世界の怪 2
世界side
ミナの形をした自分という概念が崩れていくのが分かった。
この感覚は今まで何度も経験している。今の私が崩れて、世界はまた『初めから』になるのだ。
人の形を保てなくなり、私は概念としての意識だけを持ち、世界が構築されるのを待った。
意識を深く沈めて、自分の体が書き換わるのを感じていたその時だった。
「書き換えろ!!!」
そう言って投げられたのは一冊のノートだ。
意識をそれに向けると、数字が書いてあることが分かる。
それを目にした瞬間、ドクリと、持っているはずのない鼓動が動いた気がした。
ずっと諦めていた。無駄だと思っていた。
それでも希望を捨てきれなくて、ここまできた。
勝手に絶望して、次のミナに期待した。その繰り返しだった。
どうせこれもダメだと思いながら、期待を胸に、私はその数字を取り込んだ。
今まで与えられなかった情報を急に入手したことにより、脳が焼けるように熱くなった。
熱くて、熱くて、体が変化に耐えきれずに焼ききれるようで、意識が飛びそうで、バラバラになりそうな思考を何とか保って、書き換えろと叫んだミナの言う通りに私は自分の体を作り替えていく。
こんなことをしたのは初めてだった。外側から与えられ、書き換わる情報はあれど、自分から自分の体を弄るのは初めてだった。
これでいいのかも分からない。分からないけれど、確かに自分の体が書き換わっていくのを世界は感じていた。
何分経っただろう。それとも何時間だろうか。
分からない。
意識が飛びそうで、完成に近づく度に世界の意識は薄くなっていった。
きっと自分は消えるのだろう。
この世界はなくなって、きっと次の世界に私はいないけど。それでも、もう満足だ。
『ヤッ、と…、きえ、レる』
それこそが世界の望みだった。
そうして、世界は消えた。
そして新たな世界が生まれる─…。
世界の怪 了




