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第七話  契約

 

「……はい?」



 オパーイへと向かっていた手が、ピタリと止まる。そしてそのまま、女神の顔をガシッと掴む。



「続き読めないって、どういうことですか?」

「そ、それはそのぅ……」

「女神、様?」

「ヒッ! 言うっ! 言うからその顔を近付けるの止めてっ!」



 と、かなりの深手を負わせる、クリティカルな言葉を口にした女神。そして、ドンっと俺を突き飛ばすとその場に倒れ、胸に手を当てて、ハァハァと乱れた息を整えている。大きな錫杖はいつの間にか消えていた。……アレ? この傷、致命傷じゃね?

 そうして暫く、息を整えていた女神。最後に「ハァ」と大きく息を吐くと、



「た、平さんに一つ約束をして欲しいのですが……」

「何でしょう?」

「あの~、絶対に怒らないで欲しいのです。良いですか?」

「……それは、女神様が話す内容によると思いますが」

「それでもです。……約束、してもらえますか?」



 そう言って、目を潤ませながら近づき、俺の手を取るとそっと胸に抱く。こいつ、さっき俺の事を突き飛ばした癖して何してやがる。まるで、それが一番効くと思ってやがるな? ん~、正解っ! 



「……はぁ、まぁ……」

「……良かったぁ」



 俺の曖昧な答えに満足したのか、嬉しそうに笑うと俺の手を離す女神。あぁ! 俺の理想郷(ユートピア)がっ!



「……あのね~、そのねぇ~」

「良いから、早く言ってもらえますか?」

「んもぅ。せっかちさんと早いのは、大人になると嫌われちゃうぞ?」


(何言ってんだ、この女神は……)


「あのね、私、さっきお話してたじゃない?」

「……お話……ですか?」

「あれぇ、覚えてない? ほらぁ、貴方が『友達に会えなくなる』とか、『残りの高校生活だって過ごしたかったのに』とか言ったでしょう?」

「あぁ。それが一体——。あっ」



 あの時交わされていた、女神の会話を思い出す。『——あ~、もしもし、聞こえる? 私よ。エルニアよ』から始まったあの会話を。確か途中でこういった筈だ、



『んで~、ちょっと相談なんだけど。借りた子を返す時にさぁ、ちょっとだけ時間を戻してほしいんだよねぇ』

『いやいや、そんな長くじゃないの。ほんとに少しだけよ。どの位で魔王を倒せるか分からないけど、恐らく5年位かな?』

『そう、その位なの。えっ、大丈夫? ほんと?! いや~、助かるわ~』



 その後にランチの約束をしてた訳だが、それは全く関係無いので割愛するとして、俺はとても信じられないといった顔を女神に向ける。



「——ま、まさか、もう戻しちゃったのか? 5年前に……?」



 頼むから否定してくれと、まさに女神に願ったのだが、



「……てへっ」



 グーにした手を頭に乗せ、悪びれる女神改め、ダ女神。そんな事しても、全く許せる気はしない。



「そ、それって、一体どうなったって事ですか?」

「……うーんと、あっちの世界の時間軸が、貴方の元居た時間の、ちょうど5年前に戻っているかな~」

「その状態で俺が戻ったら、どうなります?」

「そりゃあ、今の貴方のままの状態で、戻る事になるわね」

「それってトンデモナイですよね!? 今から5年前って言えば、俺は小学校5年生ですよっ!? こんなデカい小学校五年生なんて居ませんよ!?」

「う~ん、大きくなったなぁって、親御さんも喜ぶんじゃない?」

「そんな事、有る訳ねーだろっ! 万年平社員で、出来の良い後輩が、部署に入るたびにビクついているそんな父さんに、受け止められる懐の深さは無ぇわ!!」



「苗字が平だけに、平社員って、やかましわっ!」と、酔った父さんが良く言うギャグまで俺の口から飛び出す。そんな事を言っているから、万年平社員なんじゃないかって思う。

