病院の怪 3
病院の中はとても静かだった。チカチカと何個かの蛍光灯が点滅し、ジジっという蛍光灯独特の音が聞こえてくるくらいの静けさだ。
外から見えた人影はどこにもない。むしろ、ここにはミナとユウしかいない。
入ってすぐの受付にすら人はおらず、その奥の部屋は電気が消されているのか暗かった。
ミナは調べようと中に入ろうとしたが、「ここにはお仕事の人しか入っちゃいけないんだよ」とユウに止められてしまった。
ユウは無人の病院に何の違和感も抱いていないようだった。
「おねぇちゃんの病室、どこかな?」
そう言ってキョロキョロと辺りを見回して、外の名前の書かれたプレートを見ているのだろう。「ここも違うね」「ここじゃないね」とユウはさっさと歩いてしまう。
離れないようにと繋がれた手は、ミナに人がいるという安堵と言い知れない不安を抱かせた。
一階を全て見終わると、ユウは「こっちだよ」とエレベーターまでミナを案内した。
『↑』と書かれたボタンをユウが押すと、屋上からエレベーターが降りてくる。
エレベーターを待つ僅かな間、ミナはユウに話しかけた。
「ユウは、いつからここに居るの?」
「いつからだろ?忘れちゃった!」
「…どこか悪いところがあるの?」
「悪いところはないよ!ここにいたらね、苦しいのも痛いのもないんだよ!」
「ここには、ユウ以外の誰かがいるの?」
「いるよ!たぁくさんいるよ!」
「でも、今は誰も居ないのね」
「そうだね!ミナがいるからかな?みんな隠れちゃったみたい」
「どこに?」と聞く前にエレベーターの扉が開いた。
扉が開くと、ミナの目の前には大きな鏡があった。ミナはそれを見て大きく目を見開いた。
エレベーターに鏡が備え付けられているのは何も珍しい光景じゃない。
ミナが驚愕に目を見開いたのは、鏡に写ったミナが一人で笑っていたからだった。




