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Dogma of Judas  作者: 墨崎游弥
後編 Will to Vision
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50 A fox smells its own lair first

 ロケットランチャーは正確に作動した。

 これでイザベラを片付けてしまえばいい、とシェリルは咄嗟に判断していたのだ。事実、ロケットランチャーが発射されたときのイザベラは焦った表情をしていた――一瞬だが。


「やっ……てない!?」


 シェリルは爆発に違和感を覚えた。

 あのロケットランチャーであれば、もっと殺傷力のあるような爆発のはず。だが、その威力はシェリルの期待を大きく下回る。

 一体何が起きたのか。


「……危ないことしてくれるじゃない」


 イザベラは吐き捨てるように言った。

 彼女の左手からはダラダラと血が流れていた。爆発のダメージも一応あったようだ。


「えっ……ほら、あなたの能力の方が危険……」


「ま、コーディと組んだこの私に何もできないってことはないんだけどぉ!」


 イザベラはそう言ってシェリルに接近する。

 そのシェリルも無抵抗ではない。次に手にしたのは、肩から下げていたアサルトライフル。狙いはどうでもいいとばかりに、シェリルは引き金を引く。

 銃弾が連射される。そんな銃弾の嵐を受けてもイザベラは倒れない。そもそも傷もほとんどない。どうやらイザベラは銃弾を腐敗させているようだった。


 ――無理だ。どうすることもできない。逃げる以外は。


 イザベラはシェリルに肉薄。黒い塊を纏うメイスでシェリルに殴りかかる。するとシェリルは受け流し、入り口の方向へと走る。シェリルもメイスを使うからこそわかるが、必ず大きな隙ができる。

 そんなとき、雨は雪へと変わる。傍らで戦っていた零が降らせたようだ。


 ――いや、困惑してる。この人。


 シェリルはイザベラの表情を見逃さなかった。確信は持てないにしても、ある程度彼女の強さの理由を理解した。そして、次にシェリルが取るべき行動も。


 ――室内だ。まだ裏は取れてないけど室内なら戦況が変わる。多分。だって室内では雨を降らせることもできないから。


 黒服の男たちはもはや入り口を守れていない。そこの守りはジェシカが侵入したときに突破されたに等しかった。そこにシェリルは突入する。


「……へへっ。変な眼帯したあいつに何をお見舞いしちゃいましょうかねぇ?」


 シェリルはそう呟いて弾切れになったアサルトライフルを投げ捨てた。


 ロビーにはベンチがおかれている他、近くに受付や守衛室、エレベーターなんかもある。それらを利用する戦い方であればシェリルもそれなりに思い付く。が、シェリルはそれ以上に大切なことを思い出す。


「恵梨。ジェシカ。行かないと。合流するって話だし」


 シェリルはあえてイザベラを無視することにした。廊下を走り、上へ上がる階段へと向かった。


 ――先に行ったジェシカと恵梨。大丈夫かな。怪我してなければいいんだけど。




 ジェシカはようやく13階にたどり着いた。このフロアは下のフロアとはまた雰囲気が違う。

 何か、禍々しい気配がる。それだけではない。ホルマリンをはじめとする薬品の匂いが漂っており、ここが実験室なのかもしれないとジェシカは考えた。


「そういえば、ケイシー・ノートンのセーブポイントが何か分からなかったけど。そろそろ探した方がいいんじゃないかな……」


 と、ジェシカは呟いた。


 セーブポイントの話は、作戦に参加する全員が知っている。主にルナティカとして潜入する恵梨が知っておくべきだとのことだったが。それでもセーブポイントの正体を知る者はいない。どれだけ頑張って調べてもその情報だけは一切出てこないのだ。


 ジェシカが階段から離れて廊下を歩いていると、彼女に立ちふさがるようにして黒服の男たちが現れた。室内を汚したくないのか、彼らは全員がナイフやメイスを持っている。


「来たのね。悪いけど恨むならその武器を恨むこと」


 と、ジェシカは男たちに重力をかけた。

 相手の人数は15人前後。重力で動けない男たちに向かって1初ずつ拳銃で頭に銃弾を撃ち込んでゆく。至近距離から弾丸を撃ち込まれた男はそれだけで絶命する。


 ――殺したいとは思わないけど、慈悲はないよ。恨みもないけど。


 ジェシカは全員を撃つと、その場を去る。この先にあるものだけはどうしても見ておきたい、と彼女の心が叫んでいた。何があるのかもわからないというのに。


 何かあってほしい、何もない場所であってくれ。相反する思いがジェシカの中で共存する。


 黒服の男たちに対処した後のフロアはあまりにも静かだった。まるで人の気配はなくなっている。が、ジェシカは警戒を怠らない。適当なタイミングで拳銃に弾を装填して再び歩き始める。


「なるほどね……」


 ジェシカは顔をしかめながら言った。

 というのも、彼女が見たものは薬品に漬けられた指のオブジェ。さらにその指を入れているものは拳銃の形をしている。見ていて気持ちのいいものではない。


 目をそらし、ジェシカは先に進む。

 廊下の先には実験室の入り口があった。異様な雰囲気を放つ実験室に、ジェシカは引き寄せられていた。

 扉に鍵はかかっていない。ジェシカは扉に手をかける。


 ――何か嫌な予感がする。この中で、何をしているっていうの。多分、ここにいるのはイデア使い。下手に突っ込んだら、はめられる。


 ジェシカは手に拳銃を持った。



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