病院の怪 2
「きみは、だれ?」
無害そうに見えるその子供は、ミナの問いにことりと首を傾げた。
「ボク?ボクは、そうだな…。ユウって呼んで」
「ユウ、くん?」
「うん!なぁに、おねぇちゃん」
『ユウ』と名乗ったその子は、名前を呼ぶと嬉しそうに笑った。その笑顔があまりにも普通で、ミナのなけなしの警戒心はどこかへといってしまった。
「ここは、どこなの?」
「ここは病院だよ?おねぇちゃんも、どこかおかしいからここに来たんでしょう?」
「…違う。私は、迷って、気付いたらここにいただけ」
「そうなの?うーん…おかしいなぁ。おねぇちゃんはここの『カンジャサン』じゃないの?」
「違うよ」
ミナが否定すると、ユウが不思議そうな顔をしてミナを指さした。
「ボクと同じお洋服を着てるのに?」
「え…」
気付けばミナは制服から、ユウが着ているものと同じ入院服を着用していた。
「なんで…」
「おねぇちゃん、なんで自分が病院にいるのか忘れちゃったんだね。大丈夫だよ!おねぇちゃんの病室もきっと中にあるから、一緒に探してあげる!」
それはどこまでも純粋な好意のように思えて、ミナはその子に手を引かれるまま病院の中へと入っていった。
その子供の強引さが、何故だか少しだけ恐ろしかった。