 あまりの対応に、俺は知らない内に自然とタメ口で突っ込んでいた。



「何でもう、5年前に戻しちゃったんだよ!? 俺、エルーテルを救うなんて、一言も言って無いだろっ!?」

「え~。だって、あんなに食い付き良かったから、もう私の世界に行ってくれる事が確定したかなって思ってさ~」



「思わせぶりな態度を取った貴方も悪いんだよ?」と、何故か責任転嫁までする始末である。もう駄目だ、コイツ。



「もう良いっ!! もう一回、俺の世界の神様とやらに話して、また時間を調整してくれよっ!」



 良く考えれば、あんな短い時間で簡単に5年前に戻せたのである。ならば、その時間をさらに元に戻すのも、簡単なのではないか? それに気付いた俺って冴えている。こりゃ、オパーイの一つも揉ませてくれるに違いない。


 だが、



「あ~、今はちょっと無理かな~。あの子、お昼寝するって言ってたし」



 今はタイミングがちょっとね~、と、今は間が悪いと暗に言ってくるダ女神。



「勝手に5年前に戻したクセして、今さらタイミングも何も無ぇよっ!」



 ああ言えば、こう言うとはこの事だ。最早このダ女神の中では、俺をこのまま5年前に戻す気満々である。

 もしそんな事になれば、まだ小学5年生の球也や鈴子、そして須原さんとは確実に会えないばかりか、家にも帰る事すら出来ず、住む所さえ無い。異世界以上のサバイバルが待っている可能性すらある!


(こりゃ、ダメだ。詰んでる……)


 想像してみたが、とてもじゃないが、生活していける気がしなかった。愕然としている俺に、



「大丈夫よ~。何とかなるって。あ、それかエルーテルを救いに行っちゃう? それなら5年なんてあっという間だよ?」



 等と口にする張本人。むしろそれが狙いだったんじゃないかとすら思えて来た。涙ながらに俺の苦手を告白したっていうのに、何て事言いやがるんだ、このダ女神はっ!


(こ、コイツ、許せねぇ——)


 完全に頭に来た俺は、このダ女神に意趣返ししてやらないと気が済まんっ! あのオパーイを乱暴に揉みしだいてもいいのだが、それでは犯罪になってしまう。何か無いか……。


(何か無いか!? あのダ女神が困る様な、ナニか……。——そうだっ!)


 そこで俺は思い付いた。それもまた、あのダ女神が言った言葉——、



『ここでの出来事何ですが、誰にも言わないでくださいね』



 と。ならばどういう事か……。考えるまでも無い。



「あ~、こりゃ駄目だ。最悪の中の最悪だ……」

「えっ!? ちょっと待ってくださいっ!? さっき怒らないって約束しましたよねっ!?」



 俺はペタリとその場に座り込み、項垂れる。その突然の行動に、焦るダ女神。



「怒っちゃいねぇよ。ただ、もう何もかもが嫌になってきた……」



 まるでこの世の終わりとばかりに呟く俺。その俺の言葉に、「あわわっ!?」と口に手を当てて、



「だ、大丈夫ですよ、平さんっ!そ、そうだ! このままここで5年間過ごすって手も有りますよ!?」



 ね、どうです!?と、ダ女神は提案してくる。確かにコイツは、性格と頭はアレだが、顔と体は満点なのだ。そんな美女と傍に居られるなんて、普通ならばラッキーかもしれない。



「う~ん、それもなぁ……」



 チラリとダ女神を見る。しゃがみ込み、俺を心配そうに見つめるダ女神の、少し開けたドレスの胸元から、狂暴的なオパーイが自己主張している。あのオパーイも見放題だ。オパーイに罪は無いしな。

 しかし、それもすぐに飽きてしまうかもしれない。オパーイに終わりは無いとはいえ、流石に5年間も眺めれば、そうなっても不思議では無いのだ。そんな風になりたくは無い。



「だったら、どうしたいですか?! 何か欲しいもの、有りますか!?」

「……何か、投げやりになってないか?」

「え? や、嫌だなぁ。そんな事無いじゃないですか~……」



 はははと渇いた笑いを浮かべるダ女神。コイツ、本気で面倒臭くなってきて無いか?

