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Dogma of Judas  作者: 墨崎游弥
前編 Unending Tragedy
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13 Trial and Error

 ――脚の調子は悪くない。リハビリもそこまで必要なかった。


 病院の前に到着した車に乗り込むジェシカ。彼女を車の中で迎えたのはルナティカと零。零はルナティカの護衛だろう。


「まあ、良くなってよかった。イザベラにやられたって聞いてヒヤヒヤしたんだからね」


 運転席に座っているルナティカは言った。


「今はもう大丈夫ですよ。それより、久しぶりに体を動かしたいです。戦闘訓練もしなきゃいけない。入ってそうそうに怪我とか、洒落にならないじゃないですか」


 と、ジェシカは言った。


「そうだね。これから、少しずつ慣らしていってもらうからね」


 ルナティカはそう言うと、車を発進させた。車内はしばしの間、沈黙に包まれた。特にここで話すようなこともない。


 やがて、車はタリスマン支部に到着する。メンバーは見回りと戦闘訓練で、ここにはいない。


「じゃあ、ジェシカ。リハビリも兼ねて戦闘訓練で。見回りはフィルとライオネルが担当しているから」


 車を降りるとルナティカは言った。彼女はこれから執務室で書類関係の仕事をするとのこと。彼女も彼女で忙しいのだ。例えば、去年の秋の――タリスマンが荒廃する大きなきっかけとなった戦いの事後処理などで。それ以外にも彼女に押し付けられたような仕事もあるのだが。


「はい」


「支部長。最近寝られていないこともあるみたいだろ。俺に手伝えることがあったら言ってくれるか?」


 ジェシカと零は口々に言う。すると、ルナティカは零を見て。


「私が忙しいのは認めるけど、その仕事って機密事項だったりするんだよね。信用できる人だとは思っているけど、やっぱり零には任せられないかな。でも、気持ちは受け取っておく」


 そう言うのだった。ルナティカはそのままタリスマン支部の建物に入ってゆく。向かうのは執務室だった。


「俺達も行こう。恵梨を待たせているんだ」


 と、零。

 ジェシカと零は入り口と反対側にある訓練場所へと向かった。


 訓練所では恵梨が素振りをしている。1人だけで手合わせというわけにはいかず、彼女の能力などの精度を上げるために薙刀の素振りをしていたのだ。

 恵梨の姿を見るなり、ジェシカは走り出す。


「恵梨! この通り、全快したよ! 脚の調子もいい感じだから!」


 と、ジェシカは言った。

 恵梨が見てもジェシカの脚はこれまで――イザベラからの一撃をもらう前と何ら変わらない。


「わあ! よかった! で、ジェシカはこれまで通り動けたりするの? 入院中に動けなくて体がなまっていたりしない?」


 と、恵梨はジェシカに尋ねる。


「さあ。それは恵梨が私と手合わせをしてみてからじゃないとわからないと思うよ。私も久しぶりにやってみたいな」


 と言ったジェシカはたてかけてあった訓練用の剣を手に取った。愛用する剣とはまた違った感触が彼女の手に伝わる。そんなジェシカに応えるようにして、恵梨もジェシカの方に向き直る。その手に握られたものはイデアによって形を持った薙刀。


「いいよ。あたしもジェシカと手合わせしたかったんだよねえ!」


 恵梨は特にジェシカを気遣うようなこともなかった。これは恵梨がジェシカを本当に信頼しているからこその行動だった。


 零が見守る中でジェシカと恵梨は互いに1歩を踏み出し、互いの武器をぶつけ合う。

 恵梨がジェシカの剣をはじき、間合いを取る。その薙刀のリーチ内で起きることが、今恵梨の目に見えた。ここでジェシカがフェイントを入れてくる。が、その後のことは読めない。

 恵梨の予想通り、フェイントを入れるジェシカ。大きく重い剣がまるでサバイバルナイフか何かのように空を切った後、ジェシカは横に動く。薙刀のリーチ外へ。


「予知に頼りすぎじゃない?」


 と、ジェシカ。


「どうだかね」


 そう言いながら恵梨は薙刀を振り上げる。振り下ろす薙刀の威力も馬鹿にはできないが――ジェシカは恵梨の動きを見ながらあえてリーチ内に入る。それが――恵梨の斬撃と同時。ジェシカは恵梨の攻撃を受け止めた。


「とは言ったって、私は言うほどなまっていないみたいなんだけど。ほら、こうやって恵梨の薙刀も受け止めた」


 と、ジェシカは言う。


「あっはっは、参ったなあ! 攻略法を知られるとやっぱり受けられるよねえ。あたしもどうやってリーチと能力を知られないようにするかどうかなのかなあ?」


 そう言った恵梨はイデアの薙刀をその手から消した。彼女の様子を見ていたジェシカも剣を下す。


「恵梨はさ、フェイント入れてみるといいんじゃない? 確かに正統派の強さはあるんだけど読まれたらきつかったり。それで勝てるならいいけど」


「あー、それね。やっぱり私、予知に頼りすぎていたりするかな? 確かに戦闘中に持ち替えたりするって発想が……それだ」


 と、恵梨。彼女なりの戦法を思いついたようだった。


「ていうか、イザベラのときでも似たようなことしてたなあ。刃が腐るから、何回でも再生して。でも、どうやってイザベラを倒すのかわからないよ。あのときは零のおかげだったわけだし……」


 恵梨はそう続けてため息をつく。


「恵梨が苦戦するんだからね。多分、これから戦うことになると思うけど……」


 と、ジェシカ。そう言いながら思い出すのはあの戦いでの出来事。邪魔が入ったとはいえ、ジェシカがイザベラと互角に戦えていたのだろうか?


「まあ、これからどうにかしていけばいいか。能力の使い方も含めて」


 手合わせと以前の戦いを振り返りながら、ジェシカと恵梨は会話を交わすのだった。



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