キーボックスは開かない。それもそのはず、これを開けるためには何かしらの方法で開けなくてはならないのだ。が、今はジェシカに時間などない。部屋を移動したときに拾ったハンマーでこのキーボックスを壊すのが一番だと判断した。


 ジェシカはイデアを展開。身体能力を強化すると同時にハンマーの重さまで変えることにした。

 そして、振り下ろす。金属とは違った音が響き、ライオネルとユーグはジェシカを見た。だがジェシカはキーボックスを殴るのをやめない。


「壊すのですか。内部の人間では思いつかないことをしてくれますね」


 ユーグは皮肉を込めて言った。

 そんな間に、キーボックスは破壊された。壁に取り付けられたキーボックスが床に落ち、地面にはいくつもの鍵束が転がった。


「キーボックスは開いた。鍵は、全部持っていけばいいの?」


 ジェシカは尋ねる。


「おう、そうしてくれ。階段の鍵とかあるかもしれねえしな?」


 と、ライオネルは言った。

 ジェシカは「了解」と言って鍵束を集めるのだった。


 このときの3人はまさか見られているとは思わなかったようだ。

 この部屋にも監視カメラはある。ユーグが機能停止させたつもりでもまだ動いているものはある。それが中継している場所はまた違った場所だった。




「まずいね」


 暗い部屋の中。イーサンはモニターを見て声を漏らした。

 彼の前に置かれていたのはモニターのリモコン。偶然モニターに映った光景を見たイーサンはリモコンで映す場所を切り替えた。すると、いくつかの場所でイレギュラーが発生していたことがわかったのだ。


 イーサンは悔しそうな顔をしてグラスを取り、ワインのように入れていた血液を口に含む。そんな彼を傍らで見守るボディーガード。


「ダイバー。まさかユーグまで裏切るとは思わなかったが、何かあったのかい? ユーグとケイシーの間に」


 イーサンはボディーガードであるダイバーの方を見た。口調に出さないように、冷静であろうとしてもイーサンの顔には感情が滲み出ている。


「特に変わったことは」


「そうかい」


 イーサンはそう言ってモニターの映像に再び注視した。

 問題があるのはユーグの裏切りにはとどまらない。実験室の隠し扉が見つかって侵入まで許したうえ、ルナティカはこのビルに来ていない。さらに、再起不能にしたはずだったシェリルが化け物を相手に立ち回っている。その傍らには、紅葉の死体。


「どうしたものか。流石の僕もキレそうだよ。ケイシーも大概だが、僕の築いたものを虚仮にして……生きて帰れると思わないことだ」


 とイーサンは言って立ち上がる。

 向かう先は、このビルにひそかに作られた隠し通路。そんなイーサンをダイバーが引き留める。


「お待ちください、イーサン様。流石に3対1は不利になります。どうか私も……」


「大丈夫だよ、ダイバー。君はここで待っていればいい。僕が死ねば君が後継者になればいい。なに、君にはヒントも遺しているじゃないか」


 イーサンは言った。さらに。


「この不死身の帝王を甘く見るな。大一番では敵方の賭けもすべて搾り取ってくる。それと、アレをこの部屋に置いている。必要ならば使うといい」


 それだけを言い残し、イーサンは隠し通路の中へと消えた。


 ――世界は君たちのものとなる。




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