 ここで俺は、さっき思い付いた切り札を使う。



「あ~、俺、このままだと、ここの事を誰かに言っちまいたくなってくるなぁ」

「……えっ?」



 俺の切り札を聞いて、焦った声を上げるダ女神。よしよし、効いているな。

 そう、さっきこのダ女神は、ここの事を誰にも知られたくないと言っていたのだ。それは何故かは分からないけれど。

 ならば、ここの事を誰かに知らせると脅せば、コイツは焦るに、困るに違い無いと思って切った切り札。ダ女神は記憶を消すと言ってはいたが、万が一の確立でそれが上手く行かない場合もあると言っていた。ならばこそと思っての切り札だったのだが、それは思いの外、このダ女神にダメージを与える結果となった。



「あわわっ! そ、それだけは何卒ご勘弁をっ!」

「えぇい、黙れぇ! 聞けぬ! その言葉、聞けぬぞ!」



 と、まるで、タンスの中に隠してあった子供の給食費を、パチンコに行く為に持って行こうとするダメ親父と、それを止める母親の様なやり取り。

 立ち上がった俺の足元に、縋ってくるダ女神。だが急に、ダ女神は俺のズボンを離すと、ニヤリと笑う。そして、



「——いえ、ちょっと待ってくださいよ? もしも平さんが【帰還の環】を潜り、元の世界に戻ったとしても、誰も平さんの知り合いは居ないハズ! ならば、今、平さんの言った事は実行出来るはずは無いっ!」

「くっ、気付いたかっ!?」

「ぬはははっ! 残念でしたね、平さん! 私を出し抜こうなんて、十年早いですよっ!」



 そう言って、ダ女神も立ち上がると、腰に手を当てて、わっはっはと笑う。笑う旅にオパーイも揺れており、一緒に笑っている様だ。

 確かに今、ダ女神が言った様に5年前の元居た世界に戻ったとしても、それを言う相手は居ない。仮に、小学5年生の球也や鈴子にそれを言った所で理解されないだろし、最悪不審者認定されて、通報されてしまうだろう。



「さあっ、平さんっ! そろそろ諦めて、エルーテルを救いに行きましょうよっ! 今なら、エルーテルで使える、エル金貨を百枚差し上げますよっ!」



 エル金貨一枚で、十日は遊んで暮らせますよ!と、どこからか取り出した、五百円大の金貨を手に取ると見せてくる。一枚で十日という事は、百枚だと千日しか遊んで暮らせない。エルーテルとやらが一年が何日だかは知らないが、もし地球と同じだとしたら、3年も持たない計算だ。地味にセコイな。いや、それが狙いなのか? 


 だが、



「ふっふっふっ」

「ん? どうしましたか、平さん?」



 気でも狂いましたか?と、失礼な事を言ってくる。そんな失礼なダ女神を無視して、制服のズボンのポケットに手を入れる。すると、お目当ての者が指に触れた。



「悪いな、女神様。俺は絶対に異世界には行かない。それに、俺にはコイツが有るっ!」



 そう啖呵を切って、ポケットから取り出したのは、そう、高校生の必需品、スマホだ!



「な、何ぃ!?」



 手を口に当てて、驚愕の表情を浮かべるダ女神。どうでも良いけど、コイツって結構ノリが良いよな。その内、ノリでオパーイを触っても大丈夫かもしれない。



「そう! コイツが有れば、直接話さなくても問題は無ぇ! ポチポチーっと呟けば、今や全世界に拡がって行くって寸法よっ!!」



 どうだぁ!と、まるで有名な時代劇の小道具の様に、ダ女神に突き付ける。

 だが、ダ女神は「ははぁ! 参りました、副将軍様ぁ!」とはならず、またもやニヤリと笑うと、



「残念でしたねぇ、平さんっ! そのポチポチーっと呟くやつは、5年前にはまだまだマイナーで、使用していない人が大半ですよっ!」

「な、なにぃ!? そうだったのか!?」

「それに! そのスマホ、5年前には契約すらされていないですよね! だったら、電波、立たないんじゃないんですか!?」

「はっ! そうだった!!」



「ほっほっほっ! 残念でしたねぇ、平さん!」と、再び腰に手を当て、高笑いするダ女神。さっきよりも背中の反りが大きい分、オパーイがさらに前に突き出される。最早その頂きを目指さない者など居るのだろうかっ!? いやっ、居ない!!



