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第三十四話  倒したらごめんにゃ~

 

「《クソっ!》」



 俺は気を失っている女子を抱き抱えながら、保健室へと走っていた。

 善行進化でレベル上限まで上げた素早さは伊達では無く、赤い色が好きなどこかの少佐と同じ様に、その速さは通常の三倍増し、どころじゃないが、とにかくとても速かった。良い子は廊下を走っちゃいけないのだが、事が事なので多めに見てもらおう。


 そうして、息を切らす事も無く、圧倒的な速さで保健室へと辿り着いた俺は、焦る気持ちを抑えながら、保健室の扉をガラリと横に引いた。すると、目の前にバットが!?



「うおおりゃあぁ!!」

「うお!? アブねぇ!?」

「って、凡太!?」



 リザードマンが入って来たと勘違いした球也が、思いっきりフルスイングしたバットを、しゃがみ込んで避ける。俺一人なら、後ろに飛ぶとか、ジャンプするとか幾らでも方法はあったのだけれど、人を抱きかかえている状態ではそれも出来なかった。



「おいおい! いきなりフルスイングでお出迎えとは、普通の人なら死んでるぞ!?」

「わりぃ! でも凡太も悪いぜ。入って来る時に何も言わないんだからさぁ」

「バットで殴らると知っていたら、合図の一つもしたよ。それで、みんなは大丈夫か?」



 と、中の様子を窺うと、お互い椅子に座って向かい合いながら、手当てをする鈴子と、手当てを受ける舞ちゃんが見えた。 二人は球也の声でこっちに気付くと、



「きゃあ!? どうしたの、凡ちゃん!? 血だらけだよ!?」

「まさか、ケガを負ったのですか!?」



 血相を変えて走り寄ってくる。そんな二人に対して首を横に振ると、



「違うよ。この子を助ける時にちょっと、ね」

「……特進クラスの子ね? ……生きてるの?」

「あぁ。気を失っているだけだから大丈夫。この子を休ませる所、ある?」

「ベッドは埋まっちゃっているから、床になっちゃうけど、それでも平気そう?」

「う~ん、大丈夫かな。特にケガをしている訳じゃ無いし。我慢してもらおう」



 そういうと、いつの間にか、余っていた毛布を床に敷く舞ちゃん。この上に寝かせろという事らしい。



「ありがとう、舞ちゃん」

「いいえ。それで凡太さん。ヤツは居ましたか? 何やらヤツの吼える声がここまで聞こえてきましたが?」

「そうそう、凡ちゃん! さっきの聞いた!? 私、怖い!」



 鈴子が自分の体を抱きながら、軽く体を震わせた。中庭での吠え声がここまで聞こえてきたなんて。



「大丈夫だから、心配しないで。今、ミケがヤツの所に向かっている所だ」

「ミケちゃん!? そういえばミケちゃんは?」



 怖がる鈴子にそう答えると、保健室の奥にあるベッドで寝ている人の、配慮の為に閉めてあったカーテンがシャッと開くと、中から高身さんが出て来て、俺に聞いてきた。


「ミケちゃんはどこ!?」

「先にリザードマンの相手をしている。俺もこの子を保健室に預けたから、これから向かう所だよ」

「そんな!? ミケちゃん一人で大丈夫なの!?」

「大丈夫。ミケはああ見えてかなり強いから、問題無いよ。あいつ、「《倒したらごめんにゃ~》」と言いながら、リザードマンの所に向かって行ったんだから」

「そう……、平くんがそう言うのなら、心配要らないんだろうけど」



 そう言うと、高身さんは両手を組んで目を伏せた。よっぽど心配なんだろう。なら──



「じゃ俺、もう行くよ。俺とミケ、どちらか一人でも勝てるけど、二人ならもっと安心して倒せるからさ!」

「──うん! お願いね、平君!!」

「あぁ、任せておいてよ!」



 俺が幾ら口で説明した所で、実際無事で帰ってくるまでは心配で堪らないだろう。だから、二人揃って、早く帰ってこよう。



「じゃあ、また行ってくる。次戻ってくる時は、あのリザードマンを倒しているから、もうバットで殴り掛かってくるのは無しな!」

「あぁ、分かった! その代わり、ネコ娘を一緒に絶対無事で帰ってこいよ!」

「あぁ!」



 そう球也に答えると、「行ってらっしゃい」「ご無事で」と見送ってくれた鈴子と舞ちゃんに軽く手を上げて、俺は再び保健室を後にした。


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