「くっ! 完璧だと思ったのに……」



 膝から崩れ落ちる様に、倒れ伏す俺。その恰好は、もうボールを拾う体力さえ無いナンバーワンの様だ。拡散させるとしたら、某大統領も愛用している呟くやつだと、それなら間違いなく上手くいくと思っていたのに……。



「——もういいでしょう、平さん。貴方は頑張りました。この女神エルニアを、二度に亘って驚かせたのです。たかが人類が、です。それはとてもスゴイ事なんですよ? さぁ、もう楽になりましょう。たかが5年じゃないですか。ちゃちゃっと行って、ちゃちゃっと魔王を倒してくれれば良いのです。簡単なお仕事ですよ?」



 などと、まるでブラックそのものな物言いを放つダ女神。ダ女神の言う様に、俺にはもう手が無い様に思われた。しかし、



「ふっふっふっ……」

「平さん……?」

「——あーはっはっはっ!」



 俺は立ち上がると、ビシッとダ女神に指差す。そして、



「残念でしたねぇ、女神様。元の、俺の居た世界を舐めちゃあ困りますよ?」

「……どういう事ですか?」

「……これです」

「ん?どれどれ……? こ、これは!?」



 ダ女神が三度目の驚愕を浮かべる。ほんとノリの良い子って好きだわ~。

 ダ女神に見せた、俺のスマホの画面。そこには呟くやつでも、日記でも無い物が映っている。

 そこには一見、ただの文字が書かれているだけ。しかし、よく読むと、



「な、何よ、これ……。[逝ってヨシ]? [鯖]? [藁]? [きぼーん]?」



 書かれている文字を読んで行くダ女神。それはただの文字だが、熱さが違うっ!



「こ、これって一体……?」

「前に俺の兄さんが言っていた。昔、今の呟くやつ等が出てくる前にあった、伝説の熱い書き込み版が、ネットに存在していた事を! これが、それだっ!!」

「伝説、の……?そ、そんな物があったなんて……」



 さっきまでの高笑いも何処へやら、しなしなと力無く座り込んだダ女神。そこにさらに追い打ちを掛けていく。



「それにな、女神様。たしかに電波は入らない。契約していないからな。だがな! 俺の住む国には無料Wi-Fiってのが有るんだよっ! その電波を使えば、契約していなくても幾らでもネットは使えるんだぜっ!!」

「無料Wi-Fi……!? そんな物まであるなんて……」



 ガックシ……と肩を落とすダ女神。ここまでノリが良いと、逆に騙されないか心配になってくる。……主にそのオパーイにだが……。



「これは、私の負けの様ですね……」



 項垂れたまま、自分の負けを認めたダ女神は、金色の大きな目に涙を溜めて、俺を見上げてくる。その姿に、俺の中にある加虐心が沸々と湧き上がってくるが、何とかそれを抑え込む。



 フッと、負けを認めた者が浮かべる独特な笑いを浮かべたダ女神。ふらりと立ち上がると、



「——分かりました。それでは、私と取引しませんか?」

「取引、ですか?」

「はい。女神の取引です。これは絶対の取引。その取引において、破るといった事は絶対に無いし許されない……」

「……絶対に許されない……」



 急に迫力を増したダ女神のそれに、知らず生唾を飲み込んだ。

 が、その迫力がフワッと霧散すると、さきほどまでの雰囲気に戻ったダ女神。



「ふふっ、そんなに怖がらなくてもダイジョブですよ♪ 約束さえ破らなければ良いんですから」

「お、おぉ」



 未だ、先ほどの迫力の残滓に気圧されていた俺、ダ女神の言葉にただコクコクと頷く。

 その様子に満足し、笑みを浮かべたダ女神。例の意味不明な音を口に出すと、手の平を上に向けて前に出す。すると、手の平の上がそっと光り、中から二枚の紙が出て来た。



「——それは?」

「これは[神々の契約書]……。その名の通り、神と契約する際に必要な約定書」

「契約……」

「そんな難しくは考えないで。口約束じゃあ困るでしょう? だからこれが必要なの」

「そうなんですね……」



 ゲームやラノベにも描かれていた、神との契約。それが今、俺の目の前に……。



「——さて、では今から契約しましょうか」

「契約ですか……。それはあの、所謂あなたと一心同体とかってやつですか?」

「……えっ?」

「……ん?」



 何か違ったらしい。ダ女神は顔をほんのりと赤く染め、



「ちち、違いますよぉ。さっきも言ったじゃないですかっ。これは取引、だって」

「あ、あぁ。そうでしたね」

「そうですよっ。もうっ、平さんが変な事を言うから、慌てちゃったじゃないですかっ」

「あはは、済みません」



 残念、あのオパーイを好きに出来ると思っていたのに……。



「コホン。さて、では気を取り直して。 この契約書には互いに、これは守って欲しいなぁって事と、本人、そして契約相手の名前を記入します」

「……随分と簡単なんですね」

「あまり難しくしても、覚えきれませんしね。 永く存在する私達ですから、いちいち細かい事は覚えていられないのです」

「そ、そういうものですか」

「はい。では、お互いに守って欲しいって事ですが、私の方はすでに理解していますよね?」

「……ここの事を、誰にも話さない、ですか?」

「はい、そうです。《誰にも》ですからね?」

「はい、解っています」

「宜しい。では次に、平さんですが……。何か守って欲しい事、有ります?」

「う~ん……。守って欲しい事、ですか……」



 腕を組み、考える。だが、このダ女神に守って欲しい事というのが思いつかない。

 そんな俺に助け船を出すかの様に、



「別に守ってもらいたい事じゃなくてもいいですよ。何かして欲しい事でも良いですし」

「して欲しい、事……」



 そこで、ダ女神のオパーイに目が行ってしまったのは、健全な男子高校生ならば致し方無い事だと思ってもらうとして、して欲しい事って……。


(何だろ。5年前じゃなくて、ちゃんとした時間に戻せっていうのが一番だけど、それって俺のせいじゃないしな。そんな事で契約するのは勿体無い……)


 そこで再び、オパーイに目が行って……、ゴホン、さもありなん。さて……。


(神と契約なんて大それた事、それこそゲームやラノベの世界だっつーの! そんな事を急に決めろって言われても……、待てよ、ゲーム……、ラノベ……。——それだっ!!)


 ピコーンと俺の頭に浮かんだ、昔から密かに思っていた、俺の願望。最近では忘れていたり、突如として表面に出て来たソレ。そいつをこのダ女神様に叶えて頂こうじゃないかっ!



「——ありました……。俺のして欲しい事。叶えて欲しい事。俺の昔から持っていた願望……」

「——良いですね、それは。そこまで強く想っているモノならば、契約はより強いものになりますから」



 俺の言葉を受け、ニッコリと笑った後真顔になると、まるで迎え入れるかの様に、俺に向けて両腕を前に出し、



「——女神エルニアが問います。平さん、私との契約で叶えて欲しい願望は何ですか?」

「——俺は——」



 この後に及んで、これで良いのかと迷いが生まれる。だが、以前から持っていた想いであるのは間違いない。



「———俺は——」

「——はい——」



 そこで、俺は強く拳を握る。体に力を籠め、願望を吐き出す!



「——俺は……。俺は、現実の世界で、最強したいんだあぁぁっ!!!」


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